「同じ敗退組なのにこうも明暗が分かれるとは」そんな風に私が愕然としていたのは金曜日、午前中にバラハス空港から、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に着いたアトレティコの選手たちの映像をお昼のニュースで見た時のことでした。いえ、マドリッドでは明け方に気温が急激に下がったせいで、選手たちが屋外駐車場止めておいた車のフロントガラスが霜で真っ白に。各自、自分の手でコシコシ払ってからでないと、運転できなかったなんていうのは別にいいんですけどね。

何というか、1日早く、水曜のスペインスーパーカップ準決勝で宿命のライバルに負けたバルサについては、17才のガビを筆頭に、67日ぶりの出場でゴールを挙げた19才のアンス・ファティ、負傷とコロナ感染の逆境ダブルから回復した19才のペドリ、尚且つ、チーム練習を1回もせずに先発デビューした21才のフェラン・トーレス(マンチェスター・シティから移籍)、先週金曜に手の手術をしたばかりながら、保護カバーをして120分の激闘を戦い抜いた22才のアラウホと、何人もの若手がこのスーパーカップクラシコ(伝統の一戦、レアル・マドリー戦のこと)で善戦。おかげで世間から、チャビ監督のチームの未来は明るい的な評価をされることに。

実際のところ、リーガでは首位のマドリーと勝ち点差17でCL出場圏外の6位、サウジアラビアから帰国後の初戦、来週木曜のコパ・デル・レイ16強対決の相手も昨季のスペインスーパーカップ決勝でトロフィーをさらわれたアスレティックですし、2月にあるEL16強対決のプレーオフではナポリと対戦。そうそう楽観的になれるとも思えないんですけどね。ええ、同じティーンエイジャーで、もう1つの準決勝でアスレティックに勝利をもたらしたニコ・ウィリアムスが、マルセリーノ監督に「Tiene 19 años y no hay que añadirle presión. Vamos a ir paso a paso/ティエネ・ディエシヌエベ・アーニョス・イ・ノー・アイ・ケ・アニャディルレ・プレシオン。バモス・ア・イル・ア・パソ・ア・パソ(19才だから、プレッシャーを増やしちゃいけない。一歩一歩、やっていくつもりだ)」と気遣われているのを見れば、何をか言わんやですって。

世が世なら、天下のバルサの屋台骨を若い子ばかりに背負わせる訳にもいかないはずですが、何せ、アトレティコなど、移籍金1憶2700万ユーロ(約170億円)で3年前に獲得した若手ギャラクティコ、22才のジョアンフェリックスがまたしても期待に応えられませんでしたからね。今季もう、何度繰り返したかわからないチーム全員のミスも一向に直らないとあって、昨年12月の4連敗の後、年明けの2連勝で一時、収まっていたシメオネ監督批判も再燃してきたんですが、はあ。こちらもお隣さんとは勝ち点差16のリーガ4位、来週水曜のコパ16強対決は去年4月、アスレティックを破って、2019-20シーズンのコパ王者となったレアル・ソシエダとですし、CL16強対決の相手もマンチェスター・ユナイテッドとあって、何だかお先真っ暗な気がしてきたんですが…いや、今は嘆いてないで、スペインスーパーカップ準決勝の2試合がどうだったか、お伝えしていかないと。

まずは水曜、リヤドのキング・ファハドスタジアムで昨季リーガ2位のマドリーとコパ優勝のバルサが激突、今季2度目のクラシコとなったんですが、先手を取ったのはアンチェロッティ監督のチームの方。ええ、相手が「Hemos jugado con muchos complejos durante 20 o 25 minutos/エモス・フガードー・コン・ムーチョコンプレホス・ドゥランテ・ベインテ・オ・ベインテシンコ・ミヌートス(ウチは20か25分間ぐらい、コンプレックスを沢山抱えてプレーしていた)」(チャビ監督)という前半25分には、センターでベンゼマブスケツからボールを奪い、最後はフラメンゴから移籍して4年目、21才の今季、いよいよ開花したビニシウスがアラウホを振り切ってシュート。これが見事に先制点となったため、やはり戦前の予想通り、リーガでの差が如実に反映する展開になるのかと思いきや…。

まあ、確かに41分、デンベレのシュートをゴール前でミリトンがクリアしようとして、ルーク・デ・ヨングにボールが当たり、同点ゴールになってしまったのは運が悪かったんですけどね。バルサフランキー・デ・ヨングと10月のネーションズリーグファイナルフォーのスペイン代表で負傷して以来、プレーしていなかったフェランをペドリとアブデ(20才)に代えた後半27分には再びマドリーが得点。これも一旦はベンゼマが弾かれて、カルバハルが撃ち直したボールもGKテア・シュテーゲンの足で逸らされてしまったものの、そのボールがベンゼマの前に。もちろん、リーガピチチ(得点王)がこんなチャンスを逃す訳はなく、またしてもマドリーがリードを奪ったとなれば、もう勝負はあった?

