韓国には、1997年トラウマが今なお根強く残っている。アジア通貨危機に端を発した経済危機である。最終的に、IMFの救済を受けることを余儀なくされた。その後、復活した韓国はついに先進国入りを果たしたが、今の韓国は、経済危機の前の状況によく似ているという。

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 韓国の保守論客、ファンドビルダー氏が分析する、IMF危機の前夜と今の3つの共通点とは(後編)。

【前回記事】
白旗を揚げてIMF救済を受けた25年前に似通う韓国の自己陶酔(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68544)

 3つ目の共通点は、米国から突き放した態度を取られているという点だ。最も大きい決定打である。

 2021年9月21日文在寅大統領は国連総会の演説で、「南北と米国の3者、あるいは南北米中の4者が集まって、韓半島での戦争が終了したことをともに宣言しよう」と提案した。

 だが、バイデン政権は「北朝鮮が、まず非核化の意志を確実に見せてこそ、北朝鮮と対話する」という立場を以前から何度も明確にしており、韓国の提案は米国を裏切る事実上の不意打ち行動だ。日米豪印による戦略対話の枠組みである「QUAD(クアッド)」を拡張し、韓国が参加する「クアッド・プラス」に対しても韓国は消極的だ。

 さらには2021年1月26日文在寅大統領は中国の習近平国家主席との電話会談で、「中国共産党創立100周年おめでとうございます」と祝福した。この行動は、朝鮮戦争で韓国を救うために中国と戦い血を流した米国を侮辱する行為だ。米国は直ちに、韓国に「残念だ」という反応を見せた。

 米国が願う「北京オリンピック外交的ボイコット」に対しても、韓国は呼応するつもりがないようだ。

 韓国はひたすら「終戦宣言」だけにすがっている。

 2021年12月13日オーストラリアを訪問した文在寅大統領は、オーストラリアのモリソン首相との首脳会談後の記者会見で、「米国と中国、南北の全員が、(終戦宣言に対して)賛成の立場を明らかにした」と断定した。韓国の特技であるメディア戦の一つであり、米国に圧力をかける不純な意図が込められた発言だった。

 駐韓米国大使が長期間空席のままだという異常な状況は、裏切り行為を続ける韓国に向けた、米国の不快な心情が反映されたものだろう。

 だが、米国大使の長期間の空席などよりも、600億ドルの通貨スワップを延長してほしいという韓国の要請に「NO!」を突きつけたことに、はるかに米国の不快感をうかがい知ることができる。

日本との日韓通貨スワップを蹴飛ばしたツケ

 2020年3月のウォン相場の急落から韓国を救出した米韓通貨スワップは、当初は6カ月契約(2020年3月~2020年9月)だった。その後、米国と韓国は満期前の2020年7月に合意し、通貨スワップを2021年3月まで延長した。さらに、2020年12月に再度合意して2021年9月まで再延長し、2021年6月17日に再び協議し、2021年12月まで3カ月の延長で合意したところであった。

 ところが、この通貨スワップ延長合意の時点から3カ月経過した2021年9月21日の国連総会で、「南北米中が集まって終戦宣言しよう!」と、韓国は米国の政策に正面から対抗する不意打ちを食らわした。これに対して、米国は2021年12月、韓国の通貨スワップの追加延長要請に対して断固として「NO!」と述べたのだ。

 同盟の要請を露骨に断るのは稀なことだ。しかも、米国の立場であれば、600億ドルの通貨スワップを韓国に長期間提供することぐらいは容易いことで、あえて断る理由がない。米国が同盟国である日本と、期間および金額無制限の通貨スワップを締結しているという点を考慮すれば、より一層そうだ。

 韓国に向けた米国のこのような露骨な拒絶は、因果関係を調べれば、韓国の不意打ち行動よることが明白だろう。

 IMF危機が起きた1997年当時は、米国産牛肉のO157汚染と、それに関連した裏切り行為によって米国にそっぽを向かれた。今回は終戦宣言と関連した裏切り行為で米国から冷遇されている。

 実は、日本との関係さえ良ければ、韓国が2020年3月のウォン急落を体験することはなかった。そもそも米国による通貨スワップ自体も必要なかった。

 韓国は有事の際、日本から相当額の支援を受けることができる日韓通貨スワップを2015年まで維持していた。日韓通貨スワップは2001年20億ドル規模から始まり、2008年の世界金融危機を契機に増額を繰り返し、2011年には700億ドルまで達した。

 必要に応じて、韓国が700億ドルに相当するウォン貨(約83兆ウォン)を日本に預け、日本から700億ドル(400億ドル+300億ドルに相当する日本円)の支援を受けることができるという条件の通貨スワップだった。日本の立場では何の必要もないことだったが、韓国の立場では非常時に大きな助けとなる、とても重要なものだった。

