1月17日は「おむすびの日」です。1995年阪神・淡路大震災の際、ボランティアによるおむすびの炊き出しが人々を大いに助けたことから、いつまでもこの善意を忘れないようにと2000年に制定されました。ところで、手軽に食べられるファストフードとして人気のおむすびですが、テークアウトやイートインできる小規模なおむすび専門店は見かけても、ハンバーガーや丼、うどんのように大規模なファストフード店は見かけません。

 日本の代表的なファストフードでニーズも高いと思われるのに、なぜ、おむすびのファストフード店は普及していないのでしょうか。飲食店コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

ニーズこそ高まっているが…

Q.駅ナカなどで、おむすび専門店を見かけることが最近増えたように思います。外食で、おむすびに対するニーズが高まっているのでしょうか。

成田さん「おむすびのニーズは高まっていると思います。最近では、華やかにトッピングされたおむすびや斬新な具材のおむすびも登場し、インスタ映えなど、SNSの写真で投稿することが多くなったことがブームの要因の一つと考えます。SNSの普及に伴い、おむすび専門店への注目も高まってきています。

また、おむすびヘルシーで健康志向の人や、具材を選べば、グルテンフリーやベジタリアンビーガンの人も楽しんで食べることができるので注目されています」

Q.おむすびの場合、ハンバーガーなどの大規模なファストフード店は見かけません。なぜ、おむすびのファストフード店は普及していないのでしょうか。

成田さん「いくつかの要因がありますが、大きく2つの要因が影響しています。

そもそも、おむすびはコンビニの主力商品として定着しており、客にも『おむすびはコンビニで買うもの』という意識が根付いています。コンビニでは、おむすびを100円から150円程度で購入でき、物流も確立していて、品切れになる心配もほとんどありません。そうしたことから、おむすびを主力商品とした大規模なファストフード店を展開し、コンビニと競争するのはリスクが高いことが1つ目の要因です。

また、うどんのファストフード店では、メインのうどんを注文してから好きな天ぷらを皿に取りますが、そのとき、好きな具材の入ったおむすびも選ぶことができます。和食のお店でも、うどんやそばの定食のセットとして、おむすびが付いてくることがあります。おむすびサイドメニュー的な位置付けがあり、おむすび単体で販売し、集客することはハードルが高いと思われていることが2つ目の要因です」

Q.おむすび専門店は見かけますが、主にテークアウト専門です。なぜ、ファストフード店のように多くの人が店内飲食できる店にしないのでしょうか。

成田さん「先述したように、おむすびサイドメニュー的な位置付けが根強く、イートインにした場合、例えば、うどんや唐揚げなどの他のメニューが必要になってきます。また、イートインの場合、家賃なども高くなるため、その分、おむすびの価格に上乗せしなければなりません。そのため、価格と客数のバランスから、出店する場所が限られてしまうのが現状でしょう」

Q.お茶漬けの専門店も最近、増えてきています。おむすびよりもお茶漬けの方がファストフード店として適しているのでしょうか。

成田さん「お茶漬けの方がおむすびより、高単価の設定がしやすいので、イートインファストフード店としても適しているでしょう。また、たい茶漬けひつまぶしなど、料亭や専門店で出すお茶漬けも根付いており、おむすびと比べて、経営しやすいと考えます」

Q.おむすびは今後も、大規模なファストフード店として、全国に広がる可能性はないのでしょうか。

成田さん「先述したように、おむすびヘルシーで健康志向の人や、具材を選べば、グルテンフリーやベジタリアンビーガンの人も楽しんで食べられるので注目されています。欧米を中心に海外でも『日本食のおむすび』が注目されています。そして、今後は今以上に、さまざまな宗教や信条を持つ外国人労働者日本国内に増えていきます。

私の考えでは、AIやロボットの導入で人件費を大幅に削減するなど、幾つかの要件をクリアすれば、ハードルは高くても大規模なファストフード店として、全国に広がる可能性があります」

オトナンサー編集部

おむすびは人気なのに…