でもそうは問屋が卸さなかったんですよ。というのもやはり、年少の選手の中でも2020年からスペイン!代表に招集され、メッシ(現PSG)の背番号10を受け継いだアンス・ファティは才能が飛び抜けているんでしょうかね。負傷を繰り返している今季は8試合しか出場していないにも関わらず、4ゴールを挙げているんですが、この日も後半21分にピッチに入ると、38分にはジョルディ・アルバのクロスをヘッド。易々とGKクルトワを破ってしまったから、ビックリしたの何のって。これでスコアは2-2となり、試合は延長戦に入ることに。

でも大丈夫。この日も途中から、「Apretar arriba nos cuesta más/アプレタル・アリバ・ノス・クエスタ・マス(ウチは高い位置でプレスをかけるのに苦労する)」(アンチェロッティ監督)という理由により、自陣で敵を待ち受ける戦法に切り替えたマドリーの必殺カウンターが、延長戦前半8分にとうとう爆発したんですよ。いやもう、モウリーニョ監督下のBBC(ベンゼマベイルクリスアーノロナウド頭文字)時代から、足の速い選手が多いチームは羨ましいと思っていたんですが、この時も5人程、ドドッと白のユニフォームバルサのゴールに突進する中、敵はたったの3人。右からロドリゴが送ったラストパスを後ろにベンゼマの気配を感じ取ったビニシウスはスルーしたんですが、まさかモドリッチと交代で入っていた、やはり健脚のバルベルデが先んじてシュートしてしまうとは!

この3点目のゴールで、いえ、2-3で負けたチャビ監督は試合後も「Hemos dominado al Madrid, que se ha metido atrás/エモス・ドミナードー・アル・マドリッド・ケ・セ・ア・メティードー・アトラス(ウチがマドリーを支配していたから、彼らは自陣に引きこもっていた)」と言っていましたけどね。アンチェロッティ監督は「Partido igualado/パルティードー・イグアラードー(拮抗した試合)」と反論。「El bloque bajo no es muy estético/エル・ブロケ・バホ・ノー・エス・ムイ・エスティコ(低い位置でプレーするのはあまり美的ではない)が、ウチの前線にある質の高さを楽しまないのはもったいなさすぎる」そうですが、まあ昔から、世界最高のクラブと自称する彼らがボールポゼッションを捨てて、カウンター戦法を取ると、あれこれ世間がうるさいですからね。

その辺はアンチェロッティ監督も気が引けているのかもしれませんが、合わせて38得点14アシストという、ベンゼマとビニシウスのコンビの豊作を見れば、誰も文句はつけられないかと。そこで翌木曜は、スペインスーパーカップ決勝ではスーパークラシコに続いて、スーパーダービーを見ることになるのかと、私も気を引き締めて、近所のバル(スペイン喫茶店兼バー)に連日出勤したんですが、とんでもない。前日はコロナ感染予防のため、キャパ50%までの観客制限ギリギリの4万人を集めたスタジアムに6000人しか入らなかったのにもめげず、キックオフ直後、アトレティコはレマルからパスを受けたジョアンがアスレティックのエリアに切り込んでシュート。電光石火の先制点と喜んだのも束の間、あっさりオフサイドでノーゴールとなった時から、今になって思えば、ケチがついていたんでしょうか。

そこから15分程は攻めていたアトレティコもいつしか尻つぼみとなり、0-0のままだった後半開始時には臀部の負傷を三度、再発させたマルコス・ジョレンテがロディに交代。更に5分にはコンドグビアもどこかを痛め、デ・パウルに代わることになり、こうなるとスコアレスでの延長戦も覚悟しないといけないと、私も2杯目のカーニャ(グラスビール)をいつ頼むか、思案していたんですけどね。それでも17分にはレマルの蹴ったCKをジョアンがヘッド、ゴールポストに弾かれたボールがGKウナイ・シモンの背中に当たってオウンゴールになってくれたため、ちょっとは気が楽になったんですが、何せ今季のアトレティコはよく逆転されていましたからねえ。とても1点だけでは心もとないというのに、まさか、お家芸の「リードしたら一歩後退」をこの日も忠実に実行してくれるとは!

