香取慎吾が主演を務める太平洋戦争80年・特集ドラマ「倫敦ノ山本五十六」(夜10:00-11:13、NHK総合)が12月30日(木)に放送される。

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同作はNHKの独自取材で明らかになった、海軍内部の極秘文書に基づく実録ドラマ。香取は真珠湾攻撃の指揮を取ったことでも知られる海軍将校・山本五十六を演じ、国民から「英雄」と呼ばれるようになる以前の、海軍という組織の中でもがき続けた、新たな「山本五十六像」に挑戦する。

今回、WEBザテレビジョンでは香取にインタビュー。大河ドラマ「新選組!」(2004年)以来17年ぶりにNHKドラマに出演する心持ち山本五十六を演じるにあたっての思いなどについて聞いた。

丸刈りで挑んだ「倫敦ノ山本五十六

――今作には丸刈りで臨まれていますが、抵抗はありましたか?

全くなかったです。

撮影が終わってから少しずつ髪が伸びてきたのですが、刈りたくて仕方がないです。今後、僕は髪を伸ばすと思いますが、それは仕事のためです。本当だったらもう一生このままでいいぐらい、とっても気に入っています(笑)。

僕はお芝居が苦手なのであまりこんなふうに思ったことがなかったんですけど、これまでとは異なり時間にゆとりもある中で、「お芝居させてもらうのであれば、丸刈りにするぐらいの気持ちで向き合うような役もできたらな」と話していたら、1カ月経たないくらいの頃にこのお話を頂いて。

自分が思い描いていた中でも“トップオブトップ”の役が頂けたことにびっくりして、「ぜひやらせてください」とお返事したのですが、後になって時代背景などを含め大変な役を引き受けてしまったな、と実感しました。

――丸刈りは2度目とのことですが、前回丸刈りにされたタイミングは?

1回目は大河ドラマ「新選組!」のときなんです。

大河ドラマでは1年間かつらをつけるので、「その間はどんな髪型にしていてもいいんだな」と思ってモヒカンにしたんですが、会社の人にめちゃくちゃ怒られて (笑)。なので、モヒカンにして1週間で全部刈って、丸刈りの状態で三谷幸喜さんと「新選組!」の制作会見をしたんです。

「『新選組!』への強い思いから頭を刈ってきたんだな」と思われていたと思いますが、実はそうじゃないんです(笑)。

■「17年ぶりにNHKのドラマに出演させてもらって…」

――今作では「新選組!」以来17年ぶりのNHKドラマへの出演ですね。

17年ぶりにNHKのドラマに出演させてもらって、スタッフの皆さんのプロフェッショナルぶりにびっくりしました。

ロケ先やセットも、他では経験できないような規模で。その場に足を踏み入れるだけで自然と役に入り込めるような現場でした。衣装も、クオリティーが高いというかもう、“その当時の服がある”んですよ。ディティールに至るまで、忠実に再現されていて。

僕はやはり17年ぶりなので、いちいち驚きがあるのですが、NHKのスタッフの皆さんはずっとそこにいらっしゃるので、そのすごさがわからないんですよね(笑)。

――山本五十六という人物を演じてみていかがでしたか?

いろいろな俳優さんが演じる作品を見てきた中で役の大きさは実感していたため、「自分がこの役をやらせてもらうときが来たのか」と最初はプレッシャーを感じました。

でも監督やスタッフの皆さんに支えていただいて。みんなで一つの役を作っていくということを強く感じられる現場でした。

僕が演じさせてもらった山本五十六役はとてもまっすぐで、芯がぶれず、窮屈。周りをほっとさせるようなユーモアを見せることもあるけれど、それも“先の先を考えて”の言動なので、実際自分ではほっとする瞬間がほとんどない役でした。

――これまでにもさまざまな方が演じてきた山本五十六ですが、“香取さんの山本五十六”の見どころを教えてください。

人に動いてもらうときには言葉だけではなく、思いの強さなども必要だと思いますが、今回の作品にはまさにセリフにはない、“気持ち”で人を動かすようなシーンが多かったです。途中で自分の中の何かが緩んでしまうと通じなくなってしまうものを(緩めず)、相手がうなずいてくれるまで、心の中でも思いを伝え続ける。そんなシーンが多かったような気がするので、セリフだけではない部分もぜひ見てほしいです。

■大河ドラマはには、クリアした人間にしかわからないものがある

――演じてみて印象的だったシーンを教えてください。

山本五十六が上司に囲まれるシーンがあるのですが、とにかく「いいえ」は言えない。「いやあ」とか、「それはどうですか」という素振りや表情すら出せない空気の中で、「イエスかノーか」と一応聞かれるんです。「イエス」と答えることになるのですが、お芝居とはいえ、すごい時代だったんだなと思い胸が締め付けられました。

――緊迫したシーンが続く中、五十六が自分の子どもと接するシーンにはどことなく人間らしさがにじみ出ていますが、撮影中のエピソードなどがあれば教えてください。

僕の子ども役の子が、撮影の合間に意を決したように話しかけてくれたんですが、「実は僕、こないだまで(「青天を衝け」で草なぎ剛が演じている)慶喜の子どもだったんです。草なぎさんのすぐ後が香取さんですごくうれしいです」と言われて。「おお、そうなのか、ありがとう!」なんていう会話をして、ほっこりしました。

――草なぎさんが「青天を衝け」で活躍されている姿はいかがですか?

この1年はずっと草なぎに「撮影の様子はどう?」なんて聞いていたのですが、最初のうちは「撮影が大変だ」と言っていたのに、中盤から後半にかけて「面白くてしょうがない」「終わるのが寂しい」と話すのを聞くようになり、自分もそうだったなと思いました。

やっぱり大河ドラマは非常に大きいもので、そこをクリアした人間にしかわからないものがある。それを草なぎと話せているのが非常にうれしいですし、彼が活躍している中で今回のこの役をいただけたので、より感慨深かったです。

――今作への出演にあたり、稲垣さんから何かリアクションはありましたか?

通りすがりに僕の髪を見て「お〜〜!」って言いながら、すごく興味深そうに見ていました。「すごく気持ちいいし、いいよ!」とおすすめしたんですけど、苦笑いされて終わりました(笑)。

――作品を見た視聴者の方々にどんなことを感じてほしいと思われますか?

僕は映像や本などでしか戦争を知りませんが、このドラマを通じて、一国だけでなく皆で未来について話し合いをしていて、「より良い未来のために」という思いの人もいる中で、歯車が合わなかったからこそ(負の)歴史が刻まれてしまうこともあるんだなと知りました。

何が起きていたのかを知ることだけでも僕はとても勉強になったので、そこを見てほしいですね。これからも強い思いを持っている人が増えれば、悪い未来に進むことを少しでも防げるんじゃないかなと思います。

香取慎吾/(C)NHK