食事のとり方ひとつで仕事ができるかどうかが判断できるのかもしれない。2021年11月、「はてな匿名ダイアリー」にて「一生牛丼マン」という不思議タイトルの投稿がされた。

牛皿定食
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 投稿者は、とある年収3億円のIT企業の社長K氏に取材。そこで「牛丼は約400円で食べられる」「700円あれば美味しい定食屋で食べられる」「自炊で700円あれば豪華な食事が作れる」という理由から、「牛丼屋で680円ぐらいのメニューを食べるような人は、だいたい出世できないんです」「うちの会社ではこういう奴のことを 『一生牛丼マン』と言って馬鹿にして、朝礼などでこの話をしています」と話したことが印象的だったと記している。

コメント欄には賛否両論が

 投稿者はモヤモヤ感を抱いたものの、K氏の会社の社員100人にアンケートを取ると「一生牛丼マンはイマイチな人が多い」と回答する人が多く、Kの考えは賛同を得ているようだ。

 また、K氏の持論に対して、コメント欄は「たった680円で贅沢気分を味わえるんだから、めっちゃコスパいいじゃん」と批判的な声もあれば、「確かにファミレスの1番高いメニューとか頼む奴バカっぽい」と納得する声も散見された。実際に一生牛丼マンは仕事ができないのか。

『なぜ、一流の人のデスクはキレイなのか? 片づけが9割』(総合法令出版)の著者で業務効率化コンサルタントの清水申彦氏に話を聞いた。

むしろ一生牛丼マンは仕事ができる?

忙しい会社員

 まず清水氏は「牛丼屋にいつ訪れるかは不明ですが、ランチとして訪れることを想定して話します」という。続けて、「『牛丼屋で680円ぐらいのメニューを頼む人は出世しない』というK氏の意見には同意しかねます」と首をかしげる

牛丼チェーン店で680円のメニューを注文しているからといって“仕事ができない”ということはないと思います。私の場合、ランチに出るのは週に2日ぐらいですが、できれば『あまり時間をかけたくない』というのが本音です。

 ですので、外に出る時に自分に課しているのが移動は2ブロック以内ということ。そうなると行く店は限られますが、都内だと5つぐらいの選択肢はあります。その中にも牛丼屋は入っています。その限られた選択肢なら、牛丼店に入り、680円の定食を頼むという選択肢もありだと思います」とキッパリ。

ランチにかける時間を仕事に使えば…

 さらに「むしろ、3ブロック、4ブロック先まで“おいしいランチ”を食べに行くことは、無駄な時間と思います。“一生牛丼マン”と呼ばれる人の中には、少しでも仕事を早く、そしてスムースに進めたいと考えている人がいると思います」と“一生牛丼マン=仕事ができない”と言い切ることは難しいと語った

 次に一生牛丼マンの特徴について聞くと、「『判断したくない』という人は、一生牛丼マンの中に一定数存在するでしょう。日ごろさまざまな選択を迫られているリーダーなど、『なにも決めたくない!』という人もいるはずです。選択や判断をこれ以上増やしたくない人は、ランチぐらい決めたくないと思い、牛丼店で定食を頼むのかもしれません」と口にする。

「厳密な特徴を分析すると、一生牛丼マンの属性は『ランチよりも仕事が好き』なのではないでしょうか。牛丼チェーン店において、客の滞在時間は10~15分。先ほどの2ブロック内ですませるなら、30分ほどでデスクに戻れます。

 月に20営業日あるとして、1日に30分を確保できると、月10時間分仕事に取り組める計算です。その分、ビジネス上の判断が速くできることをメリットにできる立場の人ではないでしょうか」

強いこだわりはハードルになる

すき家 牛丼

 また、「考えもなしに牛丼チェーンを選んでいる人は除外します」としつつ、「食事のバリエーションは乏しいかもしれませんが、ランチについて考える時間を仕事に振り分けられるので、仕事が好きで集中力がある特徴を備えていると思います」とK氏の持論を真っ向から受け止めた。

