ブラバスEV12(2009年)
改造車というものをどこまで含めて紹介するか、線引きに迷うところだ。しかし、平凡なセダンに最高370km/hまで加速する6.2LツインターボV12エンジン(811ps)を搭載したEV12については、例外を認めざるを得ない。
【画像】見た目と性能のギャップ【スリーパーたちを写真で見る】 全58枚
これはフェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェ、マクラーレン、アストン マーティンのどの市販車よりも速く、しかも非常識なスピードで家族とその荷物を快適に運ぶことができる。
インフィニティQ50ハイブリッド(2013年)
見た目はシャープでも、結局のところ、インフィニティQ50はほとんど目立たない存在だった。306psの3.5L V6を搭載し、電気モーターと組み合わせて合計364psを発揮するハイブリッドモデルは、まさに羊の皮を被った狼。
5.1秒で0-100km/h加速を達成できたのだから、もっと注目されてもいいはずだ。
テスラ・モデルS P100D(2016年)
テスラの先進的なデザインのおかげで、モデルSはハイテクで魅力的に見えるが、正直に言うと、0-100km/h加速を最短2.3秒で走り抜けるクルマには見えない。これはフェラーリ488 GTBやランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテよりも速いのだ。
BMW M550d(2017年)
バッジ以外でM550dを見分ける唯一の手がかりは19インチのアルミだ。まさしくステルスマシンである。フロントには、クワッドターボ3.0L直6ディーゼルエンジン(最高出力400ps、最大トルク77kg-m)を搭載し、0-100km/h加速をわずか4.4秒(前世代のM5と同じタイム)で達成する能力を備えている。
オールズモビル88(1949年)
米国のマッスルカーの多くは1960年代に作られたが、オールズモビルは1949年に88を発表し、小さなクルマに大きなエンジンを載せるという大胆な実験を行った。98用に設計した137psのロケットV8を、小型で軽量な76のボディに搭載したのである。
0-97km/h加速12.2秒というタイムは、今となっては遅く聞こえるが、当時は非常に印象的なものだった。性能は高く評価され、オールズモビルは新型車の宣伝のため、ストックカーレースで記録を打ち立て始めた。1949年にはNASCARのグランドナショナルレースで5勝を挙げている。
2ドア・クーペを含む6種類のボディスタイルが用意され、いずれも警官の目を潜り抜けるような大人しいデザインだった。
クライスラーC-300(1955年)
クライスラーは、オールズモビルが浴びていたスポットライトを奪い取るべく、1955年モデルとしてC-300を発表した。ヘミV8を搭載し、4バレルキャブレターとフルレースカムシャフトの組み合わせで304psを発揮するC-300は、発売当時米国で最もパワフルな市販車となった。
注文できるのはクーペのみで、価格は現在の貨幣価値で約4万ドル(約460万円)であった。クライスラーの中で2番目に高価なモデルであり、見た目もそれなりに良かったが、グリルの奥に隠された強大なパワーを周囲の人々に知らせるのは、チェッカーフラッグを模した小さなエンブレムだけであった。
VolksVair(1960年代)
カリフォルニアのクラウン・マニュファクチュアリング社は、1960年代に珍しいスリーパーを製造していた。空冷フォルクスワーゲンをベースに、フラット4を外し、コルベアから取り出したフラット6に置き換えたのだ。
その結果、当時の広告によれば、出力が200%アップしたという。後輪を空転させながらウィリー走行ができる、普通の外観のバスやビートルにスピード狂は喜んだことだろう。生産台数は不明で、近年は1台だけ現存しているようだ。
ポンティアック・テンペスト・ルマンGTO(1964年)
1960年代、自動車メーカーは高性能モデルにウィングやストライプ、ベントといった派手な外観を与えるものと期待されていた。ポンティアックは1964年モデルでテンペストのGTOパッケージを発表し、その流れに逆らった。
ボンネットのエアスクープ、エンブレム、独特の形状のホイールなど、美的センスにおいて他と一線を画していた。その繊細さは今では忘れ去られている。多くの個体がアフターマーケットのパーツで改造されることになったからだ。
ポンティアックは、329psの6.4L V8エンジンを搭載し、0-97km/h加速のタイムを7.7秒としているが、実際にはそれよりずっと速い。Car & Driver誌が1964年にこのモデルをテストした際は、4.6秒を記録している。
シェルビーGLHS(1986年)
クライスラーの欧州部門にルーツを持ち、英国ではタルボット・ホライズンとして販売されていた小型ハッチバック、ダッジ・オムニには何の刺激もなかったが、シェルビーはこれを米国史上最高クラスのホットハッチに仕立て上げることに成功した。
ターボチャージャー付き2.2L 4気筒エンジンは、0-97km/h加速を7.0秒で到達できるよう177psにチューニングされたほか、サスペンションの改良によりハンドリングが大きく改善されている。フォルクスワーゲンのGTIを上回るべく、車名は「Goes Like Hell S’more」とされたが、その名に恥じないパフォーマンスカーである。
500台が製造されたGLHSは、ベースとなったGLHよりもさらにレアだ。とはいえ、オムニであることに変わりはなく、現代のフィアット500アバルトと競り合える力を持っているとは誰も思わないだろう。
ダッジ・キャラバン・ターボ(1989年)