案の定、アスレティックの猛反撃に遭い、うーん、FKからのイニゴ・マルティネスのヘッドやウィリアムス兄の一撃はGKオブラクが必死にセーブしてくれたんですけどね。32分には苦手中の苦手、CKの守備がお約束のように破綻。ええ、ムニアインの上げたボールに合わせたジェライに潰されるばかりだったコケにそのヘッドを阻むことはできず、同点ゴールを決められてしまったから、さあ大変。おまけにその4分後にも再びCKを与え、今度はイニゴ・マルティネスのヘッドこそ、ダニ・ガルシアに当たって逸れたものの、エリア内に転がったボールをウィリアムス弟にフリーで撃ち込まれているって、もう一体、どうしたらいいのやら。

その後はジョアンルイス・スアレス、クーニャのFW3人で同点を目指したアトレティコですが、ゴールは生まれず、それどころか、ロスタイムにはヒメネスが空中キックでイニゴ・マルティネスの頭を直撃して、レッドカードで退場する始末。いやあ、1-2で敗退が決まった後、シメオネ監督も「El equipo no tiene fortaleza defensiva en el juego aéreo/エル・エキポ・ノー・ティエネ・フォルタレサ・デフェンシバ・エン・エル・フエゴ・アエレオ(チームは空中戦での守備力がない)」と認めていましたけどね。もうシーズンも半ば過ぎているというのに今更、「Hay que trabajar la concentración/アイ・ケ・トラバハール・ラ・コンセントラシオン(集中力を鍛えないといけない)」(コケ)なんていう言葉を聞くと、やっぱり彼らは全然、学んでいない?

いや実際、「Es fácil entrenarlo cuando no hay gente, el problema es cuando hay rival/エス・ファシル・エントレナールロ・クアンドー・ノー・アイ・ヘンテ、エル・プロブレマ・エス・クアンドー・アイ・リバル(人がいない時に練習するのは簡単だが、問題は敵がいる時)」とシメオネ監督も嘆いていたんですけどね。チームのリードを守ろうと孤軍奮闘したオブラクなど、もっと踏み込んで、「ゴールを入れた後、ウチは後ろに下がって待つけど、si esperamos a lo que va a pasar es que ocurren cosas como las de hoy/シー・エスペラモス・ア・ロ・ケ・バ・ア・パサール・エス・ケ・オクレン・コーサス・コモ・ラス・デ・オイ(何が起きるか待っていると、今日みたいなことが起きる)」と苦言を呈していましたが、とにかく彼らには暇になるこの週末に今一度、猛省を促したいところです。

一方、ロッカールームで決勝進出をまたしてもビジャリブレトランペット伴奏で祝ったアスレティックはスペインスーパーカップ2連覇のチャンスをゲットしたんですが、奇しくも彼らは12月中にリーガで2回、マドリーと対戦。マルセリーノ監督も「jugamos como nunca y perdimos como siempre/フガモス・コモ・ヌンカ・イ・ペルディモス・コモ・シエンプレ(今までないぐらいにいいプレーをしたが、いつものように負けてしまった)」と話していた通り、サンティアゴ・ベルナベウではベンゼマのゴールで1-0。年内最終戦だったサン・マメスでも7分までにベンゼマに2点を決められ、サンセットが1点返しただけで、1-2で涙を飲んでいるんですよ。

それも後者の日など、マドリーが大量5人もコロナ感染で選手がいなかったとなると、いくら延長戦だったとはいえ、休みが1日多い相手が有利なのは変わらないかと思いますが、金曜になって、カルバハルが検査で陽性になったのはちょっと注意が必要かと。ええ、月曜にリヤド入りした彼らは練習と試合以外、外出していないため、それでもうつったとなれば、チーム内クラスターである可能性もなきにしろあらず。加えて、バルサ戦をふくらはぎ痛で欠場したアラバも回復が難しいとなれば、今年もアスレティックが波乱を起こすかもしれません。

そして最後にマドリッドの弟分チームの予定も見ておくと、この週末は土曜にラージョがコパ16強対決ジローナ戦に挑むことに。しかも会場は昨季の昇格プレーオフ決勝2ndレグでまさにこの相手を下し、1部復帰を決めたモンテリビ。向こうの指揮官がこれまた、ラージョのレジェンドであるミチェル監督となれば、結構、見応えのある試合になりそうな。対照的に2回戦でコパ敗退しているヘタフェは来週木曜のリーガ21節グラナダ戦まで、ゆっくりしていられるんですが、この金曜には残留達成に大きく力を貸してくれそうな選手が2人、ローマからレンタル移籍で到着。マドリー出身のFWボルハ・マジョラルとエルチェ出身のMFゴンサロ・ビジャルなんですが、ネックはチェマがエイバル(2部)に行った後もまだ1つ登録選手枠が足らず、早く空きを作らないといけないことでしょうか。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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