オミクロン株流行による新型コロナウイルス感染症「第6波」の感染者数は2022年1月20日時点で4万6199人を数え、わずか2日ほどで第5波のピークの2倍に達しつつあります。

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 今までとは明らかにスケールの違う爆発的増加を見せています。

 オミクロン株は児童生徒にも多くの感染者が出るのが一大特徴になっています。

 今年に入って1月4日オミクロン爆発が明らかになりましたが、それから1月11日までの1週間だけで10歳未満の児童の感染者は2238人。

 これに先立つ年末年始の1週間が353人であるのと比較すると6倍以上の急増で、変化は誰の目にも明らかです。

 2020年春の全面休校は、小中高の別を問わず、学校教育に大きな影響を及ぼしましたが、その効果がどれほどあったのか、検証する術も今となってはありません。

 翻って2022年、子供が罹患し、学校など外部から家に持ち帰ったウイルスが、両親、そして同居する高齢者家族にも伝染といった事例が多数報告されています。

 オミクロン爆発のいまこそ、学校の遠隔化など、児童生徒への感染予防を徹底するべきタイミングに私たちは直面している可能性があります。

 いまこそ、子供の直面するリスクを低下させ、子供が媒介する高齢者への感染などを激減させる政策を徹底する必要がある。

 こうした分析を私たち東京大学ゲノムAI生命倫理コアでは、OCEDなど国際機関関係者を含む協力体制のもと、慎重に進めています。

 基本事実から確認してみましょう。東京都の統計に基づいて、1月のオミクロン爆発以降の年代別の感染者を確認してみると

10代以下 19%
20代   34%

 つまり、30歳未満だけで53%と過半数。これに

30代   18%
40代   13%

 まで足せば 8割方は50歳以下で占められる。すでに「コロナは高齢者の病気」という2020年の常識は完全に「誤っている」。

 このあたりから日本社会の「コロナリテラシー」書き換えが必要になっています。

「多くは軽症」と報じていますが、絶対数が増えれば、割合が少数でも重症者も出れば犠牲者も出ます。これについてはやや極端なシミュレーションを末尾に付しておきました。

 決して大げさに言うつもりはありません。ただすでに1日当たりの感染者数が、日本国内の「総病床数」を超えていることを、国民全般が基本認識として共有して必要はあるでしょう。

 例によっての「自宅療養」から「家庭内感染」が広がっている実態、家族全員2回接種、これで安心と思っていた家が、子供が運んだと見られるウイルスで全員感染・全員隔離といった報道も目にされておられるかと思います。

 1月20日厚生労働省の「専門部会」は、従来の「12歳以上」とされてきたワクチン接種の年齢枠を広げて 5歳から11歳の子供を対象とするファイザーワクチンを日本でも認め、「大人の3分の1の量を、3週間の間を開けて2回接種」することを「承認」したと報じています。

