カラパイアの元の記事はこちらからご覧ください

 一口にプラスチックと言っても、いろいろなもので構成されている。用途に応じて様々な色素や繊維といった化合物・添加物が使われているため見分けるのが難しい。プラスチックのリサイクルが難航しているのもこのためだ。

 だが、そんなプラスチックごみの識別に革命が起きようとしている。デンマークの研究グループは、プラスチックの化学組成を検出して、種類ごとに分別するAI(人工知能)カメラ技術が開発した。

 12種類のプラスチックを識別することができるそうで、リサイクル率の飛躍的向上が期待できるという。今年の春から企業が実際に運用予定だ。

【画像】 AIを搭載した赤外線カメラで12種のプラスチックを識別

 デンマーク、オーフス大学の研究グループが開発したAIカメラ技術は、12種類のプラスチックを識別することができる。

 「赤外線領域ハイパースペクトル・カメラ」と「機械学習」をベースにしたもので、赤外線でプラスチックの化学組成を分析するだけでなく、微妙な構造の違いすら見分ける力がある。

 識別可能なプラスチックは、PE、PET、PVCといった家庭から排出されるプラスチックの大半を占めているものだ。そのため、プラスチックごみのリサイクル率の大幅な向上が期待される。

iStock-991390276

・合わせて読みたい→ロブスターの殻を利用して作られた、生分解性のバイオプラスチックが開発される(英研究)

photo by iStock

従来のプラスチック分別の難点を克服

 現在、プラスチックを分別する主流な方法は、近赤外線検査か密度試験(水に浮くかどうか)だ。

 これらの方法は、特定のプラスチック(たとえばPE、PP、PETなど)には有効だが、化学組成まで正確に見分けられるわけではない。

 プラスチックをリサイクルするには、ポリマーの純度が96%以上でなければならない。つまりプラスチックごみのリサイクル率を向上するには、純粋に化学組成に基づいた分別が必要になるという。

 今回の赤外線AIカメラは、まさにその点が大きく進化しているのだ。

vi<br>vianne-lemay-drMdwoydMVI-unsplash

Photo by Vivianne Lemay on Unsplash

2022年春から運用開始予定

 すでに十分な試験が行われており、2022年春からはPLASTIX社とDansk Affaldsminimering Aps社によって、実際に運用が開始される予定であるという。

大学と共同開発したこの技術は、プラスチックのリサイクルにおける飛躍的な進歩にほかなりません。

この技術を導入し、廃プラスチックの100%利用へ向けた長い道のりを本格的にスタートさせるのが楽しみです。(PLASTIX社 ハンスアクセルクリステンセンCEO)

 また研究グループのモーゲンス・ヒンジ准教授によると、近いうちにポリマーの種類や添加物の識別能力はさらに向上するだろうという。

 「この新技術によって、私たちは大きな一歩を踏み出しました」と、リサイクルにおけるその意義を語っている。

 この研究は『Vibrational Spectroscopy』(2021年12月5日付)に掲載された。

References:Plastic waste breakthrough: ML can now distinguish 12 types of plastic / written by hiroching / edited by parumo

 
画像・動画、SNSが見られない場合はこちら

プラスチックごみのリサイクルに革命。AIカメラを使用して12種類の識別が可能に