人間には五感(触覚、視覚、聴覚、嗅覚、味覚)が備わっているが、それ以外にもある。それは、「内受容感覚(interoception)」と呼ばれる人体から発せられるメッセージだ。
普段はあまり意識しないかもしれないが、人体はいろいろなメッセージを発している。こうした体の声は心にも影響する。
だが、ロンドン大学ロイヤルホロウェイの研究によると、男性と女性ではこの内受容感覚の受け止め方が違うのだという。
ご飯からしばらくすればお腹が空き、喉も乾いてくる。体を動かせばドクドクと心臓が駆け出し、体温が上がるのを感じる。ストレスを受けて胃が縮み上がるのもわかる。熱くもないのに手に汗をかく。
こうした自分の体が今どのような状態なのか告げる感覚が、「内受容感覚」だ。
普段は意識しないかもしれないが、これはとても大切な感覚だ。
生きるためには何かを食べねばならないが、それができるのはお腹が空いてくれるからだ。体温が上がったとき、上着を脱いだり、日陰に入ったりできるのも、それを感じられるからだ。
このように心身のバランスが崩れていることを伝えてくれる内受容感覚は、生きるうえで不可欠な感覚だ。
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だが、内受容感覚は男女で少々違うらしいのだ。
内受容感覚は男女で異なる
心理学者のジェニファー・マーフィ氏らは、内受容感覚に関する93本の研究をレビューして、心臓・肺・胃から発せられるメッセージの受け止め方が、性別によって違うのかどうか調査。その結果を『The Conversation』に寄稿している。
それによると女性は、男性に比べて、内受容感覚が不正確であることが判明したという。
たとえば、自分の心臓に集中して、その鼓動を数えてもらう。すると女性のカウントは男性ほど正確ではないのだ。
あるいは、測定器に息を吹き込んでもらう。このとき測定器の抵抗を強めると、男性の方がその変化を正確に感じ取る。
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この男女の違いは、課題に取り組んだときの熱心さや、体重・血圧といった体の違いによるものではないという。
こうした男女差がはっきり認められたのは心臓だ。
一方、肺の内受容感覚の男女差はそれほどはっきりしておらず、また胃についてはそもそも違いが見受けられなかった。
ただし、肺と胃の内受容感覚をテーマにした研究の少なさが原因である可能性もあるため、今の時点でははっきりと結論が出せないようだ。
女性の精神疾患にかかるリスクと関連性
こうした男女差は、思春期以降、女性の方が精神疾患にかかるリスクが高い原因とも考えられる。
じつは内受容感覚は心に影響する。それを感じられないと、感情や社会的機能・認知機能に悪影響を与えるのだ。これらはメンタルヘルスを悪化させる要因でもある。
なぜ女性の方が精神疾患にかかるリスクが高いのか? これについて、遺伝子・ホルモン・性格・ストレス・幼少期の困難といった、いくつかの要因が指摘されている。
が、内受容感覚が心に与える重要性を鑑みれば、こちらの方が理由として妥当かもしれないとマーフィ氏らは推測する。
内受容感覚は心の健康に影響
また内受容感覚の男女差は、精神疾患を治療するうえでも重要かもしれないという。
内受容感覚を改善するとメンタルヘルスも改善することを示した研究や、男性が心臓から伝わってくる感覚を利用して感情を処理していることを示した研究があるからだ。
だがそもそも、男女で内受容感覚の感度が違う理由はよくわからない。仮説としては、生理・ホルモンの変化の違い、感情や体の感覚(たとえば痛み)を意識する頻度の違いといったことが挙げられている。
いずれにせよ、内受容感覚をもっと詳しく理解すれば、将来的により良い精神疾患の治療につながる可能性があるとのことだ。
References:Differences in how men and women perceive internal body signals could have implications for mental health / written by hiroching / edited by parumo
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