NHK連続テレビ小説あさが来た』と大河ドラマ『青天を衝け』でともに五代友厚を演じるなど、俳優として活動中のディーン・フジオカだが、ミュージシャンやモデルなど、マルチな才能を発揮中でもある。そもそも日本映画では初主演となった『I am ICHIHASHI 逮捕されるまで』(2013)から監督と主題歌を兼ねていた。そんなディーンが、主演最新作のバイオレンスアクション『Pure Japanese』で企画・プロデュースに挑戦。外から見た日本のイメージを聞くとともに、ディーン自身の資質にも迫った。

【写真】かっこいい! ディーン・フジオカ、インタビュー撮り下ろしカット

現代社会における日本人の定義って?

 “逆輸入俳優”なる言葉を流行らせ、海外でも活躍し、マルチリンガルとして知られるディーン。企画・プロデュース&主演を務めた本作は「現代社会における日本人の定義ってなんなのかなというところからスタートした」と話す。そして「日本文化の特性をにじませ、炙り出すのに一番シンプルだと感じたのが暴力というテーマだったんです」と明かす。

 ディーン演じる、トラウマを抱えるアクション俳優の立石が、ひとりの女子高校生(蒔田彩珠)を救ったことをきっかけに、封印していた暴力性を覚醒させていく。その覚醒を後押しするのが、「P(ure)J(apanese)キット」なる日本人の純度を図る代物だ。

 「あれはおもちゃですよ」とディーンが語る通り、パーティグッズのひとつにすぎないのだが、立石は“日本人度100%”と判定されて刺激を受ける。「それによって狂わされる人たちを描けたら面白いと持ったんです。PJキットは人によっては金儲けの道具であり、人によっては自分の持っていなかったアイデンティティの後ろ盾になる。ただの遊びなんだけれど、その数値で一喜一憂したり、運命が変わっていってしまうんです」と解説する。

◆日本人は時間に対しての概念がルーズ

 本作の制作にあたり「日本人とは」とさまざまな角度からアプローチを試みたディーン。海外を知る彼自身に「日本」はどう映っているのだろうか。

 「10年前くらいから日本で少しずつ仕事をするようになり、5年前ぐらいからプロジェクトに合わせて日本に来て、ウィークリーマンションやホテルに住むようになっていきました。そのころ抱いていたイメージですが、日本人は“時間に対しての概念がすごくルーズ”ですね」との答えが返ってきた。

 一瞬、意外に感じてしまうが、「何かをスタートすることに対してはすごい執念を持つのに、終わらせることにはグダグダなんです」との指摘には頷(うなず)くしかない。残業ばかりで土日もスマホで仕事に縛られる日本人には耳が痛い。日本人は生真面目で勤勉で時間にきっちりというのは、自己評価に過ぎないのかもしれない。

◆ジャンルレスな活躍…どう見られるかはあまり気にしてない

 そんなディーンには、ファンが選ぶ「ミステリアスな役が似合う俳優ランキング」(「TVマガ」より)で綾野剛松田龍平を抑えて1位に輝くなど、自らが放つオーラを含めミステリアスな印象が強い。

 この結果を本人にぶつけてみると、「そうですか。おもしろいですね」と多少の興味を示しつつ、「でもヤクザ役が似合うランキング1位とか、忍者役1位とか、流鏑馬が似合う1位とか、なんでもうれしいですよ」と続けながら、「正直、どう見られるかはあまり気にしてないんです」と本音を漏らした。

 「たとえばオーストラリアに行ったときに、過去の作品を観てくれていた人に台湾人だと思われていましたし、日本で先輩ミュージシャンの方に“自分たち”と含めていただいたり、今日のように企画・プロデュースとして取材を受けることもあります。ほかにもCOACHのアンバサダーだと思う人もいれば、五代さんだと思っている人もいるだろうし、人によって僕の接地面が違うんです」。ジャンルレスな活躍を続けているディーン。役柄だけでなく、これだけ人によって抱く像が違う人も多くはないだろう。

ディーンの自己評価は「常に危機管理をしているタイプ」

 ちなみにディーン自身は自らの資質を「常に危機管理をしているタイプ」と断言。そうなる理由があったのか聞くと、「学生時代に、自分が勉強している学校の教室の前で教授が射殺されてしまい、keep outの黄色い線の横を通りながら教室に入ったり」と想像を軽く超える体験がさらりと出てきた。

 さらに「人の命は儚(はかな)いこと、民族が滅亡することや一言語、国自体が消えることだってあることを知っている」からこその「危機管理能力」の獲得だという。日本に留まっていては体験できないことを経験してきているディーン。そんなディーンが、日本国内にこそもっと知らしめたいと感じているのが「日本のアクション俳優のすごさ」だ。

 「日本のアクションはめちゃくちゃすごいのに、なぜアクション作品が少ないんだろうとずっと疑問だったんです。日本人のアクションコレオグラファーやスタントマンは世界中で重宝されています。そうした人たちを僕も日本の外で見てきました。でも日本では生かされていない。だから、アクションスタントの人に光が当たる作品を作りたいと思ったんです」と本作の立石を生み出したワケに触れた。

 「フィルムメーカーとしてもっともっといいものを作りたい」というディーン。そのために「プロジェクトのゼロから1を作れるように」と企画を書きまくっているそう。そこで形になった第1弾が『Pure Japanese』。つまり第2弾、第3弾、それ以上が、ディーンの頭の中では進行中なのだ。八面六臂の活躍を続けるディーン。その勢いはまだまだ加速しそうだ。(取材・文:望月ふみ 写真:松林満美)

 映画『Pure Japanese』は、1月28日より公開。

ディーン・フジオカ  クランクイン! 写真:松林満美