背の高い箱型のミニバンがどうしてここに並ぶのか?ダッジは1989年と1990年のモデルで、2.5L 4気筒ターボ(最高出力152ps)を搭載し、5速MTと組み合わせたキャラバンを発売したからだ。
0-97km/h加速は9秒とスポーツカーの域には達していなかったが、見た目の割にずいぶんと速い。プリムスはボイジャーにも同じドライブトレインを設定した。
フォード・トーラスSHO(1989年)
1986年に発売された初代フォード・トーラスは、米国では瞬く間に石を投げれば当たるほどの存在となった。1989年に登場したスーパー・ハイ・アウトプット(SHO)モデルは、そんな大ヒットモデルの影に隠れた猛獣である。
控えめな外観にヤマハ製3.0L V6エンジンと5速MTを搭載し、220psで前輪を駆動するトーラスSHOは、0-97km/h加速で6.6秒のタイムを記録した。1992年には2代目が発売。SHOの名称は何年も生き続けたが、2019年にフォードがトーラスの生産を終了したため、引退となった(現在は中国のみで販売)。
GMCサイクロン(1991年)
GMCは、280psにチューニングされた4.3L V6スーパーチャージャーをエンジンルームに押し込むことで、S-15をスポーツカー並みのピックアップトラックに変身させた。
0-97km/h加速4.3秒という速さは、シボレー・コルベットを余裕で凌駕しているが、価格は現在の貨幣価値で約4万9000ドル(約560万円)と、ほぼ同等に設定されている。目標とされた3000台を売り切るのに時間はかからず、同じパワートレインが1992年にタイフーンという名のSUVに搭載されるほど人気を博した。
日産セントラSE-R(1991年)
3代目日産セントラは、決して世間を騒がせたわけではない。倹約家のためのシンプルなエコノミーカーだった。しかし、その中でSE-Rは、140psの2.0L 4気筒エンジン(レッドライン7500rpm)を搭載した例外的なモデルであった。
リミテッド・スリップ・デフを装備するものの前輪駆動で、車重は1136kgを切っている。スタイリングの違いは、エアベント付きのフロントバンパー、リアスポイラー、アルミホイールなど。素人目にはノーマルとの区別はほとんどつかないだろう。
プリムス・サンダンス・ダスター(1992年)
レーシングストライプやボンネットスクープがよく似合う初代プリムス・ダスターは、「羊の皮をかぶった狼」のレッテルを貼るにはふさわしくない。プリムスは1979年、1985年、1992年にダスターの名前をパッケージ名として使用しており、今回取り上げるのはそのサンダンス・ダスターである。
サンダンスは、誰が見ても平凡なエコノミーカーだったが、これに141psの3.0L V6を搭載。サンダンスと双璧をなすシェルビー・ダッジCSXと同程度の出力だが、注目を集めるような外観上のアドオンは施されていない。
サンダンス・ダスターはこの6気筒エンジンにより、エコノミーカーとしては立派な0-97km/h加速8.3秒をマークした。
シボレー・インパラSS(1994年)
シボレーは長年にわたり、あまり速くないクルマに「SS」の名称を付けてきたため、1994年にインパラにこの名が与えられたときも愛好家たちは懐疑的だった。覆面パトカーのような外観だが、260psの5.7L V8エンジンを搭載し、0-97km加速は7.0秒だった。
これだけでは大したことないと思われるかもしれないが、トラックのように頑丈なボディ・オン・フレーム構造を採用し、1818kgを超える重量があったことを覚えておいてほしい。
米国のチューニングメーカーであるキャロウェイは、400psを発揮するコルベットのV8をインパラSSに搭載し、シャシー改良を加えた独自のバージョンを発売。このパワーアップにより、0-97km/h加速はE34型BMW M5と同程度の5.9秒となった。シボレーは1994年から1996年にかけて、7万台近いインパラSSを生産している。
ビュイック・リーガルGS(1997年)
ビュイックは1997年、4代目リーガルにGSを投入し、エンスージアストをショールームに呼び込む試みを本格化させた。「スーパーチャージャー付きファミリーカー」と宣伝されたこのモデルは、3.8L V6スーパーチャージャーを搭載し、前輪に240psを送り込む。
お爺さんが乗りそうな見た目のセダンでありながら、0-97km/h加速タイム6.9秒、0-400m加速14.9秒という入れ歯が吹っ飛びそうなパフォーマンスを秘めているのだ。
マーキュリー・マローダー(2003年)
3代目マーキュリー・マローダーは、ボディ・オン・フレーム構造のグランドマーキーをベースにしており、それだけで性能を不安視させた。引退した戦車のような米国セダンは、どうすればマニアにアピールできるのだろうか。それは、引き締まったサスペンションと、フォード・マスタングから流用された302psのV8を搭載することだった。
マーキュリーはバンパーのデザインを変更し、ライトの色を変え、18インチホイールを装着して、控えめながら目的意識の高い外観を実現した。2003年から2004年の間に1万1052台販売された。
ジープ・グランドチェロキー・トラックホーク(2018年)
ごついグランドチェロキーはジープファミリーの一員なので、通常はオンロード性能とは無縁の存在だ。しかし、トラックホークをオフロードに持ち出したくはない。ダッジ・チャレンジャー・ヘルキャットにも搭載されているスーパーチャージャー付きの6.2LヘミV8エンジンを搭載しているのだから、ドラッグレースがお似合いだろう。
最高出力706psで4輪を駆動するが、トラックホークと標準モデルの外観上の違いはわずかで、路上で不要な注意を引くことはない。しかし、排気音は別物だ……ごまかしようがない。
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