京成電鉄の看板列車といえば京成上野駅成田空港駅を結ぶ「スカイライナー」です。この列車に過去使われたAE形電車(初代)とAE100形電車はどのような「乗りもの」だったのでしょうか。運転経験のある運転士に聞きました。

AE100形の運転時の特徴は?

京成電鉄の看板列車といえば、東京都心と成田空港を結ぶ「スカイライナー」です。現在はこの列車にAE形電車(2代目)が使われていますが、過去には、AE形電車(初代、1973年デビュー)やAE100形電車(1990年デビュー)が使われていました。

歴代のスカイライナー車両や数多くの通勤車両を運転してきた京成電鉄の現役ベテラン運転士・松村眞一さんに、AE形(初代)、AE100形がどのような乗りものだったのか、話を聞きました。

――まず、2代目スカイライナーであるAE100形の運転について、お伺いします。初代AE形よりも車体が長くなったことや、定速運転装置の搭載、地下鉄乗り入れ性能など、特徴がある車両だと感じます。初代AE形と比べて、どういった車両と感じましたか?

――車体は初代AE形と比べると、1両あたり1m程度長いです。8両編成での運転ですと、10mほど編成長が違うことになります。AE形(初代)と混在して運用されていたときは、停車駅の停止位置目標も「在来AE」「N-AE」が併存していて気を遣いました。加速力がAE形(初代)より良くなったので、スピードの乗りが良かったです。それぞれの車両に合わせた運転を心掛け、定時運転に努めていました。

曲線でも使う「定速運転機能」

――AE100形は、現在の成田スカイアクセス線経由ではなく京成本線を走っていたわけですが、路線全体の運転感覚は、(現在もスカイライナーが走る)京成本線のうち京成上野~京成高砂間と同じような感じだったのですか?

そうですね。京成上野から京成船橋まで曲線が多いので、定速運転機能が使いにくい感じでした。

――その定速運転機能が歴代スカイライナー車両に搭載されていますが、これは直線区間で使うのですか?

直線で使うことが多いですが、例えば60km/h制限の曲線が続く区間では、60km/hに設定して使いました。この場合、手動だと速度が落ちるところも60km/hを維持してくれて便利でした。

――通勤車両に装備されていないということは、加減速が少ない特急でないと使いにくいということでしょうか?

そうです。

歴代スカイライナーの運転感覚とは

――AE100形と最新の2代目AE形、あるいは初代AE形とでは、運転感覚に大きな違いはありますか?

新しくなるごとに操作はしやすくなっていますし、加速やブレーキなどの反応も良くなりますね。初代AE形についてはワンハンドルなので、同時期の(ツーハンドルの)通勤車両とはだいぶ違う印象でした。

――AE100形地下鉄乗り入れ性能を有しており、実際、イベント時に都営浅草線へ乗り入れています。この場合、都営地下鉄区間は都営地下鉄運転士AE100形を運転されたのですか?

はい。(京成線と都営線の境界駅である)押上駅で乗務員交代しました。普段入らない車両で編成も長く通常の停車位置では収まらないため、終電車後の夜間に回送しました。もちろん都営地下鉄区間では都営の運転士さんがしっかりと訓練してから乗務されました。

――AE100形には前面に貫通扉がありましたが、これが設置されていると運転時に、例えばすき間風が生じたりするのでしょうか?

すき間風はありませんでしたが、構造上、雨天時にワイパーの水はけが悪くなり、やや運転しにくい印象がありました。貫通扉のない初代AE形ではそうしたことがありませんでしたので、そのように感じていました。

「初代AE形は傑出していた」

――初代AE形について質問します。京成初の本格的な有料特急車両として力が入っていたと思いますが、どのような特徴がありましたか?

通勤車両よりも高性能であることにも驚きましたが、速度計が丸型ではなく、横長で「指令速度」「実速度」に分かれていたことも特徴でした。上の指令速度に下の実速度の針を合わせるのですが、針がずれるとブレーキがかかってしまうのです。なお、運転台が広くて、見晴らしが良好なのも印象的でした。

――車両の加減速性能を示す起動加速度が公表されていますが、この数字が高い車両だと、速度が乗りやすいといった違いは感じますか?

新しい車両ほど反応が良いと感じますが、同時期の車両で傑出していたのは初代AE形でしょう。通勤車両よりも運転がしやすい車両でした。後継のAE100形も登場時に高い性能を感じましたが、初代AE形も劣らず高性能な車両でした。定速運転機能にも驚いたものです。

――初代AE形の走行装置を流用した3400形という通勤車両がありますが、この車両の運転特性は初代AE形に近いものなのでしょうか?

加速や減速時に初代AE形を思わせる運転感覚がありますね。運転台は狭くなりましたが。通常、引退車両はもう運転できないわけですから、もう運転することがないという寂しさがありますが、この車両は初代AE形を思い出させてくれて、とても懐かしく感じるところがあります。

――貴重なお話、ありがとうございました。

京成電鉄のAE100形電車(画像:photolibrary)。