34年間バスの運転手として勤務していた女性が、ある理由により失職した。バス車両のデザイン変更によりミラーの位置が変わったため、身長約152センチの女性が運転すると死角ができるようになったという。別のバスの運転手になるよう提案されるも同意せずに解雇された女性は、これまでと同じ条件で復職できるよう会社を訴えた。『BBC』『Manchester Evening News』などが伝えている。

英グレーター・マンチェスターのロッチデールに住むトレーシー・ショールズさん(Tracey Schole、57)は34年間、バスの運転手として働いてきた。

しかし昨年、勤務先のバス会社「Go North West」がサイドミラーなど一部の車両デザインを変更したことにより身長5フィート(約152センチ)の彼女が運転すると死角ができるようになってしまった。

そのため安全に業務を遂行できないと判断されたトレーシーさんは、9月に同社のスクールバス運転手になることを提案されたが、労働時間の短縮に伴い収入も減ってしまうためそれを拒否した。そして11月に解雇されてしまったが、トレーシーさんはこれまでと同じ条件で復職できるよう会社に要求したという。

トレーシーさんはこれまでの経緯について、メディアのインタビューでこのように明かしている。

「私はこれまでの34年間、どんな車両でも問題なく運転してきました。昨年、一部のバスのデザイン変更によりミラーの位置が変わって、シートを後ろに下げないとミラーが見えなくなってしまいました。背の低い私はそれだとペダルに足が届きませんから安全に運転することができなくなったんです。自転車や子供が近づいてきても見えませんから。」

「私は男性ばかりのこの業界で、女性ドライバーとして長年働いてきました。私はみんなと同じように仕事がしたいだけで、苦情を言っているわけではありません。私が望むことはただひとつ、仕事を取り戻すことだけです。」

トレーシーさんの復職を求める嘆願書には25000人以上が署名し、今月11日にチーサム・ヒルにあるクイーンズ・ロード停留所(Queens Road bus depot)で行われたアピール行動には多くの人々が集まり、トレーシーさんを支持した。

そして先日、ついにGo North Westからトレーシーさんを前職と同じ条件で受け入れることが発表された。新しい雇用契約では、始業時間を早めることで彼女が運転席から安全にミラーを確認できるバスに乗務できるよう調整されているそうだ。

Go North Westの人事部長であるスコット・メイナード氏(Scott Maynard)は、トレーシーさんの復職についてこう語っている。

「私たちは採用時に身長制限を設けておらず、当社にはトレーシーさんより低い身長のドライバーが複数います。それに身長を理由に誰かを解雇することはありません。我々は当初からトレーシーさんに仕事を続けてもらいたくて様々な提案をしてきました。ですから長年ドライバーとして活躍してきた彼女が新しい契約を受け入れてくれたことは喜ばしいことで、とても嬉しく思っています。」

また今回のアピール行動においてトレーシーさんを支援したユナイト労働組合(The Unite union)は次のように述べた。

「初の女性バスドライバーとなったトレーシーさんは、バス業界の常識を覆しました。そしてその後も30年以上にわたり安全な運行をしてきたのです。彼女が職場に復帰できたことは素晴らしい勝利であり、トレーシーさんの精神を証明するものでしょう。」

画像は『BBC 2022年1月18日付「Rochdale bus driver reinstated after height issue resolved」(GO NORTH WEST)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 上川華子)

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