ビデオゲームに調整や追加コンテンツを加えるアップデートがすっかりお馴染みの存在となった昨今。だが、アップデート「うまくいかなかったゲームが良くなるまでゲーマーがちょっと待ってくれる免罪符としてつねに機能するわけではない。

 期待の最新作がバグだらけだったり、事前情報で伝えられていた方向性と違っていたり、各種の数値や強さが調整されていなかったり……。こういった初動に難のある新作をフルプライスで買った多くのゲーマーは、いくつかのデベロッパーに対して「最初からちゃんと面白くしろよ!」と声を荒げたいところだろう。

 しかし、そうした一方でノーマンズスカイのように、当初の評価を受け止めて延々と無料アップデートを続け、現在では良作として認められるタイトルもある。
 擁護するのではなく、そういう経緯を経たという意味で、筆者はいま、昨年にリリースされたものの発売からしばらく評価が芳しくなかったBack 4 Blood(以下、『B4B』)を、たまらなくプレイしてほしいのである。

 『B4B』はゾンビ的な存在「リドゥン」と戦いながらステージを進んでいく、最大4人でプレイ可能な協力プレイが主体のFPSだ。

 4人で戦うゾンビFPSといえばLeft 4 Dead思い出す人も多いかと思われるが、『B4B』はそのシリーズを手掛けたスタッフが多数在籍するTurtle Rock Studiosが開発した最新作なのである。

 というわけで発売前から多くのプレイヤーから期待が寄せられていた本作だが、後述するように「難度が高い」「高難度が理不尽」といった声が寄せられるようになった。さらに発売されてからしばらくして、いわゆる「稼ぎ」プレイの効率を悪くしたり、特定のプレイスタイルを狭めるようなアップデートが実施されたことにより、コミュニティから反発が寄せられ、Turtle Rock Studios自身もそれを認識している旨を伝えていた。

 しかし2021年12月17日に大規模アップデートが配信され、バランス調整や新要素が加えられた。生まれ変わった『B4B』を見て、多くのプレイヤー「なんで最初からこれをやらなかったんだ」と言いたくなっただろう。つまりそれまでの評価を覆すアップデートがなされたのだ。

 本稿では発売直後に「難しすぎて面白くない」というイメージを持ってしまった方も多いであろう『B4B』の現状のプレイフィールをお届けしたい。

文/久田晴
編集/ishigenn

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「難しすぎる」「理不尽」との声が集まったスタート

 まずそもそも『B4B』がなぜ最初にコミュニティから賛同を得られなかったのかといえば、とくに批判の対象となっていたのがゲームの難度」だ。本作には「ビギナー」、「ベテラン」、「ナイトメア」の3段階の難度が用意されているのだが、このうちナイトメアがあまりに理不尽とされ、ベテランビギナーでも難しいという声が、Steamレビューや複数の個人ブログなどで散見された。

 アップデート以前ではあまりの難しさから、極力戦闘を行わずステージを高速で駆け抜けるランスルー」スタイルプレイするユーザー多く、ゾンビの大群を相手に協力して互いにサポートしながら戦う、という基本的な楽しみ方がないがしろにされる場面も多かったと思われる。

 また、本作独自のシステムとしてステージを進めていくごとにカードを引き、それによってプレイヤーキャラクターの性能を向上していくカードシステムがある。しかし、そのカードをアンロックしていくためにはポイントを稼がなくてはならず、高難度への挑戦のハードルをさらに上げてしまっていた点も明記しておこう。

「緩和」「戦闘主体」が盛り込まれた大型アップデートによる変化

 では、実際に12月アップデートでは何が変化したのか。まず目を引くのはオフラインモードでの進捗がオンラインモードに引き継げる、という点だ。

 直接難易度の緩和に繋がるものではないが、難易度ビギナーならばソロプレイでのクリアもそう難しくないため、高難度用にカードを手に入れるための周回といったプレイングもできる。初心者にとっては、操作に慣れつつマップを把握し、敵の種類を学ぶためにビギナーでひと通りクリアし、ある程度のカードを集めてからオンラインへ参戦するという道筋が楽しめるようになっている。

