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 子供は親を選べない。いわゆる親ガチャというやつで、生まれた瞬間からある程度運命は決まっていくのだが、それは人間に限ったことではなさそうだ。

 特権階級の子供たちは生まれた時から有利な立場にあるが、新しい研究によると、同じような「特権」が動物界でも広く見られるそうだ。

 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校などのグループは、ほ乳類・魚類・昆虫・鳥類などの事例から、前世代から富や資源を相続できる立場、すなわち「特権」が格差や不平等を生み出していると説明する。

 こうした動物界に存在する特権階級を理解することで、人間社会の進化に根ざした不平等の根源についての貴重な洞察を得られるだろうと、『Behavoiral Ecology』(21年12月7日付)に掲載された研究は論じている。

【画像】 動物界における特権

 「特権」とは、「前の世代から受け継ぐ資源」のことだ。

 人間社会では、裕福な家庭に生まれた子供は、親からその財産を受け継ぐ傾向にある。

 生前・死後を問わず、親から子へと受け継がれる財産のおかげで、その子供は教育・仕事・人間関係などさまざまな面で有利な立場に立つことができる。

 実は動物界にも「特権」は広くみられる。彼らが親から受け継ぐのは、巣や縄張り、食べ物や知識などだ。

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動物の親から子へ受け継がれる特権の種類

 たとえばエゾリスの仲間は、せっせと蓄えたドングリや松ぼっくりを子供に与える。これがリスの子孫たちに「適応度の差」を作り出し、生存や繁殖を有利にする。

 魚のクマノミは、イソギンチャクに隠れて危険から身を守る習性があるが、彼らはそのイソギンチャクを子に譲る。イソギンチャクは大きなものほど安全だ。そのため安全な隠れ家を受け継いだ子供はそれだけ有利になる。

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 父親や母親から直接特権を与えられることもある。

 ライチョウの若いオスは、近くに父親がいた方が、求愛の儀式を行う際に有利だ。このため、父親がいない個体に比べるて、繁殖のチャンスが増える。

 マダラハイエナの場合、母親から社会的地位を受け継ぐ。地位が高い母親の子供なら、それだけ優先的に獲物を食べることができる。

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 同様にして、ハチの中にはメスから巣を受け継ぐものがいる。そうしたメスは、もちろん子孫を残せるチャンスが高い。

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 土地やエサといった形があるものばかりでなく、知識が特権的に受け継がれることもある。

 霊長類では、チンパンジーやオマキザルの仲間が、ナッツを割るための石を相続する。

 これは形ある道具だ。だがその一方で、「社会的な情報」の伝達でもある。石を受け継いだ子孫は、道具としての石の使い方をも教わっているからだ。

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動物界に広がる格差社会

 こうした親から子への富の移転は、複利となって特権階級の優位性をさらに加速する。その一方で、持たざる者はいっそう不利になる。

 たとえば、先述したマダラハイエナの場合、特権に恵まれハイエナの一族は、その優位性のおかげで徐々に大きくなる。だが恵まれなかった一族は数が減り、ときに滅亡することすらある。

 シロアリの場合、2つの家系が「合併」して、巣を共有することがある。これはお互いの一族が資源を得るチャンスを高め、将来的な特権をさらに揺るぎないものにする。

 こうして持つ者は栄え、持たざる者は衰える。まさに人間社会で起きていることと同じだ。

 こうした動物界に広く見られる特権の研究を通じて、「深く進化に根ざす富の不平等の根源」を理解できるようになると、研究グループは論じる。

 特権が生まれ、それが何世代にもわたり維持される仕組みを理解すれば、人間社会についても貴重な洞察が得られる。

 そこから「多少なりとも平等な競争を生み出す条件」も明らかになるかもしれないとのことだ。

References:New study finds that "privilege" exists in the animal kingdom too / written by hiroching / edited by parumo

 
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動物界にも親ガチャがある。特権階級があり、生まれた時から格差や不平等がある