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改めて、ルール説明

クリスマスに恒例の、1年間をふりかえるミーティング、今年はディナーではなくランチを囲むこととした。そして、クルマ選びのルールも多少変更している。改めて簡単に説明しよう。

【画像】クリスマスにプレゼントされたいクルマは? 全16枚

例年なら、テスターが各自、お気に入りの1台を持ち寄ったところだ。しかし、今年は誰かにプレゼントする形式で、集合場所で発表するまで車種は内緒。おかげで、すでに述べているとおり、選びたいクルマを持ってこれなかったテスターもいたのだが。

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憧れのビッグクーペから激安の足グルマまで、各テスターのチョイスはさまざまだが、みんな一応は自分なりの根拠を持って選んだ結果だ。    LUC LACEY

内訳は、EVが3台、MT車が2台、ビッグクーペとディーゼルワゴンが1台ずつ、そして掟破りのレストモッドが1台。もっとも注目を集めたのは最後の、新車と呼べるか疑わしいクルマだが、その詳細はまた後ほど。

さらに、試乗はできなかったが、自分で乗るなら、というテーマでもクルマを選んだ。きわめて主観的な2021年の総括、前編に引き続きお楽しみいただきたい。

ダチア・サンデロ:ジェームズ・ディスデイルからマイク・ダフへ

パブの駐車場にサンデロを見つけた途端、自分がそのステアリングを握る栄誉に浴することにうすうす気づいた。結果は予想通り。ディスデイルが熟慮の末そのチョイスにたどり着いた理論的な根拠は、わたしの日々が華やかで恵まれているという大きな誤解だ。

「君はいつも、世界中のあちこちを飛び回って、浮世離れしたスーパーカーに乗っているよね。だから、現実を知る機会を用意してあげようと思ったんだ」というのが彼の言い分だった。「なんで君ばっかり、そんな思い通りになるんだ?こっちはまったく真逆だよ」。

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スーパーカーを試乗する機会が多いダフだが、すでにこの安価なサンデロには試乗済みだった。そして、じつは結構気に入っているらしい。    LUC LACEY

たしかに今年、AUTOCARでレポートしたクルマの平均馬力は、400psを少しながら上回るし、安さの限界に迫るようなクルマと共に過ごす時間はほとんどなかった。その希少な機会で、すでにこのダチアの魅力には気づいていたのだが。

その歩みは、今回のどのクルマよりもゆっくりだ。しかし、中級グレードのコンフォートで十分すぎるほど豪華に感じられる。ワイヤレス接続できるAndroid Autoなど、コネクティビティは多くのプレミアムブランドよりずっといい。これがプレゼントなら、大満足だ。負け惜しみではなく。

アルピナB8グランクーペ:マイク・ダフからリチャード・レーンへ

レーンのことをわかっているなら、アルピナに心酔していることは知っていて当然だ。しかし、あまりにわかりやすい、彼がすでに多くの賛辞を重ねてきたクルマの中から選ぶのは避けたかった。

そこで選んだのが、B8グランクーペだった。これは、ブッフローエがより知的な爆速BMWを探しているユーザーに、選択肢を提供してきた事実をこれみよがしでなく思い出させてくれるクルマだ。

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これぞまさしく、ベルベットの手袋に包まれた鋼の拳。優雅な姿に、強烈なパフォーマンスを秘めたB8。しかしレーンは、B5ツーリングのほうがお好みらしい。    LUC LACEY

「エンジンが真ん中や後ろにないクルマだったら、アルピナしかない」というのがレーンの主張だ。「そしてこのクルマは、彼らの伝統的なレシピを示す好例だ。とてつもないパフォーマンスの持ち主だが、驚くほど楽に日常使いできる。ベルベットの手袋に包まれた鋼の拳といった趣。これぞまさしく、羊の皮を被った狼だ」。

ただし、レーンのホームランコースにドンズバ、というわけではなかったらしい。「アウトバーンで無敵の戦車を選ぶなら、これではない。やはりB5ツーリングが最高だ」。言い回しはめんどくさいが、言いたいことはよくわかった。

ポルシェ・タイカン:マット・プライアーからジェームズ・ディスデイルへ

今回の8台に、911が1台も入っていなかったことは驚きだ。どうやらみんな、誰かがGT3を選ぶと思って遠慮したらしい。しかし、タイカン4Sが仲間入りしたことには、誰もが当然だという顔をしていた。ロードテストでの満点評価以上に、このクルマを選んだことを正当化する理由はいらないし、プライアーの根拠はじつに簡潔だった。

