実在した同性愛者クラブで1973年に実際に起きた放火事件を題材に、2017年にオフブロードウェイで初演後、世界各国で上演されたミュージカル『The View Upstairs-君が見た、あの日-』が日本初上陸する。2018年にはオーストラリアシドニーで初海外プロダクションが開幕し、2019年にはロンドン版も上演された本作の演出を手がけるのは、日英米で活躍の場をひろげる英国在住の市川洋二郎。

本作で現代からタイムスリップする主人公・ウェスを演じる平間壮一、ウェスに惹かれていく男娼パトリックを演じる小関裕太に話を聞いた。

「裕太はなにをやっていても愛されるキャラクター」(平間)

──おふたりが『The View Upstairs-君が見た、あの日-』で楽しみにされていることを教えてください。

平間 初共演の方が多いので、そこがまず楽しみです。そして久しぶりに先輩方に囲まれることになるので、嬉しさもあり、緊張もありって感じですね。

──先輩たちと一緒だとどんなところがうれしいですか?

平間 こういうやり方があるんだ、って盗めるものが多い現場になると思うので、そこはやっぱり楽しみです。

小関 それで言うと僕は今回、久々に一番年下です。18歳の時の初主演舞台『FROGS』以降は自分が主演でもあまり肩ひじ張らないようになりましたが、やっぱり他のメンバーより年齢が上だとどこか「ピシッといなきゃ」「現場を見ていなきゃ」と思うところがありました。だけど今回は、役柄的にも、年齢的にも、のびのびとやらせてもらえたらいいなという楽しみがあります。

──おふたりは事務所の先輩と後輩でもありますが、俳優としてお互いのどんなところが素敵だと感じていますか?



小関 パワー。

平間 惹きつける魅力。

小関 うれしい。

平間 俺、裕太を嫌いって人に会ったことないよ。

小関 そうかな。「なんか嫌われているかも」って思うことはありますよ?

平間 あっはっは! まじ? ないなあ。俺は好きなタイプだからかな。ちゃんと自分を持ってる人だし、嫌なところもないですよ。相手に合わせることもできるけど、大人になって、嫌なものを嫌だと言えるようになったから、より付き合いやすいなと思う。

小関 うれしいな。

平間 俺は、悪役を演じるにしろ、いい人を演じるにしろ、愛されるキャラであるべきだと思っているんです。ディズニー作品が悪役も愛されるみたいに。でもそこって、本人が根っから持っている雰囲気が大事な部分だと思うから。そういう意味で裕太はなにをやっていても愛されるキャラクターです。しょうもない男の役をやったとしても、「でもしょうがないよね」ってふうに持っていける。そこが俳優としての魅力でもあるんじゃないかなと思います。



「壮一さんのパワーっていつも身体に対して真っ直ぐ」(小関)

──小関さんがおっしゃっていた平間さんの「パワー」というのは?

小関 壮一さんの出演舞台を観させていただいていると、スコーンと強さが抜けていると感じるんですよ。それがカッコいい。僕は人の息とか声とかが図形みたいに見えるのですが、壮一さんのパワーっていつも身体に対して真っ直ぐに見える。そういう意味で、すごく強いものを持っていらっしゃるなと思います。そこがすごくいいなあって。

──付き合いの長い、事務所の先輩でもありますね

小関 壮一さんとは小学5年生の時に初めてお会いして、それからずっと「5つ上のお兄ちゃん」的な存在です。笑顔が素敵で言葉がすごくやさしい。人に届く言葉をちゃんとチョイスされるで、10代の時に「ハンサムライブ」でご一緒していた時は、お客様に対して感謝の想いを届ける言葉が素敵だなと思っていました。真似したいけど、僕にはボキャブラリーが足りないからできないやって気持ちでしたね。



──そのボキャブラリーはどこから生まれているのですか?

平間 思ったまま言っちゃうから、あまり考えていないかも(笑)。でも僕は、恥ずかしいようなことも口に出しちゃう。あまり言葉に関して「恥ずかしい」って思わないんですよ。逆に隠したり偽ったりするほうが恥ずかしくなっちゃう。そういう意味ではお芝居は向いてないと思う

小関 ええ?

平間 だってお芝居って嘘だから。究極に嘘がうまい人たちが集まって、用意されたものを本当かのように演じている。時々、「俺、演じちゃってるわ!」って恥ずかしくなる瞬間がある。

──こんなにたくさん舞台に出演されていてもですか?

平間 全然慣れないです。今回も、台本4ページ目くらいでもう恥ずかしかった(笑)。「うわ~俺、これやるんだ!」って。

小関 僕はあまり「嘘」って思ったことがないかもしれない。

平間 そこが純粋なんだよね~。

小関 (笑)。「彼の信じている“本当”ってこうなんだ」と思って台本を読んでいて、そこを疑問視していないんだと思います。

──小関さんは、今回平間さんに舞台に関して聞いておきたいことはありますか?

小関 本番期間中に楽屋に置いておくべきものはありますか?

平間 俺ね、ミニマリストなのよ。

小関 ああ~。なるべく置かないんですね。

平間 置かない。初舞台なんて、ペンシル1本だったもん。「なにやるつもり?」って怒られたから(笑)。そこから始まって、今もこだわっていることはないね。

小関 加湿器とかもやらないですか?

平間 やんない、やんない。なんならコロナ禍になる前は人の楽屋にいることのほうが多かったし(笑)。

小関 そうなんだ!

