
2021年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ライフ部門の第3位は、こちら!(初公開日 2021年9月3日)。
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キャンプは秋口にベストシーズンを迎える。真夏よりも涼しいので過ごしやすく、キャンプ場もそれほど混雑しないので、のんびり過ごすことができるからだ。コロナ禍であっても第二次ブームといわれるアウトドア人気は盛り上がりを見せている。
その一方、キャンプ人口の増加にともなってマナー違反も増えている。自治体が運営する無料キャンプ場では、近隣住民の苦情によって閉鎖に追い込まれる施設も出てきているという。なかでもキャンパーの多くが指摘するのが“パリピ”のマナーの悪さだ。
パリピは“パーティーピープル”の略で、クラブや音楽フェスなどに集まり、みんなでお酒を飲んで盛り上がるのが好きな人のことを指す。キャンプ場におけるパリピの実態について、2人のキャンプ愛好家に話を聞いた。(取材・文=押尾ダン/清談社)
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25~30人ほどのパリピの集団がノーマスクで会社員の早川和昭さん(仮名、42歳)は、5年ほど前から夫婦でキャンプやバーベキューなどのアウトドアにハマり、月に数回は各地のキャンプ場を訪れている。とくに気に入っているのは、自然豊かな河川沿いに作られた某キャンプ場だ。
ところが、今年6月に緊急事態宣言が解除されたあとにそのキャンプ場を訪れると、20~30人ほどのパリピの集団がノーマスクで大騒ぎしていたのだという。早川さんは「キャンプ場であれほどマナーの悪い人たちは初めて見ました」と証言する。
──そもそも、そのキャンプ場はマスクをしなくてもOKなんですか。
早川 自治体が運営する無料キャンプ場ではないので、施設側も商売上、ノーマスク集団でも受け入れざるをえなかったんだと思います。とはいえ、さすがにヤバい集団だと思ったらしく、ほかの客の迷惑にならないようにキャンプ場の端にあるデイキャンプ(日帰りキャンプ)のサイト(区画)に案内していました。
──いくらアウトドアといっても、このご時世に「ノーマスクの20~30人の集団」という時点でどうかと思います。具体的にはどんな迷惑行為があったんですか。
早川 明るい時間からお酒を飲んで大騒ぎしたり、酔っ払った状態でライフジャケットを着けずにゴムボートで川下りをしたりするのはまだマシな部類でした。まず不快だったのは、「近道だから」という理由で他人が借りているキャンプサイト内にズカズカと侵入してくること。キャンプ場のマナーを全然わかっていないんだと思います。
それについては僕も彼らに注意しました。1人に注意しても次から次へと侵入してくるので、もう途中であきらめましたが……。それでも日中は家族連れが多く、それなりにキャンプ場全体も騒がしかったので、そんなにパリピ集団の行為も気にならなかったんです。
日が暮れると、キャンプ場で爆音を鳴らして踊りまくる──ということは、日が沈んで以降に迷惑行為がエスカレートした?
