スピード違反取締りの切り札として導入が進む新型オービス。都内ではこれまで、住宅地や通学路などで用いられてきましたが、いよいよ幹線道路などでも運用されていきます。このオービスの恐ろしさが現れるのは“その場”ではありません。

都内一斉の飲酒検問とともに登場した新型オービス

新型オービスを使った速度超過の摘発に、変化が出てきました。警視庁は2021年12月4日に実施された東京都内の一斉飲酒検問の一部で、新型オービスを使った速度超過の取り締まりを行っています。警視庁関係者は「生活道路だけでなく、機動的に活用する」と話しています。

新型オービスは、いわゆる移動式オービスのひとつですが、持ち運べるほど小型・軽量であることから警察庁では「可搬式オービス」と呼んでいます。

2021年8月には、通学児童らを守るための緊急対策として新型オービス(=可搬式オービス)を拡充させる方針が閣僚会議で決まりましたが、警視庁ではこの範囲をさらに広げた活用が始まっています。

12月4日の都内一斉取り締まりでは100か所以上で飲酒検問が行われました。そのひとつ城東警察署が実施した清砂大橋(江東区新砂3丁目)の飲酒検問では、その前方に新型オービスが設置されていました。

清砂大橋は荒川と中川をまたぐ片側2車線の幹線道路の橋。全長は約1.3kmと長く、広い歩道も整備されています。新型オービスは、歩道上から車道に向けて設置されていました。

新型オービスは、速度測定器と記録用カメラが一体となったヘッド部を三脚に載せて、車両に対面させるだけで測定が可能です。測定時には、速度超過のデータを記録するのみで、運転者の摘発はその場では行いません。城東署の検問でも、飲酒のための停車は行われましたが、速度超過の運転者を止める様子はありませんでした。

「そろそろオービスだ」とはならない その恐ろしさ

新型オービスについて、警視庁関係者はこう話します。

「これまでの生活道路での取り締まりに加えて、速度を超過しやすい幹線道路でも可搬式オービスを活用していく。取り締まりの時間帯も昼間に限らず、機動性を生かして夜間、明け方にも実施していく」

新型オービス2013(平成25)年の埼玉県での試行導入以来、従来のオービスが設置できない場所や、道幅の狭い生活道路で、子供などの歩行者を守るための速度抑制に使われることが想定されてきました。

他方、従来のオービスには、設置場所の知名度が上がると速度抑制の効果が落ちる、という取り締まり上の課題がありました。新型オービスは設置も短時間で、その場で違反告知をする必要もありません。少人数で場所を変えながら運用することができることが、取り締まる側からみた長所でもありました。

警視庁の活用の拡大は、新型オービスの機動性を生かし、車両の速度抑制を図ろうとする目的があります。

2021年、都内の交通事故は前年比で、事故死者数は減少していますが、事故発生件数はむしろ増加傾向にあります。

「理由はわからないが歩行者事故は減る傾向にある反面、四輪車の事故は増加傾向にある」(警視庁関係者)

2020年の12月の東京は、死亡事故が増えました。コロナ自粛から解放された2021年の年末、警視庁はこの傾向を繰り返されることを危惧しています。

清砂大橋の歩道に設置された新型オービス。速度超過した車両を停めるスペースはない(中島みなみ撮影)。