平間 だから今はきついよ。一人で楽屋で悶々とするから。この舞台はふたりでつくっていきます!

平間・小関 (笑)



稽古場はカオスになりそう

──作品について、市川洋二郎さん(演出・翻訳・訳詞・振付)とはなにかお話しされましたか?

平間 僕は一度だけお会いして、ボイストレーニングをしました。裕太も?

小関 会ったのはそうですね。ただ僕は時々連絡を取っています。市川さんイギリス在住で、向こうでこの作品も観劇されていますし、すごく勉強されている方なので。歴史の話だったり、70年代のファッションだったり、美意識だったり、わからないことはどんどん聞いています。

──具体的にどんなことを聞いていますか?

小関 当時はどのくらいメイクができていたのかとか、そういうことですね。チークなんて塗ってゲイだとバレたら指さされて差別される時代だから、本当は美しくなりたいと思っている人も、リップくらいだと教えてくださいました。でもドラァグクイーンはいたので、そういう人たちはメイクしていたみたい、とか。

──平間さんはボイトレを一緒にされたのですか?

平間 そうです。僕は歌に苦手意識があるのですが、市川さんに新しい方法を教わったんですよ。身体のツボみたいなところを押しながら声を出してみたり、「君はここに力が入ってるよ」と教えてくださったりして面白かったです。新しいなにかが見つかるかもとも思いましたし。……でも今気付いたんですけど、市川さんすごいですね?

──というのは?

平間 だって振付まで……。

小関 え、振付もなんですか!

平間 そう。演出も翻訳も訳詞もやってるのにきつくない!?  だけど心強いね。日本にいるメンバーだけだとわからないようなことがわかる方がいてくださるのは心強いなと思います。

──共演者の皆さんも楽しみな方が多いですね

平間 稽古場がカオスになりそうな気がする。

小関 先輩方、どんなアプローチをされるんでしょうね。

平間 ほんとだよね。本当に濃い方しかいないから。

──おふたりとも初共演の方が多いですよね。

平間 なのでちょっと今、俺と裕太の目標を決めますね。

小関 お!

平間 畠中洋さんと仲良くなろう!

小関 シャイな方なんですか?

平間 撮影の時になんとなくそういう感じがして。だから「にいちゃん」って呼べるくらい仲良くなりたい。

小関 いいですね! 30歳上の先輩ではありますが。

平間 それでも兄弟くらいの距離感でいけるようになろうよ!

小関 そうしましょう!



アップステアーズ・ラウンジは“はみ出し者”たちが唯一心を開ける場所

──この作品は、実在した同性愛者クラブで、同性愛がまだ罪とされていた1973年に実際に起きた放火事件を題材にしています。作品のベースとなった出来事はどう思われましたか?

小関 当時の火事の記事を読んだり、実際の火災現場の写真を見て、抉られるような思いでした。火事にまつわるエピソードも、当時の同性愛に対しての考え方も、押しつぶされるような気持ちになりました。



平間 これは劇中ではあまり描かれてはいないんですけど、今すごく思っているのは、当時の“はみ出し者”である登場人物たちが唯一心を開いて、失礼なことも言い合える、下ネタも言えるし、好きな口調で話せる、みたいな場所がこのアップステアーズ・ラウンジだったんじゃないかなということ。一歩外に出るとそれができない世界だったんだと思うし、本当はそこが表現したいんじゃないかなと、俺の中では思っています。そのぶんラウンジの中で起きていることは、何も知らずに観ると少しびっくりするような下品な言葉などあるかもしれないんですけど、ここがその人たちにとっての居場所なんだってまず理解してもらえると、わかりやすいんじゃないかと思う。そういう場所って誰にでもあるから。そういうたった一つの場所がこんなひどいことになるっていうところも含め、いろんなテーマが入った作品だと思いました。

──その中で、現代からタイムスリップする主人公・ウェス役を平間さん、ウェスに惹かれていく男娼パトリック役を小関さんが演じますが、そのことはどう思われていますか。

小関 僕、実は最初は、お兄ちゃん的な壮一さんと一緒にこの作品をやる、しかも恋仲になる役って聞いて、戸惑いと恥ずかしさはありました。

平間 でも俺たちふたりは、同じ事務所でちっちゃい頃から知っていて、分かち合える部分が既にたくさんある。そこが役として醸し出されればいいんじゃないかなと思ってる。そういう俺たちだからこそ、表現できるものがあるはず。

小関 そうかも。そういう視点で挑んだらここにしかない面白みが生まれそう。

平間 でも初日のことを考えると、今はまだ怖いな。

小関 稽古も1か月半以上ありますから!

平間 そうだね。楽曲もとにかく良いので。がんばります!





おまけの質問★

Q:俳優として転機になった作品は?

平間 俺は地球ゴージャスの『LOVE BUGS』(’16年)と『RENT』(’15、’17、’20年)あたりです。自分にとっての第二章なんです。アンサンブルから役がつくまでがんばるのが第一章、そこから役が付いてから主役をやるまでがんばる、っていうところからが第二章。だから次は第三章ですよね。それをどこに持っていくかは、これから考えていきます。

小関 僕は『ごめんね青春!』(’14年)というドラマです。トランスジェンダーの役を演じました。今でもいつもその時の自分を超えようとしている作品です。自分のライバルは、あの時の自分だなと思っています。

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取材・文:中川實穗 撮影:源賀津己
ヘアメイク:Emiy(エミー
スタイリスト:吉本知嗣



右から 平間壮一、小関裕太