「クルマもドライビングも好きなディスデイルにはポルシェ。そして、家族持ちで郊外に住んでいるから、ファミリーで使えるクルマ」。そしてもうひとつ。「ザ・ガーディアンを購読しているから、電動車」ということだ。

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ロードテストで満点を叩き出したタイカンは、今年の総括に欠かせないクルマだ。ランチミーティングでも、話題になることは多かった。    LUC LACEY

予想通り、その反応はじつに好意的なものだった。ランチタイムの会話でも、タイカンへの称賛に多くの時間が費やされた。「まさしくポルシェの走りなんだけど、間違いなくEVなんだよ」と切り出したのはディスデイルだ。「ポルシェに共通のダイレクトさやコントロール性と、ソフトさや快適さを兼ね備えている。おまけに、とんでもなく速いんだ」。

キングスレー・カーズULEZリボーン・レンジローバー・クラシック:マット・ソーンダースからマット・プライアーへ

エントリー資格の基準を広げるにもほどがある、とは思うが、不平の声を上げるテスターはひとりもいなかった。オックスフォードシャーに本拠地があるキングスレー・カーズは、長年にわたりクラシック・レンジローバーに最高レベルのレストアを施し、世界の隅々にまで送り届けてきた。

しかし、ロンドンの超低排出ガスゾーン(ULEZ)規制で、これまでとは違う存在意義が生まれた。1981年以前に生産されたクルマは、基本構造を維持していればULEZ課税の対象外となるクラシックカーとして扱われるのだ。

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みんなが自分へのプレゼントであってほしいと願った初代レンジは、マットからマットへのプレゼント。はたして、試乗のチャンスをもらったほうのマットは、自分のディフェンダーをこれに買い換えるのだろうか。    LUC LACEY

触媒なしで4.6Lもの排気量があるV8を積んでいては、とてもじゃないがエコではない。しかも、レストア費用はベース車の価格抜きで12万5000ポンド(約1750万円)。1日あたり1750円が免除されるとしても、安い金額ではない。

「マットはランドローバー・ディフェンダーを持っているけど、ULEZ対応車への買い替えを検討しているのは知っていたんだ。だったら、これならパーフェクトだろ」とは、もうひとりのマットの弁だ。「もちろん、自分が乗りたいクルマでもあるんだけどね」。

まったくもって異議はない。このキングスレーの目を見張るような存在感、そしてエンジンの唸りは、テスター陣の間にキーの争奪戦を勃発させ、誰もが我先にその決して現代的ではないのに魅力的なドライビングを味わおうとした。こんなプレゼントを贈られる幸せ者はいったいぜんたい誰なのか、発表まで、空気は張りつめていた。

よっしゃ!」と拳を突き上げたのはプライアーだった。「少量生産車は好きだし、V8もだし、出来のいいレストモッドも大好きだよ。マットがどうして、このクルマがわたし向きだと考えたのかはよくわかる。まったく的を射ているよ。たとえ、古いシガーみたいなクルマだとしてもね」。

テスターたちが選ぶ自分へのごほうび

ヴィッキー・パロット:アルピーヌA110レジャンドGT
イリヤから奪い取ってでも、ステアリングを握るつもり。

スティーブ・クロプリー:ポルシェ・タイカン
なんといっても、このクラスで最高の一台だからね。

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ひとにすすめたいクルマと、自分でほしいクルマというのは、えてして違うものだ。そして、当たり前だが好みがはっきりと表れる。

イリヤ・バプラート:ロータスエリーゼファイナルエディション
エリーゼだったら、ノリノリで試乗できたんだけどね。

リチャード・レーン:ポルシェ911GT3ツーリング
もちろん、マニュアルで!

マイク・ダフ:ランドローバー・ディフェンダー
90のP300で、布シートと鉄チンホイールの仕様がいい。

ジェームズ・ディスデイル:ケータハム170R
個人的には、あのクルマこそが今年のハイライトだ。

マット・プライアー:モーガン・プラス4 CX-T
モーガンのラリーカーは、忘れられない一台だ。

マット・ソーンダースBMW M5CS
M5 CS、きみこそスターだ!


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