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 不気味な廃村には、奇妙な話がつきものだ。ジョナサン・ランダールとオベディア・ヒギンボサムというふたりのイギリス人入植者が、1778年の「ロードアイランドの戦い(1778年)」での英軍の攻撃を避けて、ロードアイランド州クランストンの海岸に避難した。

 その後、コネチカット州ポムフレットに移住して、そこで、ヒギンボサム・リネン・ウィールズという紡績会社を興し、周辺地域に亜麻布を供給した。

 これが、ウェールズ語で"聖餐"という意味のバラ・ハックという質素な村の基礎となった。数軒の家に、農場、奴隷の宿舎、共同墓地、水車を動力とした織物工場があるだけの小さな集落だった。

 村というより、いくつかの民家が集まっているくらいの規模で、人々は質素で静かな生活を送っていた。しかし、そんな平和な集落が暗黒の時代に突入し、忌まわしく呪われた場所として有名になってしまった。

【画像】 18世紀から続くバラ・ハック村の奇妙な超常現象

 紡績会社の創業者一族の死後、水車工場は荒廃し、地域全体も衰退していった。南北戦争後には、工場は完全に放棄され、雑草が生い茂る廃墟と化して、不気味な話が生まれる舞台ができあがった。

 だが、まだ村が完全に見捨てられるずっと以前から、バラ・ハック村で超常現象が起こるという話はあった。

 始まりは18世紀後半。

 村の奴隷たちの間で、ここには影のような得体の知れないものが潜んでいるとか、幼い子どもくらいのグレムリンのような生き物や、不気味な赤ん坊がいるといった噂がささやかれるようになった。その後、村が放棄されたことで、その噂がさらに本格的なものになった。

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異常な声が響き渡る怪奇現象

 人がいなくなり、自然が元の姿へと戻ろうとはびこってくると、朽ち果てつつある廃屋にまつわる不気味な話が次々と飛び出してくるようになった。

 興味本位で村に忍び込んだ者たちは、影のような亡霊、髭面の男の幽霊、小さな子供の霊、墓地を漂うオーブや妙な光の筋を見たといった話を持ち帰った。

 だが、もっとも顕著な現象は、異様な音だという。

 現在に至るまでの体験者たちによると、誰もいないはずなのに話し声、笑い声、泣き声、大地を走る馬車の車輪の音、古い水車が回りきしむ音、農場の家畜の声、正体不明の異常な音を聞いたという。

 雑草生い茂る廃墟の集落に、人々が平穏に暮らす生活音が響き、まるで活気が戻り、にぎわっているかのようなさまざまな音が聞こえることもある。

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バラハックは「声の村」と呼ばれるように

 いつしかここは、"声の村"と呼ばれるようになった。1927年、かつてハーバードと提携関係があったラドクリフ・カレッジのオデル・シェパード教授は、この廃村を実際に見て、次のように書いている。

ここ、声の村では、かつて、人々が暮らしていた家の地下にぽっかりと大きな穴があいて、そこから大樹がのびのびと生えている。

誰も住んでいないはずなのに、この場所には、まだ人々が息づいていて、常に人の生活のざわめきがある。

遊びに興じる子どもの笑い声、長いこと塵と化していた母親が、今は地面の穴だけになってしまった家に帰ってくるよう子どもたちに呼びかける声、とぎれとぎれの歌声、古い道を行く馬車の車輪の音。まるで、音たちが、私たちが時間と呼ぶ不可解な防音壁を突破して、この場所にやってきたかのようだ
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ゴーストハンターたちの心霊スポットに

 当然のことながら、こうした妙な話は、古くからゴーストハンターたちを惹きつけてきた。

 この村を探索すると、極めて奇妙なことが起こることもある。1971年8月と10月、超常現象研究家のポール・イーノがここを調査し、期待どおりの結果を報告した。イーノは著作『Faces at the Window』の中で、この調査の様子を綴っている。

村に入ろうとすると、さっそく奇妙な現象に襲われた。やりきれないほどの憂鬱感に包まれ、犬の吠える声、牛の鳴き声、時折、人が話す声が聞こえてきた。その時期には珍しいことだが、鳥がまったくいないことに気づいた。

2時間ほどの探索の後、一行は夕方の7時15分に戻って来た。録音したものを再生すると、村を流れるマショモク川から声が聞こえてくるのに気がついた。それは笑い声、子どもたちの笑い声だった。

調査チームは新たなメンバーを組んで、10月30日と31日にもう一度、現場へ戻った。前回聞いた声が、集団の妄想ではないことを確認するためだ。

それが波乱に満ちた夜になった。夕暮れ時、一行は墓地に向かう途中で道に迷った。道はわかっていたはずなのに、誰ひとりとして、見つけることができなかったのだ。

やきもきしている間に、新しいメンバーのひとりが、硬直して、まったく動けなくなっているのがわかった。

前へも左へも進むことができない。冷や汗をかき、呼吸も荒い。全員で彼を動かそうとしたが、右あ
るいは後ろにわずかに動くだけだ。つまり、それは墓地に近づくなということだと後からわかった

 その後、ほかの探索者も、同じような現象を体験している。

Bara-Hack: Lost Village of the Higginbothams, 1/3 **in Fabulous HD**

立ち入り禁止となり、謎は深まるばかり

 バラ・ハックの廃村は、超常現象が頻発する伝説的な場所となった。だが、探索を望む猛者にとって残念なことに、現在、この廃村は私有地になってしまった。

 "立ち入り禁止"の札があちこちに建てられ、ゴーストハンターや好奇心旺盛な探索者たちを締め出している。

 今はもう誰もここに近づけないため、現状がどうなっているのか知ることは難しく、なぜここがこれほどまでに話題を集めるのか、謎が残るばかりだ。

 ただの都市伝説なのか、それともそれ以上のものなのか?

 ひとつの考えとして、白人の入植者に追い出される前、もともとこの土地に根を下ろしていた先住民ニプマック族の呪いのせいだという説がある。

 もうひとつは、この場所は異次元世界との狭間で、見聞きしていることは、並行して存在している別次元、もうひとつの場所と時間の中で起こっていることだという説だ。

 タイムスリップ現象、あるいは過去の出来事が、フィルム映像のように何らかの形でその場に刻まれて残る残像現象ではないかという説もある。

 ここでなにが起こっていようと、それは極めて不気味なもので、時を失い、未知の世界の果てに潜んでいるような場所なのだ。

References:The Strange Tale of the Cursed Village of Voices | Mysterious Universe / written by konohazuku / edited by parumo

 
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誰もいないのに様々な声が響き渡る。呪われた「声の村」と呼ばれる廃村ミステリー