日本ではレアな旅客機として知られるボーイング社の単通路旅客機「757」。このなかには非常に珍しい改造を施され、珍しい任務に就く機体が存在します。どのような機体なのでしょうか。

1983年に5機目の757として…

2005(平成17)年に生産終了となったアメリカ・ボーイング社の単通路旅客機「757」。製造機数は1000機を超え、海外では好調な売上を記録した一方で、日本の航空会社での採用はなく、我が国では飛来することが珍しい「レアな旅客機」に分類されます。

こういった「日本ではレア機」757には、なかでもとりわけレアな用途に使用されている機体があります。機齢38年の757-200、機番「N757HW」です。

同機は1983(昭和58)年、かつてアメリカにあった大手航空会社、イースタン航空でデビューしました。この機は757の製造5機目、最古参の機体のひとつです。その後いくつかの民間航空会社を経て、2005(平成17)年に航空関連などの先端技術を手掛けるアメリカのハネウェル・エアロスペース社に転籍し、現在の機番が与えられました。

そしてこの機は、ハネウェル社に転籍後大きな改修を受け、特徴的な外観をもつようになりました。胴体右側の前方に、主翼が中途半端な位置で切断されたような、なんとも不思議な形状の突起物が設置されたのです。

胴体前部の変な突起…なぜ?

ハネウェル社に導入されたボーイング757-200「N757HW」は、同社が開発するさまざまな最先端の開発技術をテストするための飛行試験機(テストベッド)として導入。現在同社のテスト機のなかでは、最大サイズの主力機です。

同機では、たとえば機内高速Wi-Fiや先端的な操縦装置などがテストされています。なかでも際立ったテスト対象製品が、航空機用エンジンです。先述の「不思議な形状の突起物」は、エンジンをここに吊り下げ、空中で動作試験を実施するための機構「パイロン」です。

ちなみに、こういった機構をもつ旅客機ベースの試験機は、ほかにもあります。たとえば、アメリカのプラット・アンド・ホイットニーでは「ジャンボ・ジェット」ことボーイング747の“コブ”にあたる、2階席右側後部にパイロンを取り付けたテスト機を導入。このほか、イギリスロールス・ロイスでも、同様のレイアウトをもった747-400の導入を発表しました。

なお、2022年で機齢39年を迎える「N757HW」ですが、まだしばらくは現役テスト機として活躍が予想されます。同社は公式SNSで2022年1月、同機の再塗装が完了したことを公開。ハネウェル・エアロスペース社の担当者も「その比類なき性能ゆえ、今後も最も多忙な機体の1機であり続けるでしょう」とコメントしています。

ハネウェル・エアロスペースの「N757HW」(画像:Honeywell Aerospace)。