世界中の怪魚を釣りまわり、その様子をYouTubeで配信する女性アングラー・マルコス氏。「見たこともないような珍しい魚を釣るのは文句なしに楽しい」と語る彼女は、日々どのような怪魚と対峙しているのだろう。

 ここでは、マルコス氏の生い立ちから会社員時代、はじめての釣り、世界を釣るようになるまでをまとめた冒険譚エッセ『世界を釣る女』KADOKAWA)の一部を抜粋。怪魚・オオカミウオを釣り上げた際のエピソードを紹介する。(全2回の1回目/後編を読む

◆◆◆

バス釣りの奥深さ

 何に対しても飽きっぽい私なのに、釣りに関してはまったく飽きることがない。

 むしろ「もっとやりたい」という心境なのだから、いつも不思議に思う。

 それにしても、なぜ飽きないのだろうか? 自分なりに考えてみた。

 第一に思い浮かぶのは、釣りによって「モノを獲る」という人間の本能的な部分を刺激されるからではないかということ。魚が針に掛かった瞬間、私はいつも何とも言えない興奮を覚える。釣りは、私の体に潜んでいた本能的な部分を呼び覚ましてくれたのだと思う。私としては単に本能に従っているだけなので、いつまで経っても飽きないのだろう。

 数ある釣りのなかでも、入り口となったバス釣りにはいまだに特別な思い入れがある。それほどまでにバス釣りは魅力的で、しかも奥が深いのだ。

 同じバス釣りでも、釣り場によって釣り方やルアーの種類が変わるため、その都度、その場所に合った釣り方を考える必要がある。それを怠れば、いつまで経ってもバスを釣ることはできない。

 ルアーの種類は、水の濁り具合やその日の天気、時間帯、温度や風向き、魚が食べているものや、魚の擦れ具合によっても変わってくるため、それぞれの釣り場によって大きく異なる。特に、釣り人が多い釣り場のバスは、生存本能を働かせて学習を重ねていくので、そうなるとバスとの知恵比べを強いられることもある。

 私の住んでいる周辺には、同じ地域にある野池なのに、めちゃくちゃ釣れる場所とそうでない場所がある。釣る側に、「どうしてなんだろう?」と思わせるところもバス釣りの魅力だ。

 バスプロと言われる人でも、1尾を釣り上げるのに頭を悩ませている姿を見かける。常日頃から研究を重ねていても、思うようにいかないのがバス釣りなのだ。

進化を続けるバス

 ブラックバスの特徴は、何と言っても大きな口にある。この口を目いっぱい開け、自分と同じサイズのバスを飲み込んでしまうこともあるようだ。

 好奇心が旺盛なバスは、バス釣りが流行する前までは何にでも食いついてきたそうで、誰でも簡単に釣れたと聞く。ところが今は、バスが賢くなってしまったため、釣るのがとても難しくなった。

 鋭い伝達能力を発揮するのもバスの特徴だ。そのため、バス目当てのアングラーがやって来ると、集団で警戒心を高める。そうなると、その釣り場では一気にバスが釣りにくくなってしまうのだ。

 数十年前までは、琵琶湖バス釣りに行けば、大きなサイズの個体が1日に数十尾も釣れたという。しかし今は、小バスを釣るのも難しいような釣り場に変わってしまった。日本に棲みついたバスは彼らなりに進化を続けているのだ。

爆釣をもたらした特別なエサ

 以前、オオカミウオという怪魚を釣りに北海道に行ったことがある。

 これを釣るのに最適なエサがスルメイカであることを私は事前に調べていた。

 そこで北海道に向けて出発する前に、私はすぐに家の近所のスーパーマーケットに行き、エサ用として大きなスルメイカを購入した。

 北海道に到着すると、さっそくオオカミウオに挑んだ。船に乗って沖合に行き、購入したスルメイカを丸ごと針に付け、深海目掛けて一気に落とし込んでいく。

 釣るのがとても難しいといわれるオオカミウオだが、乗り合いの釣り船の船長の助けもあり、見事オオカミウオを釣り上げることに成功した。

 問題が起きたのはそのあとだ。餌のスルメイカを使い切る前にその日の釣りが終わってしまったので、イカをだいぶ余らせてしまった。しかし、捨てるのはもったいないと思ったため、空港でレンタルした車のなかに入れておいた。すると、夏場だったせいで腐らせてしまったのだ。

 釣り場から空港までの帰り道スルメイカはますます腐敗していく。買い物するためにお店に入るときも、スルメイカは車のなかに残したままであった。そのうちに、白っぽかったスルメイカは茶色に変色し、匂いも大変なことになっていく。少し触ってみると、指先に電気が走ったかのようにぴりぴりする。

(どうしようかな……。もう捨てるしかないよな……。ちょっと待てよ、考えがある!)

 こうして熟成スルメイカの特製エサができあがった。

 途中、漁港があったので、私はそこに車を止めた。スルメイカを車から出すと、すぐに虫が寄ってくる。それを追い払いながら切り身にし、針に付けて海のなかに放り込んでみた。すると予想どおり、入れ食いといっていい結果になった。

(腐ったイカはありなんや!)