 しかしこれは「早ければ3月中にも・・・」という、いまから最短でも40日、6週間以上先「から」始まるという話。

 例によって、国内情報のタイミングとしては「いかにも」グローバルに見た感染対策としては遅きに失した、日本らしい「承認」となっている。

 考えてみてください。3週間で100倍、感染が拡大しました。感染は「率」で拡大が決まります。

 仮に同じ感染率で進んで、打つ手がなければ6週間では100×100=1万倍になっても不思議ではない。

 元旦500人の感染者が仮に1万倍になれば500万人、1億2000万の我が国人口からすれば 5%に届きません。

 つまり、それだけ感染しうる人口は、日本に存在している。

 実際、日本のオミクロン爆発がどこまで進むか分かりませんし、米国のオミクロン感染は1月半ばの、1日あたり90万人をピークに減少を見せ始めてはいるけれど高止まり。

 各国のオミクロン爆発は1か月程度で収束傾向が見えるので、3月には収まっている期待もあります。

 しかし、その頃になって「接種」では、日本の子供対策は「後の祭り」ということになる。

 即効性のある対策はと問われれば、「遠隔学習」「休校」など、答えは明白ですが、役所には「対面学習こそが正しい」という19世紀的確信がある。

 それを墨守すれば「感染するだけ子供に感染して、一定割合の後遺症を残す」というのが、いま見えている行き先になります。

 ちなみに「東大前刺傷」に1回分の稿を割く時間がありませんが、入試シーズン、試験会場でも間違いなく感染は拡大するでしょう。

 受験生や監督官だけを例外視する根拠は、存在しないからです。

医療統計の見方:
鍋一杯みそ汁の味見をする人はいない

 ちなみに前回稿のデータについて

「この数字のすべてがオミクロン株だと確認されたのですか?」という読者からのご質問がありました。

 1つ編集部に問い合わせがくれば、同様の疑問を持たれた方が1001000倍いて不思議でありませんので、お答えしておきます。

 統計はPCR陽性者の数を単純加算したもので、変異株のRNAを一つひとつ調べているわけではありません。しかし、医療統計で重要なのは数の変化の激増具合です。

 こうした医療統計とその解析は、個々の患者が感染した変異株のRNA型を見ることに重点があるのではなく、医療体制の逼迫や治療薬、ワクチンの準備など大域的な対策を講じることに目的や意義があるもので、全数調査には意味がありません。

 皆さんは、味噌汁の味見をするのに、鍋一杯一滴も残さずに味を調べないと、お碗1杯分の味付けを確認できないと考えますか?

 小さじ1杯分も調べれば十分でしょう。

 あるいは選挙の開票速報で、開票率1%未満でも当選確実がつくことがあります。

 まだ99%以上残っているのに、陰謀だの何だのというネットの作文を見たことがありますが、確率・統計のランダムネスを考えない、典型的な誤謬の状態を示すものです。

 そもそもWHO(世界保健機関)が認定するオミクロン株などの呼称は、患者の数や症状を含む「伝染病」の傾向であって、系統分類によるB.1.1.529系統だけを厳密に示すなどと考えても話がずれてしまう。

 パンデミックへの対策、封じ込めにとって大切なのはこのようなマスの挙動で、いま日本は「かつてないオミクロン大爆発」が本格化し始めた段階と、過不足なく判断すべきでしょう。

 ここで「オミクロン株は弱毒だから大丈夫」と言った見解が、経済界(?)などサイエンスの外部から出回るのを見受けます。

 極端な場合は「死者数はどうせ少ないから大丈夫」といった、個人の意見としてもおよそあり得ないものをネットでは目にしました。

 オミクロン株は「弱毒」だから大丈夫なのか、という問いに対して、前回稿(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68433)では感染と病理の分子メカニズムに添って、およそ軽視できない「私たちの細胞を破壊し、再起不能にしてしまう」この病原体の正体を詳述しました。

 今回は、日本の感染蔓延の実態に即して、複数シナリオでの予測をエビデンスベースト、根拠に基づいて検討してみましょう。

感染総数が多ければ重症者数も増える

 いまからちょうど1年前の2021年1月まで、インドでの新型コロナウイルスによる死亡率は非常に高い数字を出していました。

 しかし2月以降、致死率が著しく下がります。これは良い兆候だったかというと、残念ながらそうではなかった。

 感染者数がべらぼうに増えたため、死亡率は低くても死者の絶対数は記録を更新、医療は逼迫し多方面に影響が出ました。

 これがかつて「インド株」と呼ばれ、2021年春以降は「武漢」「インド」といった国名地名は誤解を招くとして「デルタ変異株」と呼ばれたヴァリアント(variant)が示したパンデミックの被害状況でした。

 いま、そのデルタ株と比較にならない強い感染力を持つオミクロン株が蔓延し始めているとき、私たちが注意しなければならない一つは

「感染力」と「重症化」のトレードオフ関係

 そしてもう一つは「無症状、軽症でも高率で発生するコロナ後遺症」への見通しが重要です。

オミクロン爆発で急増する死者、重症者

 日本におけるオミクロン株の流行が、かつてない勢いであることはいまさら強調するまでもありません。では「死者」や「重症者数」はどのように推移しているのか?

