米調査会社のガートナーが2月1日に公表した半導体消費リポートによると、2021年の世界主要電子機器メーカー上位10社による購入額の合計(速報値)は約2457億ドル(約28兆2000億円)だった。

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アップル、半導体調達に7.8兆円支出

 半導体不足と新型コロナウイルスの影響で、電子機器メーカーの生産体制に混乱が生じた。だが、上位10社の購入額は前年比25.2%増となり、世界半導体消費額全体の42.1%を占めた。

 首位は20年に続き米アップルで、金額は前年比26%増の682億6900万ドル(約7兆8300億円)だった。アップルに次いだのが韓国サムスン電子で、金額は同28.5%増の457億7500万ドル(約5兆2500億円)。

 アップルとサムスンは時折順位が入れ替わるものの、11年以降1位と2位を維持している。21年は2社の後に、「中国レノボ・グループ(聯想集団)」「中国・歩歩高(BBK)」「米デル・テクノロジーズ」「中国・小米(シャオミ)」「中国・華為技術ファーウェイ)」「米HP」「台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)」「米HPE」と続いた。

 このうち金額が急上昇したのは中国のスマートフォンメーカー。OPPOオッポ)やvivo(ビボ)、realme(リアルミー)などを傘下に持つBBKは前年比63.8%増の233億5000万ドル、シャオミは同68.2%増の172億5100万ドルだった。

 米政府が20年9月に輸出規制を強めて以降、スマホに使う高性能半導体の調達が困難になったファーウェイは購入額を大きく減らし、前年の3位から7位に後退した。ファーウェイが失ったスマホ市場のシェアを、BBKシャオミなどの他の中国メーカーが獲得し、消費額を大幅に増加させた。

 ガートナーによると、半導体不足は自動車以外にも、スマホやゲーム機などのさまざまな電子機器の生産制約につながった。その一方で、単価が大幅に上昇。これにより主要電子機器メーカーは例年よりもはるかに多くの金額を投じることになった。

 マイコンや汎用のロジック半導体などは平均単価が15%以上上昇したという。ガートナーの山地正恒アナリストは「半導体不足は、主要電子機器メーカーの二重発注やパニック買いを加速させた。これも消費額が急増した要因だ」と指摘する。

世界半導体市場、25%増の67兆円

 これに先立ち、ガートナーが公表した半導体市場リポートによると、21年における世界半導体メーカーの売上高合計(速報値)は前年比25.1%増の5834億7700万ドル(約66兆9500億円)だった。業界の総売上高が5000億ドルを超えたのは初めてだという。

 背景には自動車や電子機器分野での強い需要と、物流費や原材料費の高騰による平均単価の上昇があるとガートナーは分析する。さらに同社は、高速通信規格「5G」に対応したスマホ市場も半導体収益の増大を後押しした、と指摘する。「20年に2億5000万台だった5G対応スマホの生産台数は、21年に5億5000万台と、2倍以上になった」(ガートナー)

 これにより、5Gスマホ向け半導体を手がける、米クアルコムと台湾・聯発科技(メディアテック)の売上高がそれぞれ前年比で52.3%増と58.8%増になった。

半導体市場の規模、10年以内に1兆ドルに

 米ウォール・ストリート・ジャーナルは、「半導体業界は製品需要を満たすことが困難で、供給不足が続いている。このことで半導体生産への関心が高まり、政府による補助金や前例のない投資額を呼び込む動きが出ている」と報じている。

 こうした中、業界関係者は、市場規模が今後10年以内に2倍になると予測する。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、半導体受託製造大手グローバルファウンドリーズのトーマス・コールフィールドCEO(最高経営責任者)は「市場が5000億ドル規模に成長するまで50年がかかった。だがあと8~10年で1兆ドルに到達するだろう」と述べた。

 (参考・関連記事)「米企業への半導体供給が危機的状況、米商務省調査 | JDIR

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(写真:アフロ)