 そして、一生牛丼マンが向いている職業として「サラリーマンならリーダーとして責任ある立場の人、『判断』を迫られるということで、タクシー、運輸、配達などの運転手、分析をするアナリスト、自分の裁量での仕事が多い人などが挙げられます」と語った。

 一方、K氏が主張する「400円の牛丼を食べる」「700円払って美味しい定食屋に行く」といった行動をとる人は仕事ができるのだろうか。

“誰も決めてもいないルール”は無意味

 清水氏は「ランチの値段やクオリティにこだわる人が仕事を上手くできるかはわかりません。ただ、『こうでなくてはいけない』というこだわりは仕事を進める上で障害になると思うので、むしろ仕事はできないと思います」と予想。

私は新しいプロジェクトを進めるにあたり、『前回はこうだった』『前任者の時はこうだった』という考えを持ちません。同じ仕事をする仲間にも持たせません。進む道はできるだけ一本道で、平たんであることが最短で最大の結果を導いてくれると考えています。

 ランチメニューの選択に、『せねばならない』という考えはそもそも不要だと思います。1時間かけて食べて、午後からのハードワークのため英気を養うこともあります。30分で終わらせて仕事の続きをすることもあります。

“誰も決めてもいないルール”に縛られることほど無意味なことはないでしょう。朝に買っておいたサンドイッチをパクつきながら、メールの返信する人、仕事を少しでも進めようとする人もいます。彼らにとってランチのために外に出ることは時間の浪費かもしれません。とはいえ、自分の考える仕事の進め方、もしくはその日の忙しさに応じたランチの取り方がベストです」

個人経営店は思考訓練にもってこい

定食屋

 デキるビジネスパーソンを目指すためにランチのとり方を掘り下げたい。チェーン店と個人経営の店では、どちらに足を運ぶほうがイケているのか聞くと「チェーン店はマニュアル的対応でしょうから、行くなら個人経営の店でしょう」と回答。

「私の場合、片づけの視点から見るようにしています。テーブルの上に調味料はいくつあるのか。メニューの数と稼働人数。そうすると夜の回転率まで考える思考訓練にはもってこいの場所です

 一方、チェーン店は大体どこも利益率は決まっているので、むしろ立地に注目します。このロケーションに出店しても赤字なのに、どうして出し続けるのかを考えるようにしています」

K氏は決して悪いリーダーではない

なぜ、一流の人のデスクはキレイなのか? 片づけが9割
『なぜ、一流の人のデスクはキレイなのか? 片づけが9割』(総合法令出版)
 さらに、食事に対する適切なお金の使い方として、「ビジネスのオフのイベントとしては、食事は日に3度必ずあるイベントです。特に昼食は、ビジネスアワーに位置するもの。そこから考えると、あまり時間やエネルギーを投入するのはビジネスにとってよくないでしょう。ですので、ランチに関して、仕事のできる人はあまり費用を投入しないと思います」と持論を展開した。

 最後に会社の朝礼にて「牛丼屋で680円ぐらいのメニューを食べる人は出世できない」という話をするK氏はリーダーとしてどうなのか。

 清水氏は「普通なら良いリーダーではないと思います」と前置きするも、「あえて一生牛丼マンの話を朝礼でするのは社内の意思統一の意味があるのだと思いました」と一定の評価をする。

「成果をより早く、大きく上げるには社員のベクトルを統一する必要があるでしょう。自分の考え、価値観を見せて、社員にもベクトルを合わせてもらうことで、会社を大きく前に進める力が得られると考えてのことだと思います。社員100人へのアンケートは、ベクトルがまとまっており、決して批判されるような人ではないのではないでしょうか

 一生牛丼マンの良し悪しとは別にして、一生牛丼マンについて考えることは、ビジネスパーソンとして成長するキッカケにつながる。これを機に、自分に合ったランチのとり方を模索しても良いのかもしれない。

<取材・文/望月悠木>

【望月悠木】

フリーライター。主に政治経済社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている Twitter:@mochizukiyuuki

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