 実際には死者も重症者も正月三賀日以降、明らか急増を見せている。まずこの現実を直視する必要があります。

 例えば重症者数は、年末年始40~50人前後であったものが、1月19日現在、日本全国で281人と報じられています。約6倍、これを急増と言わずして、何と呼べばいいか?

 そこで2022年に入ってからの重症者数の推移を確認するとともに、

1 最も無難な予測である「線形予測」ならびに

2 市中感染に関して標準的な予測である指数近似の双方で、1月末までの患者数の推移を予想してみましょう。

 無難な見積もりのつもりですが、それでも少なければ400人前後、多ければ1000人を超す可能性もある。

 かつて我が国で最悪の重症者数を数えたのは2021年9月初頭、2000人強の重症者がありました。

 それと同程度の桁数には、普通に重症者が増える可能性を念頭に、転ばぬ先の杖を準備しておく必要があるでしょう。

 2022年初頭現在、我が国に準備された新型コロナウイルス病床数は4万床ほどです。

 すでに感染者数が4万人を超え、例によっての「自宅療養」と、それによる家族内感染、特に今回のオミクロン株では児童生徒を含む家族全員の罹患例が多数報告されています。

 状況を楽観できる根拠はどこにも見出すことができません。では死者数はどう変化しているか?

 年明けまで0人ないし2人以下の死者数でとどまっていたものが、1月第2週を過ぎるとにわかに急増し、1月19日には15人の死亡が確認されています。

 これを、正月の2人に対して7.5倍と評価するのが妥当かは、数が少ないので定かに言えませんが、重症者数が6倍と比較すると、ほぼ並行する推移で、納得のいく急増ぶりを示しています。

 これに対して感染者の総数は、三賀日までの1日あたりの500人に対して1月20日の4万5000人超というのは90倍を超す患者の急増を示しています。

 仮に患者が90倍でも、せいぜい重症6倍、死者7倍だから「弱毒だ」といった皮算用であれば、インドの莫大な死者数の轍を踏むリスクを避けがたいかもしれない。非常に危険です。

 実際、1月後半に入ってからの死者数を元に指数外装してみると、1月25日には死者1700人強といった予測もデータの上ではできてしまう。

 実際に、このような多数の死者を決して出してなりません。しかし日本国内で最悪の1日あたり死者数は、2021年第4波で200人強を数えている。

 これと同じ程度の規模で、オミクロン株の犠牲者が出ない保証も、いまのところ何もありません。

冷静・中立的な現状把握と予測、対策を!

 2022年お正月の予測として「オミクロン株の流行で、1月末には東京都だけで1000人を超す患者が出るかも・・・」という文字を見た記憶があります。

 実際には1月20日には8638人を数え、月末を待たずして東京都だけで1万人を超えても何の不思議もありません。

 何を根拠にあのような低い見積もりをしたのか科学的にはさっぱり分からない。1000人ではなく1万人単位、オミクロン株は正味で桁違いの感染力を見せつけています。

 これが願望ということであれば、よく分かります

 しかし、それは「願い」であって、神社に絵馬を奉納すれば受験合格間違いなし、ということには、残念ながらならない。

 冒頭にも記した通り、今回のオミクロン爆発は、特に1月第2週に入ってから急増の度合いを高めており、通学経路や学校などでの、児童生徒の感染が感染を拡大させているリスクが懸念されます。

 進行拡大する伝染病の前では、希望的観測も絶望的な予測も、いずれも現実対策を立てる上では有害無益。

 感染拡大の実情を見据え、冷静沈着、可能な限り先手を打って対策を講じていく必要があるでしょう。

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