わが子が野菜嫌いでなかなか食べず、栄養の偏りで体を壊さないか気にしている親は多いと思います。例えば、ハンバーグの中に細かく切ったニンジンを混ぜるなど、子どもに野菜が分からないようにして食べさせる親もいるでしょうが、子どもの勘は鋭く、野菜を見つけてしまい、なかなか思ったような成果が出ないケースもあります。

 野菜嫌いの子どもには「野菜成分入りの菓子を食べさせると、野菜を食べたことになるのではないか」という意見もあるようですが、野菜を食べない子どもには、野菜成分入りの菓子を食べさせればよいのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

スナック菓子のビタミンは微量

Q.よく、大人は「1日の野菜は350グラムを取りましょう」と聞きます。子どもの場合、1日に必要な野菜の量はどれくらいでしょうか。

岸さん「厚生労働省は、大人が1日に必要な野菜の推奨量を350グラムとしていますが、子どもは年齢により、推奨量が異なります。女子栄養大学(埼玉県坂戸市)が発表した『4つの食品群の年齢別・性別身体活動レベル別食品構成』という資料によると、3~5歳の1日に必要な野菜の推奨量は240グラム、6~7歳は270グラム、8~9歳は300グラム、10歳以上は350グラムと示されています」

Q.野菜成分入りの菓子を食べると、野菜を食べたことになるのでしょうか。

岸さん「野菜成分入りの菓子を食べても、野菜を食べたことになるとは言えません。野菜そのものを食べるよりも、摂取できる栄養素が少ないからです。野菜そのものには、酵素やビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれています。一方、野菜成分入りのスナック菓子は野菜を加熱など、さまざまな加工を行ってできるものなので、熱に弱いビタミンCやビタミンB群などが微量しか含まれません。酵素の力も失われてしまいます。

ただ、野菜チップスやドライフルーツなら多少、ビタミンやミネラルが多かったり、脂質が控えられたりしたものもあり、野菜成分入りのスナック菓子よりも栄養価が高いです。ただし、中には、砂糖や油脂が添加されているものもあるので、表示をよく見て購入しましょう。フリーズドライの野菜菓子も販売されていますが、フリーズドライのものであれば、栄養価の損失が少ないのでおすすめです。

もっとも、栄養価の高いフリーズドライのお菓子やドライフルーツの中には、水分を吸収して便のかさが増える『不溶性食物繊維』が豊富に含まれるものもあります。不溶性食物繊維を取り過ぎると、おなかが張り、便秘などの原因になることもありますので、食べ過ぎには注意が必要です」

Q.もし、「野菜成分入りの菓子で子どもに野菜を食べさせられる」と考える親が野菜の代わりに毎日、野菜成分入りの菓子を食べさせると、子どもはどのようになりますか。

岸さん「スナック菓子のようなものであれば、脂質過剰や糖質過剰によって、カロリーオーバーになりやすく、食事全体の栄養バランスも崩れてしまうでしょう」

Q.野菜嫌いの子どももいずれは、野菜そのものを食べられるようにならないといけません。親はどのようなことをすればよいのでしょうか。

岸さん「苦手なものであっても、成長するうちに少しずつ食べられたり、慣れたりすることもあるため、しつけや栄養バランスにこだわるあまり、子どもを叱らないようにしましょう。野菜を食べやすくする工夫は子どもの好きなソーセージやチーズと野菜を一緒にしたり、味付けをカレー味やケチャップ味にしたりすることで、好きな味にうまく調和させることができます。

また、すりおろして、見た目の抵抗をなくすことも効果的です。レンコンサツマイモニンジンダイコンなどが向いています。ピーマンが苦手な子どもには、同じような成分のニンジンカボチャを代わりに選択してもよいです。おやつの時間は子どもの好き嫌いをなくす絶好のチャンスです。

すりおろしたニンジンや細かくしたホウレンソウなどの葉物野菜を、蒸しパンやパンケーキに混ぜてみてもよいですね。食べることができたら、とにかく褒めてあげて、苦手なものを克服できたという成功体験につなげられるようにしましょう」

オトナンサー編集部

野菜成分入りの菓子が野菜代わりに?