どの大学にも授業計画を示すシラバスというものが存在する。その授業で何を学ぶのかなどが記されているため、学生はシラバスをチェックすることで授業の目的を理解しやすくなる。このほどアメリカの大学で教鞭を執る教授が、シラバスに賞金の場所を示すヒントを隠して学生たちを試した。「1人くらいは見つけているだろう」と思いながら賞金の隠し場所を確認してみると、誰も探していないことが判明したのだ。教授が仕掛けたイタズラの詳細を、『CNN International』などが伝えている。

テネシー州チャタヌーガにあるテネシー大学チャタヌーガ校で舞台芸術についての授業を行っているケニヨン・ウィルソン教授(Kenyon Wilson)は、授業を受ける71人の学生たちがしっかりとシラバスを読んでいるかを試すことにした。

ケニヨン教授は授業の初日に「シラバスに一部変更があります。目を通しておいてください」と学生に伝え、変更後のシラバスには「…そのため(最初に見つけた人の自由です。ロッカー147、組み合わせは15、25、35)授業に参加する資格が無い場合があります…」と内容自体に変更はせず、かっこ付きで文の途中にヒントを追加していた。

ヒントは謎解きのように複雑なものではなく、単に147番のロッカーに何かがあることを示し、後半の数字はロッカーに付けていたダイヤル式の鍵の番号を意味している。これに気がついて147番のロッカーを開けると、ケニヨン教授が中に入れた50ドル紙幣(約5600円)を手にすることができる。

普段は滅多に変わることのないシラバスだが、近頃はパンデミックの影響で変更することもあるという。しかしシラバスは授業内容の総括が書かれているだけであり、確認しなくても問題なく授業を受けることができるので読まない学生がほとんどだ。

そうは言っても71人の学生のうち、ケニヨン教授は「1人くらいは読んでいるだろう」と予想していた。ケニヨン教授は学期末にロッカーを確認することにし、期末試験を終えてようやくロッカーをチェックした。

すると入れておいた50ドル札は手付かずで残っていた。さらに「おめでとう! 誰が見つけられたか分かるように、名前と日付をここに書いてください」と綴ったメモ用紙も置いていたが、名前が書かれた痕跡は一切なかった。ダイヤル式の鍵のメモリを12時の位置に合わせていたが、それすらも変わっていなかったのだ。

この結果にケニヨン教授は「誰もシラバスを読まないというのは、大学ではお決まりのことです。ソフトウェアをダウンロードした時の利用規約と同じで、みんな読んだものとしてクリックして先へ進みますから」とコメントしている。

ケニヨン教授のゼミに所属する学生の1人であるヘイリー・デッカーさん(Haley Decker)は「正直面白いと思いましたね。このクラスは毎学期同じ形式で授業が行われるので、学生たちは何が行われるのか分かっているからシラバスを読むために時間を割こうとは思わないのです」と明かしており、「教授は本当に賢い実験を行ったと思います。繰り返しの情報であろうと、注意深くシラバスを確認すべきであると学生たちに再認識させたんですから」と話し、ケニヨン教授の行動に脱帽したという。

クラスでケニヨン教授が真相を明かすと、学生たちは気まずそうにしていたそうだ。ケニヨン教授は「学生たちがシラバスを一字一句逃さずに読んでほしいとまでは思っていません。ただ、もしそこまでする学生がいるのなら、それに報いたいと思いました」と話している。

定型文が並ぶシラバスや利用規約を読むのは決して楽しいことではないが、たまには読み込んでみると良いことがあるかもしれない。

画像は『Kenyon Wilson 2021年12月9日付Facebook「My semester-long experiment has come to an end.」』『CNN International 2021年12月18日付「A professor hid a cash prize on campus. All students had to do was read the syllabus」(COURTESY KENYON WILSON)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)

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