カードを解放するには「物資ポイント」が必要となる。

 なおソロプレイNPCのAIの頭の出来を懸念するプレイヤーも多そうだが、ストレスを感じる場面も少なくはないがおおむね優秀であるといった印象だ。高難度では戦力として物足りなく感じられる、ちょうどよいバランスだと感じられるだろう。

 ときおりドアや壁に引っかかったり、大型の敵にあまり攻撃してくれなかったりといった不満点もあったが、完璧すぎるエイム力があるわけでもなく、フレンドリーファイアをしないのはうれしい。さらに道中に落ちているアイテムや、敵の特殊個体を自動で見つけてくれるので、ゲームに不慣れなうちはとても助かる

無敵ではないので適宜治療は必要。

 次に、カードごとのバランス調整。プレイヤーキャラクターを強化するアクティブカードについては、総じてステージ中を走り抜ける戦法に使われていたラン系カード弱体化し、戦闘や回復にまつわるカードが強化されている。

 アップデート後に筆者がプレイした限りでは、単独で走り抜けようとするプレイヤーに遭遇したことは一度もなかったランスルーをするプレイヤーと取り残されたほかのプレイヤーが分断されて地獄を見るのは『Left 4 Dead』から続くピンチフラグだ。おそらくゲーム本来の楽しみ方として設計されていたと思われる、「戦う」プレイスタイルが取りやすくなった、という意味で喜ぶべき調整ではないだろうか。

カードのアンロックカテゴリごとにラインが分かれているので、好みに合わせて取得していこう。

 また、ステージの難度を上げる「退廃カード弱体化の方向で調整された。こちらはゲーム中に自動で選択されるもので、おもにリドゥンを強化したり、環境に変化を与えるといった効果を持つ。

 アップデート前は、一部の退廃カードを引き当ててしまうと大幅に難しくなったり、非常にストレスフルな戦闘を強いられる場面もあったように感じる。2021年12月アップデート以後、視界不良の効果が軟化するとともに一部の登場する敵が変化し、過度の難化を食い止める方向での調整となっている。

退廃カードが増えていくと敵が強化され、不利な環境効果も増える。

 さらに新要素として「焼失カードが追加。使い捨てカードではあるが、本作のゲーム内通貨で、通常のカードをアンロックするのにも使う「物資ポイントさえあれば何度でも購入可能となっている。

 効果としてはあらかじめタッチメントが装着された装備を入手するもの体力や弾薬にボーナスを得るものなどが用意されており、好きなものを選んで効果を発動できるので利便性に優れる。クリアが難しい、状況が芳しくないと感じた際の選択肢として有効な存在だ。

 このほか、ステージ、エネミーに個別の調整が加えられたうえ、一部バグなども修正されたのが、2021年12月に行われた大型アップデートのおおよその内容となる。

「派手さはないが、確かに感じられる連携する楽しさ」がアップデートで格段にアップ

 ここからは上記のアップデート内容を踏まえたうえで、発売直後から変化した本作の手触りをいくつか挙げていこうと思う。

 まず根本として、協力プレイが好きな人向けのタイトルであることは間違いない。ソロモードビギナーで周回プレイできる猶予は広げられたが、それ以上の難度を仮にひとりでプレイしたとすれば、まずクリアは難しいだろう。助け、助けられを何度も繰り返しながら、息を合わせて進めていくのが楽しい作品である。

 そんな本作の攻略に求められるのは、場面に応じて“冷静に回答し合う”という名の協力プレイである。

プランタイミングをはかる意思疎通も肝心だ。

 ときにスピーディーにくぐり抜け、ときにはじっくりと構えて迫りくる敵を着実に減らしていく。その工程を正確に、チームで意思を統一してこなすことが求められる。

 そのシビアな雰囲気の中で激戦を潜りぬけていく緊張感は、たしかにクセになる。困難な状況を突破したあとの達成感、「良いチームだった」と言いたくなるあの感触は、まさに『B4B』で最初から味わいたかった至高の体験と言えるだろう。

