お台場こと臨海副都心のど真ん中にひっそりと架かっている「青海橋」の撤去へ向けた準備が進んでいます。今もクルマが走りそうな状態ではあるものの、閉鎖され、現地の案内図からも消されています。極めて短命に終わった橋でした。

車線も街路灯も道路鋲もそのまま でも「廃橋」

東京の「お台場」こと臨海副都心は、1980年代から開発が始まった埋立地エリアです。数々の施設ができていったのも、人によっては“記憶に新しい”ことでしょう。その臨海副都心のど真ん中に、廃止され、いま撤去に向けた準備が進んでいるという橋があります。

それは、りんかい線東京テレポート駅のすぐ東側、有明西運河に架かる「青海橋」です。北側の有明橋(国道357号西行き)、南側の夢の大橋(歩道橋)とともに、運河で隔てられた青海地区と有明地区を結んでいますが、青海橋の両端に道路はなく、柵で閉鎖されています。

とはいえ、舗装された橋の上には、車道の上下線を分ける道路鋲、歩道の縁石、街路灯などがそのまま残り、いまにもクルマが走ってきそうな雰囲気すら感じます。

しかし、有明側の近くに掲示されていた東京都港湾局作成の周辺案内図には、有明橋と夢の大橋の間に青海橋が描かれていません。目の前に架かっているにもかかわらず、「用途廃止したものですので、記載していません」(東京都港湾局)とのこと。

この橋、いったい何のために架けられたのでしょうか。

もともとは湾岸道路のう回路

東京都港湾局によると、青海橋は昭和60年代に開通。当時は橋の両端にも道路があり、湾岸道路(国道357号)に並行するう回路として「混雑緩和に役立った道路」だといいます。

しかし、南側に並行する青海有明南連絡線の建設が決まり、「交通量の増加にともなうネットワーク形成のなかで、そちらが優先されるようになった」(東京都港湾局)のだそう。

青海有明南連絡線は東京ビッグサイト前を通る、「ゆりかもめ」の高架下道路です。青海橋の道路も大型車は通行できたそうですが、青海有明南連絡線の方がより広く、有明のフェリーふ頭や青海の倉庫街に通じ“特大車”が多く走るようなルートで、その規模は全く異なります。

このルートの整備を受け、青海橋は1994(平成6)年度に廃止。道路が接続していた有明西運河の両岸は再整備され、1996(平成8)年に水の広場公園となっています。青海橋自体は歩道として活用していたものの、2016年から閉鎖管理になっているそうです。

なお、撤去は老朽化のためだそう。現在はその設計段階であり、撤去の時期については未定だといいます。

バブル期のただ中に開発が始まった臨海副都心は、バブル崩壊に伴うオフィス中心からの開発計画の見直し、世界都市博の中止など、何度かの方針転換を経て現在に至っています。青海橋に近い複合施設「パレットタウン」も2021年12月から順次閉館し再開発される予定です。30年以上にわたりお台場界隈の変遷を見続けてきた青海橋も、そのなかでひっそりと、姿を消すことになるかもしれません。

道路設備がそのまま残る青海橋(乗りものニュース編集部撮影)。