その犬は飼い主と深い絆を結んでいた。犬は飼い主の帰宅時間を把握しており、11年間欠かさず、窓際で帰りを待ちわびていた。
飼い主は家に入る前に犬の姿を確認する。すると仕事の疲れが癒され、無事に1日を終えたことに感謝することができたという。
ところが、2019年に病により犬は16歳で虹の橋を渡っていった。それから3年がたち、ようやく飼い主は愛犬の死と向き合うことができたようで、その思い出をSNSに書き残した。
アメリカのイリノイ州シカゴに住むローマンさんが、愛犬トビーと出会ったのは今から14年前のことだという。
トビーは、当時交際していた女性の犬で、その時2歳だった。
当初、ローマンさんはトビーにあまりいい印象を抱かなかったという。
というのも、トビーはローマンさん宅に来て早々にリビングで粗相をしたり、ローマンさんの気を引こうとやんちゃな行動を繰り返したりした。それらは全てローマンさんにとって悩みの種となり、トビーを叱ることが増えたという。
しかしある日、ガールフレンドから「トビーをそんなに叱らないで、人間の子供のように接してあげて」と言われ、扱い方を変えてみることにしたローマンさん。
「どうせ、トビーは理解なんてできっこない」そう思っていたのだが、その気持ちは覆されることなる。
ローマンさんが接し方を変えて以来、トビーとの仲が急速に変化したのだ。
数年後には強い絆が育まれ、ローマンさんにとってもはやトビーはなくてはならない存在になった。
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11年間、窓際で飼い主の帰りを待ち続けたトビー
数年後、ローマンさんはガールフレンドと破局したが、自分の家を彼女に与え、その代わりにトビーを譲り受けた。それほどまでにローマンさんはトビーと深い絆を結んでいたのだ。
トビーがいつも傍にいてくれることで、ローマンさんは孤独を感じることなど一度もなかった。
検眼士として働くローマンさんの通常の勤務時間は、8~10時間。トビーは、飼い主の帰宅時間を把握し、窓際に座ってローマンさんの帰りを待つ日々を送った。
ローマンさんの車が見えると喜びを露わにし、玄関ドアが開くのを待つ。そんな日常が11年間続いた。
トビー、虹の橋を渡る
しかし、年老いたトビーは癌を患い、拡張型心筋症を含む3つの主要な手術を受けなければならなくなった。
術後も健康状態は芳しくなく、2018年10月にはトビーの癌がステージ4になっていること、腎不全であることをローマンさんは獣医師から伝えられた。
虹の橋を渡ったトビー
2019年2月になる頃には、トビーは自力ではもう何も飲み込めないほど弱っていた。
これ以上、トビーの苦しむ姿を見るのは辛い。ローマンさんは、トビーを楽にしてやるために、安楽死という苦渋の決断を選択した。
出会いは互いにあまりいいものではなかったが、その後芽生えた強い絆によって、トビーとローマンさんは、11年間愛と幸せに溢れた時間を共に過ごすことができた。
トビーというかけがえのない家族を得たことで、ローマンさんの11年間の人生はとても暖かなものになった。
だが、最高の相棒を失った悲しみは、あまりにも大き過ぎた。
トビーが旅立って、3年の月日が経った今でも、ローマンさんは帰宅すると家の外からつい窓を見てしまうという。
この11年間、毎日そうだったように、今も変わらずトビーが自分を待ってくれているかのように思えるのだ。しかし、そこにもうトビーの姿はない…。
このストーリーを知った人々からは、大切なペットを失う辛さについて多くの共感の声が寄せられている。
written by Scarlet / edited by parumo
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