松本潤主演で高視聴率をマークした大人気ドラマの映画版『99.9-刑事専門弁護士- THE MOVIE』(公開中)。個性豊かな弁護士たちが、99.9%逆転不可能と言われる刑事事件で、残りの0.1%の可能性に挑んでいく新感覚のリーガルエンタテインメントだ。疑問に思えばとことん追求する型破りな弁護士の“深山”に松本が扮し、深山の上司である敏腕弁護士を香川照之、SPドラマ&映画版からの参戦となる三代目ヒロインの新米弁護士を杉咲花が演じている。

【写真を見る】『リンカーン弁護士』で弁護士ミックを演じるマシュー・マコノヒ―もひと癖あるが憎めない弁護士だった

これまでも、この深山のように、ちょっと変わり者だが腕は抜群な弁護士たちが大活躍してきた。そこで今回はユニークな弁護士が登場する作品を『99.9-刑事専門弁護士- THE MOVIE』含めて6本紹介しよう。

■女囚弁護が得意な弁護士が虚実交えてマスコミを扇動/『シカゴ

レニー・ゼルウィガーとキャサリン・ゼタ=ジョーンズが共演し、ブロードウェイの大ヒットミュージカルを映画化した『シカゴ』(02)。1920年代シカゴ。キャバレーの専属歌手であるヴェルマ(ゼタ=ジョーンズ)は浮気をした夫&妹の2人を殺害する。そしてスターになることを夢見るロキシー(ゼルウィガー)もまた、音楽業界にコネがあると嘘をついて体の関係を持ったフレッドを射殺して刑務所に入ることに。その2人の弁護を引き受けたのが、リチャード・ギアが扮する弁護士ビリーフリンだ。女囚の弁護を得意とするビリーは、殺人や妊娠など2人の境遇について虚実を交えてマスコミへと伝え、世論を扇動することでまんまと勝利へと導いていく。その計算高さや変わり身の早さを嫌味なく魅力的に仕上げたのは、ギアの演技力とフェロモンの成せる業といえるかもしれない。

■スゴ腕弁護士の事務所は高級車リンカーンの後部座席!/『リンカーン弁護士』

ハードボイルド作家マイクル・コナリーの人気シリーズ小説を映画化した『リンカーン弁護士』(11)。高級車であるリンカーンの後部座席を事務所代わりにして活動するスゴ腕の弁護士ミックが、策略にハマり、かつてない危機に直面することになるスタイリッシュでスリリングなサスペンスだ。独特の美学を持つちょいワルなミックをマシュー・マコノヒーがニヒルに演じた。刑事事件を専門に取り扱うミックは、資産家の御曹司であるルイス(ライアンフィリップ)が起こした婦女暴行容疑の弁護を担当することに。しかしミックはルイスの“不都合な真実”を突き止めたことで、一転、命の危険にさらされる。

■犯罪弁護士になるまでの前日譚を描く大人気ドラマのスピンオフ/「ベター・コール・ソール

一方、テレビドラマでもユニークな弁護士が。全世界を熱狂させた伝説的ドラマシリーズ「ブレイキング・バッド」(08~13)。その大人気ドラマシリーズに登場する弁護士ソウル・グッドマンを主演に据えてつむいだドラマが「ベター・コール・ソール」シリーズだ。「ブレイキング・バッド」では確かな法律の知識とペテンまがいの饒舌で相手を煙に巻くソウルが、大手弁護士事務所からの独立や弁護士資格のはく奪、そして改名からの起死回生を経て、犯罪弁護士になるまでを描く。「ブレイキング・バッド」の前日譚となる本作は、もはやスピンオフの域を超えたと評判も上々で、すでにシーズン5まで放送。2022年にはシーズン6がスタートする予定になっている。