 大発見をしたような気分だった。

 その後、三宅島に釣りをしに行ったとき、今度は意図的に熟成スルメイカを製造し、それを持ち込んでみた。

 このときもめちゃくちゃ釣れて、期待を裏切らない結果を得た。

 漁港の波止場から熟成エサを付けて投げ込んだら、その漁港の主のような50センチ超え級のグレが釣れてしまったのだ。

 大きなグレを一生かけて狙う釣り人も多く、私のような初心者が気安く釣り上げるような獲物ではない。50センチ超えともなれば、プロでもなかなか狙えないサイズだ。

 斬新なエサで釣りをしてみたいと考えている人がいたら、ぜひ“熟成スルメイカ”を試してみることをお勧めする。

 冬場だと腐敗がなかなか進まないので“熟成”させるのは難しいかもしれない。その場合は、ファスナー付きの食品保存袋でしっかりと密閉し、冷蔵庫から取り出したスルメイカこたつに入れ、さらに冷蔵庫に戻し、再びこたつに入れるという作業を繰り返すといいだろう。

 ただし、くれぐれも家のなかで保存袋を開けないで。それだけはお伝えしておく。

コイは甘いものに目がない!?

 魚は人間が思っているよりはるかに利口だ。敏感な嗅覚を持っているし、エサの好き嫌いもはっきりしている。例えば、身近なコイにしても、なかなか侮れない相手である。

「パンコイ」という言葉がある。コイを食パンで釣るのが「パンコイ」だ。コロナ禍でどこにも行けなくなってから、私は近所の川でパンコイをよくやるようになった。

 針に食パンを付けて投げるのだが、コイはなかなか賢くて、すぐに食いついてくれない。

 コイという魚は、思いのほか目がいい。食パンが目の前に投げ込まれても、針や釣り糸が見えてしまうと、まったく食べようとしないのだ。目だけでなく耳もいいのか、竿を投げたときの「シュッ」という音に反応し、逃げていくこともある。

 あるとき、どうしてもコイとの勝負を制したいと思った私は、エサを工夫してみることにした。熟考の末に入手したのは、私が好んでよく食べる、もちもち感がたまらないローソンの「もち食感ロール」だった。

 川岸で私が最初に1口食いついたあと、クリームがたっぷりとついたロールケーキを針に付け、コイの目の前に投げてみる。すると、それまで食パンに見向きもしなかったコイが一瞬で“ぶわー”っと寄ってきて、何の迷いもなく一心不乱になってむしゃむしゃともち食感ロールを食べ始めたのだ。その直後、すっかり警戒感をなくしたコイは私が垂らした針にいとも簡単に食いついてしまった。

 このときに、コイには敏感な嗅覚があり、さらには甘いものに弱いと確信した。

 魚以外の水中の生き物では、カニはすぐに匂いにやられる。

 少し前に魚のエサにするためにカニを獲ろうとしたことがあった。そのとき、いわしの切り身をストッキングに詰めて海のなかに落としたのだ。すると、入れた瞬間に何匹ものカニが岩陰からわさわさと出てきてストッキングに群がり出した。コイ同様、カニも匂いには弱いようだ。

 それぞれの特性を新たに発見できると、それだけで嬉しくなる。生き物を相手に知恵比べをするのは、楽しくてやめられない。

ルアー釣りとエサ釣り

 ルアーは種類が多いので、バス釣りを始めたばかりのころは何を使えばいいのかわからなくて、かなり頭を悩ませた。

 例えば、音を出すノイジー系と呼ばれるルアーがある。このタイプルアーでは、バシャバシャという音を立てながらルアーを水面で泳がせることで、魚をイライラさせる効果がある。縄張り意識のあるブラックバスの近くにキャストし、威嚇してバイト(魚が食いつくこと)を狙うのだ。イラついて攻撃的になった魚をルアーに食いつかせたタイミングで釣り上げる。

 リーリング(リールを巻くこと)によって水面にバイブレーションを起こし、魚の好奇心をくすぐって寄せ付けるタイプルアーも人気がある。

 また、ワームといわれるゴム素材のルアーを使う場合は、大きさやシンカー(おもり)の重さについても考えなければならない。

 特にバス釣りでは、ルアーの色にも気を配る必要がある。水が濁っていればシルエットが濃く出るものや派手なカラーのもの、クリアな水質ならベイトとなる魚に似せたナチュラル系のものを選択するのが妥当だ。

 バス釣り用のルアーは実に多種多様なので、初めのうちはルアー選びに苦闘するだろう。これを克服するには、実際に釣りをして慣れていくしかない。

 ルアー釣りのほかに、生餌を使った釣りも私は好きだ。

 ところが、バス釣りを専門にするアングラーのなかには、生餌を使った釣りをタブー視する人もいる。

 どうやら、バス釣りが好きな人の根底には、いかにどういったアプローチで魚をルアーに食いつかせるかを楽しむゲーム性を重視する考えがあるようだ。

 ゲーム性を重視するバス釣り専門のアングラーたちは、よりチャレンジングな釣りを求めているため、生餌を使った釣りに興味を示さないのかもしれない。

撮影=マルコ

【続きを読む】《人気YouTuberの本音》リスナーさんたちは私にとって心強い存在、それでも… 女性アングラー・マルコスが明かす“困ったリスナーさん”の正体

《人気YouTuberの本音》リスナーさんたちは私にとって心強い存在、それでも… 女性アングラー・マルコスが明かす“困ったリスナーさん”の正体 へ続く

マルコス)