早くも師走となったこの時期、1年を振り返り自分のライフプランやその変化について考える方もいるでしょう。
厚生労働省が公表した「令和3年版厚生労働白書」によると、2020年の50歳時の未婚割合は男性が26.7%、女性が17.5%。2040年には男性29.5%、女性18.7%になると推計されており、結婚をしない選択をする人が増えると考えられます。
また、国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集 2021年版」によれば、2015年の50歳時でおひとりさまの女性はおよそ26%。その内訳は未婚の方が約14.06%、離別の方が10.18%、死別の方が1.88%です。
一口におひとりさまといっても、そのライフスタイルはさまざま。特に女性の場合、独身で正社員として働かれてきた方と、離別や死別で一度働き方をセーブされた方では、将来のお財布事情は異なります。おひとりさまの女性の老後について、その貯蓄や年金の現実を眺めながら対策を考えましょう。
未婚、離婚、死別…それぞれの年金「平均月額」は?
老後の生活の柱となるのは「年金」です。まずは参考までに、今のシニア世代の平均年月額を確認しましょう。
少し前の資料になりますが、厚生労働省の「平成29年老齢年金受給者実態調査(特別集計)」から、配偶者がいない女性の平均年金月額について「未婚・離婚・死別」ごとに確認します。
【配偶者なし世帯(女性・65歳以上)】平均年金月額
未婚:11万9000円
離婚:8万3000円
死別:12万1000円
未婚の女性の年金月額はおよそ12万円。一方で、離婚の女性はひと月8万円台とその差は約3万円です。離婚の女性の場合、結婚や育児、介護などで離職したり、扶養内で働いたりされる方が多いのが影響しているでしょう。
日本の年金は、国民年金と厚生年金の2階建てです。20歳以上60歳未満の方は原則加入する国民年金と違い、厚生年金は加入月数や収入に応じて将来の受給額が異なります。
同調査より、それぞれの現役時代の経歴をながめてみましょう。
【配偶者なし世帯(女性・65歳以上)】現役時代の経歴類型
未婚
離婚
死別
※「正社員中心」とは20~60歳までの40年間のうち、20年を超えて正社員だった者(他についても同様)。
未婚の女性の半分以上が正社員です。一方で離婚の方はおよそ3割が正社員で、常勤パートがおよそ2割。一度離職した後に子育てをしながら再就職するのは難しいと分かります。
現役時代の働き方や収入が、将来の年金に影響することは特に女性は知っておきたいところです。先ほどの平均月額は今のシニア世代のもの。働く世代が老後になる頃にはこれよりも下がる可能性があります。
まずは毎年誕生月に届くねんきん定期便で、ご自身の年金額を確認しましょう。
30~60代の単身世帯、貯蓄額はいくらか
年金の不足分を支えてくれるのが貯蓄です。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和2年)」から、単身世帯の貯蓄額を確認しましょう。年代別の貯蓄額は以下の通り。
【年代別】単身世帯の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)
年代:平均・中央値
平均は一部の大きな数字に引っ張られやすい傾向にあります。そのため、より実態に近いのは中央値でしょう。
貯蓄額の中央値をみると、30~50代では100万円以下。想像していたよりも少ない印象です。60代で貯蓄額が増えるのは退職金の影響もあるでしょう。
ではより詳しく、老後資金を使い始める60代・単身世帯の金融資産保有額の分布を見てみましょう。
60代・単身世帯の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)
金融資産非保有:29.4%
100万円未満:9.1%
100~200万円未満:5.0%
200~300万円未満:3.3%
300~400万円未満:4.8%
400~500万円未満:2.9%
500~700万円未満:5.3%
700~1000万円未満:5.2%
1000~1500万円未満:7.2%
1500~2000万円未満:4.5%
2000~3000万円未満:6.7%
3000万円以上:13.8%
無回答:2.8%
60代・単身世帯のおよそ3割が金融資産非保有、つまり貯蓄ゼロ世帯です。次に多い順に「3000万円以上」「100万円未満」「1000~1500万円未満」。ここから、貯蓄事情は二極化していることが伺えます。
先ほどの年金月額は、未婚のおひとりさまで約12万、離別で約8万円でした。年金のみでは生活できないので、日々の赤字を補う貯蓄は一定額必要です。できるだけ早いうちから、老後に備えて貯蓄を準備したいところです。
老後資金を考える際、貯蓄額を大きく左右するのが日々の赤字の他に「住まい」と「介護」費用です。おひとりさまは賃貸に住む方も多いので、老後の家賃分の貯蓄を用意する必要があるでしょう。
また、それとは別に介護費用も必要です。一般的に介護費用は1人あたり1000~2000万円ほど必要と言われているので、その分上乗せして準備すると安心でしょう。
ただ、貯蓄の中央値から見ても分かる通り、簡単なことではありません。貯蓄を増やすにはある程度収入が必要ですが、特に女性は収入面でも厳しいところがあります。
女性の平均給与はいくらか
国税庁が2021年9月29日に公表した「令和2年分(2020年)分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者数5245万人の平均給与は433万円(前年比0.8%)。
男女別で見ると男性は532万円、女性は293万円。女性は男性よりも約230万円少ないことになります。
雇用形態別の平均給与も確認しましょう。
正規の平均給与: 496万円
男性:550万円
女性:384万円
非正規の平均給与:176万円
男性:228万円
女性:153万円
正規・非正規ともに、女性は男性よりも平均給与が低くなります。この点もおひとりさまの女性にとっては厳しいところですね。
離婚の女性でお子さんがいれば、教育費もかかります。今は高校や大学の無償化制度なども用意されているので、情報収集をしてさまざまな制度を活用しながら、自分の老後に備えるといいでしょう。
今からできることをコツコツ始めよう
おひとりさまの女性の年金や貯蓄、収入の現実を眺めてきました。厳しい現実もありますが、その不安を減らすためにも対策はできるだけ早いうちから始めるといいでしょう。
一般的に男性に比べて収入が少ない傾向にある女性の場合、「働き方、節約、年金、貯蓄」などそれぞれ工夫をする必要があります。
たとえば「働き方」について、収入を増やすためにはスキルアップや転職、また副業などが考えられるでしょう。2022年10月には、パートの方の社会保険加入の適用が拡大されます。厚生年金に加入して、将来の年金額を増やすのも一つです。
パートの方の社会保険への加入は賛否両論があります。ただお子さんをお持ちの女性の場合、病休期間中に給与の3分の2相当が支給される「傷病手当金」が給付されるようになったり、障害年金や遺族年金が上乗せされたりといった、収入以外のメリットもあります。総合的に判断されると良いでしょう。
「貯蓄」については、低金利が続く現代において、預貯金のみで老後資金を準備するのでは間に合わないでしょう。つみたてNISAやiDecoといった非課税制度を活用しながら、自分だけでなくお金に働いてもらって貯蓄を増やす方法も検討しましょう。
たとえばつみたてNISAは、投資信託等に分散して、毎月コツコツと長期間積み立てていくもの。通常は運用益に対してかかる20.315%の税金が、毎年40万円、最長20年間非課税になる制度です(非課税投資枠は最大800万円)。リスクはあるものの、分散して長期間積み立てることである程度リスクを抑えられるでしょう。
また、老後の住まいや車の保有などについても、早めに考えておきたいところです。賃貸であれば、その分の貯蓄を増やす工夫を考えましょう。
厳しい現実はあるものの、いつでも今からできることをコツコツとやるしかありません。自分は何に向いていて、何ができるのか、年末年始など長期休暇に考えながら一つ一つ始めてみてはいかがでしょうか。
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