■嘘と詭弁が封印された弁護士が四苦八苦/『ライアーライアー』

コメディ大国であるアメリカで絶大な人気を誇るジム・キャリーが、“嘘がつけない”弁護士フレッチャー・リードに扮した『ライアーライアー』(97)。どんなに難しい裁判でも嘘八百で勝訴してきた一流の弁護士であるフレッチャー。私生活も嘘で塗り固めてきた彼は、美人上司との逢瀬にかまけて離れて暮らす息子マックスの誕生日を忘れてしまう。悲しんだマックスは「1日だけでもいいからパパが嘘をつきませんように」と願い、ある朝フレッチャーは嘘がつけない体に。勝たねばならない大事な裁判を前に、唯一の武器を封印されたフレッチャーが四苦八苦する姿が笑いと共に描かれる。キャリーお得意の顔芸が炸裂するファンタジック・コメディだ。

■有能だがコミュニケーションに難アリの弁護士が迷走/『ローマンという名の男 信念の行方』

ローマンという名の男 信念の行方』(17)は、『ナイトクローラー』(14)のダン・ギルロイ監督が脚本も兼任した犯罪サスペンス。抜群の記憶力を持つ有能な人権弁護士のローマン・J・イズラエルが、友人と共同経営していた法律事務所を閉鎖したことをきっかけに迷走していく姿を描く。人とのコミュニケーションが苦手で、思ったことを何でもズケズケと言ってしまうローマンをデンゼル・ワシントンが熱演。アフロヘアにイヤホン、大きな体をユサユサさせながら街を闊歩するローマンの姿はチャーミングで笑いを誘う。ワシントンは18kg体重を増加させ本役に臨んだという。日本では残念ながら劇場公開されずビデオスルーとなったものの、ワシントン自身は第90回アカデミー賞で主演男優賞にノミネートされた。

■個性豊かな弁護士たちが15年前の凶悪事件に挑む!/『99.9-刑事専門弁護士- THE MOVIE』

そして事実を常に追い求め、不可能だと言われた刑事事件で無罪を勝ち取ってきた深山大翔(松本)が、過去の凶悪事件と対峙するのが『99.9-刑事専門弁護士- THE MOVIE』だ。

深山が所属するのは、新所長に就任した佐田篤弘(香川)が率いる斑目法律事務所の刑事事件専門ルーム。0.1%の事実をすくい上げるため多忙な日々を送る彼らのもとに、15年前に起きた“天華村毒物ワイン殺人事件”に関わる依頼が舞い込む。

天華村の青年の重盛守(道枝駿佑)の助けを借りた深山は、当時の現場再現ビデオを作成するなど入念な調査を実施。その過程で、謎の弁護士である南雲(西島秀俊)とその娘のエリ(蒔田彩珠)や、深山と深い因縁を持つ東京地方裁判所の所長の川上憲一郎(笑福亭鶴瓶)もこの事件に関わっていたことを知る。

類まれなき推理力と鋭い観察眼で、ちょっとした違和感も見逃さない深山。これほど頼もしい弁護人はいないが、“深山の常識は他にとっての非常識、他にとっての常識は深山にとっての非常識”と称される一風変わったキャラクターだ。ダジャレ好きで事あるごとに投下してくるが、自分のダジャレのクオリティには甘い反面、他人には辛口の点数をつけたりすることも。さらに集中する時には飴を舐めたり、気になることや考え事があると耳に触ったりするクセがある。実はこのクセは松本が役づくりで自ら考え出したものだという。

この他にも、デキるエリート弁護士なのに深山に振り回されてばかりの佐田や「ロボット弁護士B」という漫画にドハマりするお嬢様で新米弁護士の河野穂乃果(杉咲)など、斑目法律事務所の弁護士たちは超個性派ぞろい。そのコミカルな立ち居振る舞いが作品に絶妙な緩急をもたらしているので、シリーズ史上最難関の事件によって追い込まれていく深山たちの奮闘とともに楽しんでほしい。

文/足立美由紀

『99.9-刑事専門弁護士- THE MOVIE』は12月30日より公開中/[c]2021『99.9-THE MOVIE』製作委員会