 だが、韓国では反日の方がより一層重要だった。病的な反日に陥った韓国は、日本との700億ドル通貨スワップを吹き飛ばしてしまった。

 現在の韓国は、中国、トルコインドネシアマレーシアオーストラリアスイスアラブ首長国連邦UAE)、カナダ通貨スワップを締結した状態だが、ドル貨幣の契約は一つもない。すべて「ウォン貨対現地貨」契約で、非常時に何の助けにもならない。

1997年の経済危機が再現される可能性

 現在の韓国の外貨準備高は2022年1月現在で約4630億ドルだが、これでは十分とは言えない。なぜなら、2020年3月、韓国の外貨準備高が4500億ドル水準であったのにもかかわらず、ウォン相場が急落し、危機に陥ったためだ。国際決済銀行BIS)は、韓国の適正外貨準備高を8000億ドル水準としており、現在でも3000億ドル以上不足した状態である。

 米国は今後、数回、金利を引き上げる計画だ。米国の金利引き上げは韓国内の外国資金(ドル)の流出を招き、ウォン相場を下落させる可能性が高い。米国の金利引き上げが、韓国の金融危機を招く可能性があるということだ。ウォンの下落を防ぐために、韓国は積極的に金利を引き上げなければならない。

 そうなると、さらに大きな問題が発生する可能性がある。韓国の家計債務の対GDP比が、世界最高水準であるためだ。

 2021年11月、国際金融協会(IIF)が発表した「世界負債報告書」によれば、2021年6月末を基準として、家計債務比率がGDPを超過する国家は、韓国が104.2%で唯一だった。米国79.2%、日本63.9%、ユーロ地域61.5%、中国60.5%など、主要国は債務比率が比較的良好な水準である。

 韓国の経済が外部衝撃に脆弱だということは、対GDP比の貿易依存度(輸出額+輸入額)が65%(2020年基準)にもなるという点からも分かる。内需の大きい日本の場合、貿易依存度は25%にしか過ぎない。

 家計債務比率が高い状態で金利引き上げが断行されれば、衝撃は大きくならざるを得ない。個人消費の減退が、他国よりはるかにひどく起こることだろう。金利引き上げに伴って、不動産価格が他国より急激に下落する可能性もある。

 このような消費萎縮と不動産価格の下落が起きている最中に、ウォンが下落することになれば、韓国は本格的な「ドル流出」という事態に陥る可能性を排除することはできない。

 そうなると韓国は、1997年の外国為替危機が再現される可能性がある。1997年に、米国は韓国を冷遇した。もし今日の韓国が外国為替危機に直面すれば、現在の雰囲気から、米国は韓国を再び冷遇するだろう。

 結論的に、「最悪の日韓関係」「先進国という自負」「米国から敬遠」という3点が、1997年当時の韓国と今日の韓国に、明確に見出される共通点だと言える。

 1997年に危機に陥った韓国は、幸いにもIMFから支援を受けて再起に成功した。果たして、今日の韓国にもう一度、その時のような危機が訪れたら、IMFからの支援を受けることができるのだろうか。

次の危機時に日本と米国は手を差し伸べるか?

 1997年、韓国の裏切り行為に激怒した米財務長官や商務長官は、韓国に対する資金支援を準備した大統領と国務長官などの計画を無にした。当時、それでも怒りが収まらなかった一部の人々は、「IMFが韓国を支援することも、防がなければならない」という強硬な考えを持っていた。

 現在、IMFの加盟国は約190カ国で、出資比率(持ち分=クォーター)が一番高いのは米国(17.5%)で、次は日本(6.5%)だ。すなわち、米国と日本の発言権が最も高いということになる。今日の韓国(持ち分1.8%)が危機の時に、1997年のようにIMFからの支援を100%得ることができるというのは、誰一人言い切れない。

 1997年、IMFが用意した韓国に対する金融支援は破格だった。当時のIMF歴代最高金額である570億ドルが、韓国のために編成された。この中の210億ドルをIMFが、100億ドルを日本が拠出した。米国は50億ドル、ADB(アジア開発銀行)は40億ドル、その他の先進国および国際金融機関が170億ドルを拠出する計画だった。

 日本は、金融危機に陥った韓国に対して相当な金額を支援した。米国も、2008年と2020年にウォンが急落した時に韓国に対して、通貨スワップを提供した。

 このように大きく助けてもらった日本と米国に対する、今日の韓国の姿はどうなのだろうか。まさに「恩知らず」そのものだ。

 今後、1997年と同様の危機が韓国に再び訪れた場合、韓国は日本と米国から助けを期待するのは難しいだろう。今後の金融危機時、韓国は事実上、孤立無援の状態になる可能性が濃厚であるということだ。

 このような意味で、今後韓国が米国や日本の支援が切れた状態(Naked)で、米国の金利引き上げなど外部の悪材料に対応し、果たして自らの能力だけで、ウォン/ドル為替レートを1200ウォン以下の水準に維持できるのかどうか。これは、重要なポイントになるだろう。(終わり)

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