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テスラはもはやニッチではない

テスラの販売がグローバルで絶好調だ。2021年の生産台数は93万台を超えた。

【画像】日本でどんなモデルが買える?【テスラ4モデルを紹介】 全98枚

この数字が大きいのか、それとも「ほどほど」なのか?

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テスラの売上高はマツダスバルを足したほどのレベルにまで    シャッターストック

自動車メーカー各社の販売台数を見てみると、トヨタがグループ傘下のダイハツと日野を加えて1050万台でトップ。次いで、ドイツフォルクスワーゲングループが888万台となっている。

こうした世界ツートップと比べると、テスラは10分の1といったところなので、中堅どころのメーカーというイメージを持つかもしれない。

ところが、売上高では6兆円を超えている。

これは、日系メーカーでいえば、マツダスバルを足したほどのレベルに達しており、さらに最近の急激な販売増を考えると、近い将来には日産やホンダにも手が届くのも現実的な話に思えてきた。

テスラがこれほどまでに売れているというイメージを、実感する人は日本ではまだ多くないのではないだろうか。

都心では2010年代後半になってから「モデルS」や「モデルX」の姿を見かける機会が増えてきて、2020年代に入ってからは「モデル3」が増えているように思える。

そうした状況が地方部まで広がっているという感じはなく、地方部でテスラを見かけると、まだめずらしいという感じを抱く……。

米中では当たり前のクルマに

では、実際に日本でテスラはどの程度売れているのか?

近年の販売台数の伸びは、アメリカや中国と比べてどうなのか?

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日本でもテスラを見かける機会も増えてきた    シャッターストック

そうしたことを知りたいところだが、それは難しい。

なぜならば、テスラ本社は国別や地域別での販売台数を公表していないため、日本での正確な販売台数は不明だからだ。

肌感覚でいえば、都心でテスラを見かける頻度はメルセデス・ベンツBMWアウディなど主要なドイツ輸入車ほど多くはないが、ルノープジョーなどのフランス車や、アメ車と比べると確実のその数は多いというイメージだろう。

一方で、アメリカでは、ロサンゼルスサンフランシスコなどのカリフォルニア州各地、ニューヨークのマンハッタン、そしてシカゴ、ダラス、マイアミなどの住宅地などで、ごく普通のクルマという感覚でテスラ各モデルに出会う。

中国でも、北京、上海といった大都市圏で、テスラの数が一気に増えたことがしっかり分かる。

なぜ、テスラはアメリカや中国での売上が大きく、日本は「まだまだこれから」という印象を持つのだろうか?

こうした海外と日本との差を感じるのは、テスラのみならず、EV(電気自動車)に対して、海外と日本でなにがどう違うのだろうか?

EVのみのテスラが軌道にのったワケ

筆者(桃田健史)は、テスラが2003年に創業して以来、定常的にテスラを詳しくアメリカ現地取材してきた。

2000年代テスラは、将来を夢見る小さなベンチャー企業という感じで、英国ロータスの「エリーゼ」をベースに台湾製のモーターなどを組み合わせた「ロードスター」のみを販売していた。

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テスラ・モデルS

台数が徐々に増えていき、サンフランシスコ郊外のGMオールズモビルのディーラー元店舗を再利用した本社/工場/販売ショールームを兼ねたオフィスで事業を進めていた。

テスラに、最初の風が吹いたのは、オバマ政権による環境に関する施策/グリーンニューディール政策。これに上手く乗ったことだ。

これは、アメリカ国内で次世代車を生産する企業に、アメリカ連邦政府が10年間の低利子融資をおこなうというもの。

生産拠点の選択には紆余曲折があったのだが、最終的にトヨタが「カローラ」などを生産していたサンフランシスコ郊外の工場を取得した。

テスラ初となる、白紙の状態から企画した「モデルS」が、まずは富裕層向けに徐々に売れ出し、その輪が中間所得層にも広がっていった。

それが、多くの人が手に届きやすい「モデル3」登場によって、テスラファンがコア層から「いつかはテスラ」と考えていた一般層に一気に広がった。

テスラ躍進にスバルとの共通点?

こうして、テスラは「EVのテスラ」ではなく、テスラというブランドを確立したといえる。

いうならば、スバルに近いのかもしれない。

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ソニーの発表したEVコンセプト    ソニー

水平対向エンジンだからスバルを買うというコア層から、ライフスタイル重視のブランドとしてスバルファンが急増したケースと、テスラのケースは、アメリカにおいては似ている。

EVというと、販売達成義務など規制ありきというメーカー目線が強かったが、テスラはEV市場で初めて、ユーザーありきというブランドとなったことが、成功の理由なのではないだろうか。

中国では、新エネルギー車に対する規制があるうえに、アメリカでのテスラブランドイメージが伝播した印象だ。

一方、日本ではまだ、テスラはEVの枠に収まっていて、ライフスタイル系としての一般的に認知されるまでに至っていない印象だ。

今後については、EV市場はメルセデス・ベンツトヨタ、EV事業で先行してきた日産、さらに新規参入を表明したソニーなど、「EVが当たり前」の時代に入っていきそうだ。

そうなると、ますますテスラは技術面や価格のみならず、ブランド価値をどう維持しさらに成長させるのか、ブランド戦略における真価が問われることになるだろう。


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