セーフルームが見えたときの安心感と達成感は計り知れない。

 もちろんこれは『Left 4 Dead』でも言えることだが、本作はFPSという仕様上、自分の背後に迫る危険に気付きにくい。正面の敵に夢中になっているといつの間にやら数匹のリドゥンが背中に張り付いており、焦って撃ち尽くしてしまった銃を片手に大きなダメージを負う、という失敗は何度として起きる。

 背後からの脅威というのはシンプルながらも非常に厄介なもので、だからこそ後ろからは敵が出現しない位置に立てこもる、という戦術が『B4B』でも活躍する。

 しかし、つねに理想的な位置取りが可能なわけではない。そのため求められるのが、プレイヤーどうしの連携、カバーリングだ。誰かの背中を守り、その背中も誰かに守られている。そんなプレイングが可能なチームで遊んでいるときの『B4B』は、本当に楽しい。

言葉こそ交わさずとも、頼りになるチームメイトほどうれしい存在はいない。

 地味ながらも着実な連携を積み重ね、チームで意思を統一して迫る脅威に対処する。その際に重要なのがチーム内でのコミュニケーションだ。可能であればボイスチャットを活用するのが望ましいのは間違いない。

 ただ『Back 4 Blood』ではボイスチャットがなくても、いわゆる「ピン」を立てて注意を促したり、会話ホイールから弾薬を要請するといった、最低限のやり取りが可能だ。テキストチャットも用意されており、個人的な話にはなるが他言語のプレイヤーとたどたどしいコミュニケーションを取る感触もどこか懐かしく、楽しい思い出となった。

独特の成長システムとオーソドックスながら工夫のしがいもある武器システム

 PvEのゲームではポピュラー「成長」という要素が、本作では「アクティブカード」という形で表現されている。調整の項目でも触れた点だが、アクティブカード15枚によって構築されたデッキを装備し、ゲーム中の特定のタイミングドロー、発動することでカードごとの効果を得られる仕様だ。

 カードというと、どこかランダム性を擁したイメージもつきまとうが、本作はデッキに登録した上から順番に引くことができるので、印象としてはシンプルキャラクターの成長の方向をあらかじめデザインしていくようなイメージに近い。

 キャラクターごとのアビリティに合わせてデッキを構築することで、とくに効果を発揮する。使う銃の種類をある程度決めたり、近接を主体にしたり、回復に特化させるなど、方向性を明確にして内容を考えていく楽しみがある。

デッキはいくつも作れるので、さまざまな戦術を試すことができる。

 FPSという都合上、登場する武器についても触れておこう。本作にはAK47MP5など実銃を再現した銃器と、斧やバットといった近接武器が登場する。装備構成は、アサルトライフルスナイパーライフルといったメインウェポンひとつと、ハンドガンや近接武器のサブウェポンをひとつ持つのが基本となるが、カードの効果によってメインウェポンを2種持つことも可能だ。

 武器のステータスカードとして表現されており、拾うタイミングで細かな性能まで確認できる仕様となっている。カード右上に表示された★マークの数字が大きいほど、高品質なアタッチメントが複数ついていることを表すので、とりあえずそこだけでもチェックしておくといいだろう。

 ベテラン以上の難度に挑むならば、味方の構成や武器、弾薬にも気を配れるようになりたい。ステージ中で拾える弾薬は全員で共有となるので、ライトマシンガンのような消費のはげしい武器を複数人が運用していると、弾丸が不足する事態になりかねない。一方、近接武器は壊れたり、切れ味が落ちることはないので、性能に満足していればいつまでも使える。

 注意すべきは、サブウェポンも細かく弾薬が分かれている点だ。「Beretta M9」M1911サブマシンガンとの共通弾薬だが、リボルバー357 Magnum」ライフル弾で、Desert Eagleスナイパー弾となっている。

 あくまでサブなので全体的に射程は短く、遠距離での火力はメインに劣ることが多い。ただし、カード効果によって弾薬を無限にすることが可能であり、フルオートの銃もあるため、サブウェポンに焦点をあてたビルドを考えてみるのも面白いかもしれない。