早川 その後、パリピ集団はテントサイトに移動したんですが、夜7時を過ぎたころ、突然、彼らのいるサイトから音楽が爆音で鳴り響きました。見ると、バーベキューをしながら音楽に合わせて踊りまくっている。完全にキャンプ場をフェスやレイブ(ダンス音楽を一晩中流す屋外イベント)と勘違いしているんです。
ほかのキャンパーからクレームがついて30分ほどでおとなしくなりましたが、今度は酒や食べ物を手に持って、昼間騒いでいたデイキャンプのサイトにゾロゾロ移動し始めたんです。しかも、やっぱり他人のサイトを平気で横切るうえ、酔っ払った状態でマスクもつけずに喋りながら移動するので、ほかのキャンパーたちが激怒していました。
──さすがに移動した後はパリピ集団もおとなしくなりましたか。
早川 全然です。むしろ夜9時ぐらいからさらにエスカレートしました。普通なら、その時間は夕食の片付けも終わってまったりする時間です。僕ら夫婦も焚き火を見ながら静かにお酒を飲んでいました。しかし、パリピ集団は違います。突然、「ハッピーバースデー!」の大合唱が起こると、どんどん奇声が大きくなり、彼らが暴走し始めたんです。
──暴走? いったい何をやり始めたんですか。
早川 サウナづくりです。最近“アウトドアサウナ”というのが流行っているんですが、パリピ集団も見よう見まねで河川敷にサウナをつくり始めたんですよ。でも、男性陣が半裸の状態で川に入って岩を集めたり、ポンプでボートに水を貯めたり、それに女子がまとわりついてイチャイチャしたり、とにかく騒がしい。加えて、今度はお決まりの花火です。
──子どものいる家族連れなら就寝する時間に花火をするのは迷惑すぎますね。
早川 ちょうど僕たちのテントサイトの真下あたりで騒いでいたので、キレそうになりましたよ。すると、ほかのキャンパーから何度目かわからないクレームがつき、管理人さんから激しく注意されていました。その後、渋々テントサイトに戻ったんですが、泥酔しているのでコケまくり、そのたびにキャーキャー大騒ぎする。
夜11時ごろにようやく静かになったんですが、ホント最悪でした。せっかく夫婦で休日のキャンプを楽しもうと思っていたのに、彼らのせいで台無しになりました。
──ちなみに、パリピ集団の年齢層はどれくらいだったんですか。
早川 翌朝、彼らとすれ違ったんですが、やはり男女ともに20代の若者が中心でした。でも、なかには40代と思われる男性も5、6人混じっていたんです。いい年をした大人がパリピを気取り、キャンプ場で大騒ぎしていたことに驚きましたね。
虫の声が響く静かな空間に女の子のアノ声が……コロナ以降にアウトドアにハマり、これまで7、8回ほどキャンプ場に行ったことがあるという瀬口舞さん(仮名、34歳)もパリピの迷惑行為にうんざりしたひとりだ。
昨年9月、感染が再拡大する前に都内から車で3~4時間の場所にあるキャンプ場に3人の友人と訪れたとき、やはり大騒ぎするパリピ集団に遭遇したのだという。
──そのパリピ集団はいったいどんな迷惑行為をしたんですか。
瀬口 男女7~8人の20代のグループだったんですが、まず単純にうるさいんです。夜8時すぎなのに、スマホをスピーカーに接続してテクノやトランスやEDMをガンガン鳴らし、彼らのサイトがまるでレイブのような雰囲気になっていましたから。
それに加えて、最悪だったのは“フレイミングショット”をやり始めたことです。
──アルコール度数の高いウオッカやテキーラをショットグラスに注ぎ、火をつけてストローで飲むというやつですね。
瀬口 海外のパリピがよくやるお酒の飲み方なんですが、盛り上がるのでとにかくキャーキャー騒がしいし、おまけに火を使うので危ない。
案の定、火が女の子の髪か服に少し引火したらしく、「キャー!!」とすごい悲鳴が響きわたったんです。幸い大事にはいたりませんでしたが、あたりが騒然となりました。にもかかわらず、パリピたちは酔っていたせいだと思いますが、それを見ながらゲラゲラ笑っているんです。完全にヤバい人たちにしか見えませんでした。
──その騒ぎは何時ごろまで続いたんですか。
瀬口 さすがにほかのキャンパーから苦情が来て、その後は少しだけ静かになりましたが、たぶん夜10時か11時ごろまで続いたと思います。でも、夜中になると、今度は女性のアノ声が聞こえてきたんですよ。虫の声が聞こえる静かなキャンプサイトに……。
抑えている感じの声なんですが、複数の女の子のアノ声が響き始めたときはギョッとしました。子どものいる家族連れのキャンパーはもう寝ていたと思いますが、もし起きていたとしたらさぞ気まずい思いをしたと思います。本当に迷惑な人たちでした。
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前出の早川さんによると、このほかにも「ゴミの分別をしない」「炊事場の流し台が汚いまま」「タバコの吸い殻が詰まった飲料缶を放置」などの迷惑行為があったという。
念のために言うと、上の証言に音楽フェスやクラブ好きな人への偏見を助長する意図はなく、あくまでキャンプ場など公共の場でのマナー低下に警笛を鳴らしたもの。これから本格的なキャンプシーズンが始まるので、くれぐれも迷惑行為には注意してほしい。
(清談社)

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