先天性の急性骨髄性白血病(AML)で全身を紫斑(青あざ)に覆われて誕生した男児が先月で1歳になり、骨髄移植を受けた。誕生直後、両親は医師に「化学療法を行っても生き抜く可能性は低い」と言われながら病気と闘うことを決意、母親がこれまでの苦悩や軌跡、そして“戦士”である息子について語った。『7NEWS』『Mamamia』などが伝えた。

豪ニューサウスウェールズ州シドニー郊外ペンリスに住むネイサンさん(Nathan)とナターシャルーカスさん夫妻(Natasha Lucas)に昨年11月17日、次男アシュトン君(Ashton)が誕生した。

ナターシャさんが胎児の異常を感じて病院に直行したのは、誕生1日前の妊娠36週5日のことで「急にお腹の中の息子が静かになり、何かがおかしいと直感したのです。検査では問題がないと言われたのですが、私は医師に『今すぐにでも帝王切開で産ませて!』とお願いしました。医師は私に同意し、翌日の手術が決まりました」と当時を振り返り、このように続けた。

「アシュトンは誕生しても泣くことはありませんでした。カーテンで息子の姿は見えなかったのですが、医師の表情が曇るのが分かりました。静けさだけが漂う室内で、『私の直感が正しかったのかしら?』『間違いであって欲しいけど、赤ちゃんに何かあったに違いない』と不安ばかりが募りました。アシュトンはその後、酸素が必要だからと新生児集中治療室に連れていかれ、すぐに対面することは叶いませんでした。」

「その数時間後、私は車いすに乗り、夫と一緒にアシュトンと面会することができました。でも息子を一目見るなり、私は感情がコントロールできずにその場で泣き崩れてしまったのです。アシュトンにはチューブやワイヤーが繋がれ、頭からつま先まで紫斑がありました。また身体は腫れ、とても小さな腫瘍が全身にできていたのです。そばにいるのにアシュトンを抱くこともできず、私たちができることと言えば保育器の小さな穴から息子に触れることだけでした。そばにいた看護師らが私たちに同情するような視線を向けていて、さらに心が痛みました。」

実はアシュトン君は500万人に1人という先天性の急性骨髄性白血病(AML)を患っており、症状は深刻だった。ナターシャさんは全身が青あざだらけの我が子を見た時のことを「まるでマイク・タイソンボクシングで戦った後のようだった」と表現し、当時の苦悩をこう明かした。

「医師に『AMLの可能性が高い』と言われたのですが、『まさかこんな小さな子が血液のがんであるはずがない』と信じることができませんでした。でも検査で病気が確定すると『化学療法をしないでそのまま死なせるか、それとも死んでしまう可能性はあるものの化学療法を試してみるか』と2つの選択肢を与えられました。医師に『化学療法を始めても、新生児のほとんどは強い薬に耐えられず、1サイクル中に亡くなってしまう』と聞き、『何もしないで逝かせるか、それとも少しだけ症状を改善させるために毒薬を与えるか、そのどちらかを選べ』と言われているようで苦悶しました。」

「なぜ生まれたばかりの赤ちゃんにそんな治療をしなくてはならないのか。人生とはなんて過酷なのだろうと、そう思わざるを得ませんでした。」

それでも夫妻は「息子に闘うチャンスを与えたい」と治療をすることを決断、体重が3キロにも満たなかったアシュトン君は生後5日で最初の化学療法を受けた。ナターシャさんは化学療法を受けるアシュトン君を隣で見ていることができず、「死んでしまうかもしれないのに、この子のそばにいたら愛着が湧いて別れがつらくなる」と精神的に追い詰められ、葬儀のことも考え始めていたという。

ところが治療を初めて2日後、奇跡が起きた。アシュトン君が目を開き、ナターシャさんの目を見つめたのだ。

ナターシャさんは「その瞬間に全てが変わった」と明かすと、こう述べた。

「クレイジーと言われるかもしれないけど、息子が私を見た瞬間『ああ、この子は戦士だ』と思ったのです。息子が私に『ママ、僕は大丈夫。心配しないで』と言っている気がして、もし何かが起きたらどうしようと考えるのは止めて、息子と一緒に生きていこうと気持ちを新たにしたのです。」

そんなアシュトン君は今年4月、病気と闘い続けて寛解に至り、退院することができた。しかし8月に再発し化学療法を再開、11月23日にはヨーロッパのドナーから骨髄移植を受けている。

骨髄移植後の経過は良好で、ナターシャさんは「スタートこそ大変でしたが、アシュトンは明るくハッピーでいてくれます。また人々を笑顔に変えてしまう世界一のスマイルを持っているのです。上手くいけば来年の2月には退院できる予定なのですよ」と笑うと、最後にこう語った。

「AMLは非常に稀な病気です。この病気と闘っている世界中の子供たちや両親には『あなたは一人じゃない』と言いたいのです。アシュトンのことを知ってもらい、少しでも多くの人々がインスパイアされ、励みになれば嬉しく思います。」

画像は『Ashton’s journey with Congenital Acute Myeloid Leukemia 2021年11月28日付Facebook「The difference that 12 months can make」、2021年6月21日付Facebook「To the mum who didn’t get “just a healthy one”」、2021年4月16日付Facebook』『Mamamia 2021年12月2日付「Natasha hadn’t heard of neonatal cancer until her son was born with it. Here’s what she wants you to know.」(Image: Ashton’s Facebook Page.)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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