近接武器は弾切れを起こさないが、近づくだけでダメージを食らう相手との相性は悪い。

対人戦「スワームモード」は正直かなり難しい

 ここまで書いてきたのはおもに『B4B』のキャンペーンモードについてだが、本作にはもうひとつ「スワームモードがある。4人チームの対抗戦で、交互にクリーナーとリドゥンの2陣営に分かれて戦い、クリーナー時の生存時間を競うモードだ。

 クリーナーはキャンペーンと同様の操作で一人称視点となるが、リドゥンは三人称視点で、操作も種類によって異なるものとなる。

種類を自由に切り替えながら操作の練習が可能

 キャンペーンと比較してマッチング時間が長く、筆者が充分にプレイできたとは言えない部分もあるのだが、どちらの陣営にしてもキャンペーン以上に練度が求められるようなゲームモードに感じた。リドゥン側の体力は強そうな見た目に反比例してやわらかく、慎重に動かないとすぐに撃ち抜かれて死んでしまう。

 使えるリドゥンは全部で9種類。耐久の高いタンク型自爆型拘束型など種類は多岐にわたるが、1体1体の操作はそれほど煩雑ではないので、少し使えばおおよその性能は把握できるだろう。キャンペーンで苦しめられた相手を操作する感覚は、スワームモードでしか味わえない独自の魅力だ。

 リドゥン時のリスポーンは少し特殊で、クリーナーから一定距離離れたうえで、視線が通っていない場所でしか行えない。待機時間は自由に移動して、リスポーン場所を選ぶことが可能だ。クリーナー側からすればマップ外にあたる場所に移動することもできるので、うまく意識の外からの奇襲を狙いたい。

 12月アップデートではリドゥンの操作を練習できる場所も設けられたので、一度は触ってみたうえでマッチングすることをおすすめする。

敵や味方の位置取りをうかがいながら攻撃のプランを立てよう。

困難にチームで立ち向かうことの素晴らしさを再認識させてくれる作品

 「難しい」という多数の声を経て、本作はゾンビの大群を切り抜けていく爽快感は存分に味わうことができたように舵を切ったように見える。

 たしかに難度は協力の糸が解ければすぐにチームが死んでしまうほど高い。大群を呼び寄せる、というわかりやすい苦境がプレイミスから生まれてしまうので、プレイ中の緊張感はかなり高いものだった。

何かの間違いで鳥を起こすと大群に襲われてしまう。

 なにより、その難しさは成功したときの快感をすさまじいまでに底上げしてくれる。長くても2時間弱、一緒に遊んだだけのチームメイトが、まるで長年の友人のように思えてくる。本作の協力プレイの真髄は、まさにその瞬間にあると感じた。

 攻略で重要なのは、落ち着いてプレイすること正しい知識を学んでおくこと。どこで敵の大群が襲ってくるのか、どのタイミングでボスが出現するのか。それを知っておくだけでもあらかじめ対策しておく余裕が生まれ、味方の準備を待つこともできるようになる。そういった意味でも、やはりビギナーで1周分は遊んでおくことを強く推奨したい

カードも重要だが、プレイヤー自身の経験は大きな武器となる。

 ゲームに興味はあるけれど、一緒に遊ぶ友人がいない」という方も安心してほしい。いまならまだまだオンラインマッチングはにぎわっている。日本コミュニティも活発に活動しているので、喋りながら遊びたいというプレイヤーはそちらの門を叩いてみるのも良いだろう。

 発売当初こそ大好評とはいかなかった本作だが、2021年12月アップデートプレイフィールが改善され、今後にも期待できるものになった。2022年には新たな難易度カードシナリオの追加に加え、キャンペーンとは異なる協力プレイモードの実装も予告されており、ゲームの幅はさらに広がっていくようだ。あの『Left 4 Deadシリーズのように長きにわたって愛されるゲームとなれるかどうか、『B4B』のこれからを楽しみにしたい。

『Back 4 Blood』公式サイトはこちら