第二次大戦中にフィリピン海沖に沈んだ駆逐艦を捜索していた研究チームが、世紀の大発見をして戻って来た。それは、これまででもっとも深い場所を泳ぐイカだ。
水深6212メートルにもなるフィリピン海溝付近で観察されたのは、ミズヒキイカの仲間。これまでの最深記録は太平洋での4735メートルだったが、その記録を大きくぬりかえたことになる。
【画像】 これまで発見された中で最も深い場所を泳ぐイカを発見
第2次世界大戦時に就役していた米海軍駆逐艦「USSジョンストン」は、1944年にレイテ沖海戦で沈没し、現在知られている中で最も深い場所に沈む船だ。
潜水艇で駆逐艦を捜索していた研究チームが2021年3月、偶然にも発見したのは、ミズヒキイカ(Maganapinna pacifica)の一種だ。
研究チームは、有人潜水艇 DSVリミティング・ファクター(探検家のヴィクター・ヴェスコヴォがマリアナ海溝の底に潜ったのと同型の潜水艇)を使って、フィリピン海溝の底に潜り、4時間以上かけて探索した。
海底のすぐ上を泳いでおり、撮影した位置が高すぎたため、鮮明な映像を撮影することはできなかったが、ミズヒキイカの象徴的な大きなヒレや独特の泳ぎ方から、イカの特徴を見分けることができ、その正体を特定することができたという。
触手が比較的短かったため、観測したのは幼体ではないかと推測している。
これまで、ミズヒキイカは水深約4735メートルの海で発見されたことがありますが、今回はその記録を1477メートルも縮める最深記録です。
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2021年、フィリピン海溝で観察されたミズヒキイカの写真3枚と、2014年に撮影された同じような大きさの同種のイカの写真(下) / image credit:aladan oceanic and Alan Jamieson
ダンボタコ4匹も発見
また、ダンボの耳のようなひれをもつ、ダンボタコとしても知られる「cirrate octopuses」の仲間、4匹も、同じ水深で発見された。
論文の共著者であるマイケル・ヴェッキオーネは、ダンボダコがこれほどの深海で発見されたのは2度目で、ヒレをはためかせて泳ぐこの頭足類が以前にジャワ海溝で目撃されたのは、ただの偶然ではないことが証明されたとしている。
深海のダンボタコの仲間
Cirroteuthid Octopus Billows Like a Circus Tent | Nautilus Live
フィリピン海溝深くに生息する頭足類
フィリピン諸島東方のフィリピン海西端にあるフィリピン海溝の平均水深は6000メートルを超えており、最大水深は8,500メートル、ミンダナオ島付近では特に深く、最深部は1万メートルを超える。
「今回の探索で、この深いフィリピン海溝に少なくとも数種類の頭足類が生息していることがわかりました」海洋大気庁(NOAA)の動物学者で、スミソニアン博物館で頭足類のキュレーターも務めるヴェッキオーネは語る。
この発見は、いくつかの疑問も投げかけるという。「気圧が海面の600倍にもなる水深1000から6000メートルもの環境で、ミズヒキイカはどのように生理的なコントロールをしているのか?という疑問だ。
2021年に撮影されたミズヒキイカの映像
Magnapinna Squids | NEW Encounter 2021 - Deepsea Oddities
この発見は『Marine Biology』誌に発表された。
References:World's deepest-dwelling squid spotted 20,000 feet under the sea | Live Science / written by konohazuku / edited by parumo
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