世界の破滅、人類の滅亡までのカウントダウンを行なっている「世界終末時計」は、3年連続最短を記録し、残り100秒となっている。
新型コロナウイルス、気候変動の脅威など、世界は非常に危険な瞬間に直面していることは確かだが、今から100秒後にどうにかなるわけではない。
そもそも世界終末時計とはいったい何なのだろうか?誰が何を根拠に時刻を決めているのか?その見方は?ここでは、いまさら人に聞けない、世界終末時計について知っておくべきことをまとめてみた。
世界終末時計は、その名の通り、世界が直面する脅威のレベルを評価して、人類が滅亡にどれほど近づいたのか表す時計だ。
終末時計は、1947年に『原子力科学者会報(Bulletin of the Atomic Scientists)』という学会によって考案された。
学会の発足メンバーは、アルベルト・アインシュタイン、ロバート・オッペンハイマー、ユージン・ラビノウィッチなど、マンハッタン計画で原子爆弾開発に携わった一流物理学者の面々。当時、世界が直面する危機についてもっともよく知っていた錚々たる顔ぶれだ。
75年前の1947年より、核戦争などによる人類の滅亡や世界の絶滅(終末)を『午前0時』に設定し、毎年、終末までの残り時間を「0時まであと何分(秒)」という形で表現した時計が、原子力科学者会報の表紙絵となった。
なお原子力科学者会報は、2009年まで印刷版が出版されていたが、現在ではオンライン版となっている。
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終末時計の時刻はいつ決まる?何時から始まった?
毎年1月、科学者たちが世界が破滅にどのくらい近づいたのか評価し、時計の針を午前0時に向けて進めるのか、それとも後退させるのか決めている。
午前0時になれば、すべての幕切れ。人類は終了ということだ。終末時計の時刻は、1947年に「残り7分(420秒)」から始まった。
どのような要因が時刻に影響を与えている?
科学者は毎年、さまざまな要因を考慮する。たとえば、核戦争の脅威、気候変動、遺伝子改変技術、兵器開発といった、文明にとって脅威になるだろう事柄だ。
終末時計が一番進んだのはいつ?
まさに今だ。終末時計はこれは2020年、2021年から変こされておらず、3年連続で最も短い時間、残り「1分40秒(100秒)」を示している。
2022年は、気候変動をはじめ、新型コロナウイルスの変異株の猛威、アメリカ・ロシア、アメリカ・中国間の緊張による核兵器の近代化、北朝鮮やイランでの核問題の危険性、ネット上での陰謀論などの誤情報拡散もリスクに加わっている。
なお、2020年以前で終末時計が一番進んだときは、2018年と1953年の2度で、「残り2分(160秒)」だった。前者は核のリスクと気候変動(地球温暖化)、後者はアメリカとロシアの核兵器実験が主な要因だった。
終末から一番遠かったのは?
反対に一番遠かったのは、1991年のこと。この年、冷戦が終わり、米ソは戦略兵器削減条約に調印した。これを受けて、終末時計は「残り17分(1020秒)」と、それなりに安心感のある時刻に設定された。
終末時計を実際に見られる?
終末時計はいわば仮想的なものであり、「原子力科学者会報」の新年号の表紙絵であるが、そのオブジェが作られた。現在、シカゴ大学にある原子力科学者会報のオフィスのロビーに置かれている。
Doomsday clock remains at 100 seconds to midnight, scientists warn
終末時計がもたらしたポップカルチャーへの影響
終末時計はポップカルチャーにも根付いている。ザ・フー、ザ・クラッシュ、スマッシング・パンプキンズといったバンドがこれをテーマにした曲を作っているし、小説やドラマの題材になったこともある。
References: Bulletin of the Atomic Scientists / written by hiroching / edited by parumo
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