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ロシアシベリア北東部にある無人島には、使われなくなってから30年が経ち廃墟と化した気象観測所がある。人が住んでおらず無法地帯となったこの地域に、多くのシロクマが訪れて遊び場と化しているようだ。写真家の男性がこの様子を捉えた写真は、ナショナルジオグラフィックが主催する写真コンテストで入賞したことを『Russia Beyond』などが伝えている。

話題の写真を撮影したのは、ロシアで写真家として活躍するドミトリー・コッホさん(Dmitry Kokh)だ。ドミトリーさんは昨年9月、露シベリア北東部と米アラスカ州北西部の間にあるチュクチ海をセーリングヨットで進んでいた。

シロクマの撮影するために向かったのだが、それはドミトリーさんにとって生涯の目標でもあった。そのため当初はシロクマの生息地として世界的に有名なウランゲリ島を目指していた。

しかしその年は同地域で冷夏を記録していたためか期待していたほどシロクマの姿は見られず、様々なシロクマを撮影しようと意気込んでいたドミトリーさんにとって残念な結果になってしまった。しかし同じチュクチ海に浮かぶコリュチン島の近くを通り過ぎようとした時、何かの気配に気付いたという。

ドミトリーさんは「廃墟と化した建物の窓に何かが動いているのを見たんです。近づいてみるとそれはシロクマだったんですよ!」と驚いた当時の心境を明かした。

コリュチン島にあった廃墟は1934年に建設された気象観測所で、1992年に役目を終えてそのまま放置されていた。1年のうち9か月は島の周りの海が氷に覆われているコリュチン島には人が住んでいないが、考古学者によると1500年前には人が住んでいたことが立証されている。

この無人島に残された廃墟は好奇心旺盛なシロクマたちの広い遊び場になっているだけでなく、セイウチや北極圏に棲息する鳥類など野生動物たちが訪れる憩いの場所となっているようだ。

これまでにこの廃墟でシロクマの姿が確認されたという報告はなく、ドミトリーさんは「一生に一度の状況でした」と今回の貴重な出会いを振り返った。様々なシロクマの姿を捉えた写真がドミトリーさんのInstagramに公開されると、廃墟とシロクマという異色の組合せが大きな話題を呼んだ。

写真には廃墟の中や周囲を歩き回って探索するシロクマや、廃墟の小さな窓に並んで顔を覗かせる2頭の可愛らしい姿もあった。また大きな窓に両前脚を掛けてリラックスした様子のシロクマの写真は、昨年に『ナショナルジオグラフィック』が主催したロシアの写真コンテストにて、人為的な環境における野生動物の暮らしをテーマにした賞である「Best Image of Wildlife in an Anthropogenic Environment」を受賞した。

これらのシロクマの写真には、「素晴らしい写真だ!」「廃墟を活用するなんて賢いシロクマだ」など感嘆の声が多数寄せられた。しかし一方で「自然の生息地がなくなってきたからここにいるのかな」「こんな環境にいるのを見ると心が痛むよ」などシロクマの置かれた状況に悲観するコメントも見受けられた。

ちなみにどの写真を見てもかなりの至近距離で撮影しているが、ドミトリーさんは「テクノロジーとちょっとしたマジックを使った」とInstagramで明かしており、自身のYouTubeアカウントではドローンによって撮影した動画も公開している。

画像は『Dmitry Kokh 2021年12月17日付Instagram「I picture your face in the back of my eyes」、2021年10月17日付Instagram「House of bears.」、2021年9月18日付Instagram「Polar bears are quite a curious guys.」、2021年9月5日付Instagram「Finally getting back from long awaited trip to Chukotka and Wrangel Island.」、2021年9月8日付Instagram「Russian Arctic is an extremely beautiful parallel world.」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)

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