日本時間2月8日夜に第94回アカデミー賞のノミネーションが発表され、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(公開中)が日本映画として史上初めて作品賞にノミネートされる歴史的偉業を達成。また、監督賞と脚色賞、国際長編映画賞の計4部門にノミネートされ、西島秀俊らキャスト陣からも喜びのコメントが到着した。

【写真を見る】『ドライブ・マイ・カー』が快挙達成!第94回アカデミー賞4部門にノミネート

村上春樹の短編小説を原作にした『ドライブ・マイ・カー』は、昨年7月に行われた第74回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門に出品され、日本映画初の脚本賞を受賞。また独立賞である国際映画批評家連盟賞など3つの賞に輝き一躍国際的な注目を浴びることに。

昨年11月には全米で劇場公開され、アカデミー賞の前哨戦となるニューヨーク批評家協会賞やロサンゼルス批評家協会賞では名だたる有力作を抑えて作品賞を受賞。先日発表された第79回ゴールデン・グローブ賞では、日本映画としては62年ぶりの非英語作品賞に輝いた。

日本でも昨年8月の公開以来ロングラン上映を続けており、先ごろ発表された第95回キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画作品賞をはじめ5つの賞を受賞するなど日本国内の映画賞も席巻。同賞の授賞式で濱口監督は「これほど広がっていることはとても驚いていますし、心からうれしく思っています」と述べ、「賞によって作品が変わるわけではないので、自分たちがなにができてなにができなかったということを自分たちの心に留めておくことが大事と思い、すばらしいことがあればご褒美みたいなものだと思います」と語っていた。

日本人監督がアカデミー賞の監督賞にノミネートされるのは『砂の女』(65)の勅使河原宏監督と『乱』(85)の黒澤明監督以来36年ぶり、史上3人目の快挙。また脚色賞に日本映画がノミネートされるのは史上初めてのことで、国際長編映画賞(旧・外国語映画賞)への日本映画のノミネートは是枝裕和監督の『万引き家族』(18)以来3年ぶり14作品目。第81回アカデミー賞では滝田洋二郎監督の『おくりびと』(08)が外国語映画賞(当時)を受賞しており、受賞を果たせば13年ぶり2作品目(名誉賞を除く)となる。

主演を務めた西島秀俊は、この報せに「濱口監督、大江崇允さん、スタッフの皆様、心からおめでとうございます」と賛辞を述べ、「この嬉しい報せと共に『ドライブ・マイ・カー』がより一層多くの方々に届く事を願っております」と、作品がより多くの観客に届くことに期待を寄せる。また、見事なアンサンブルを見せた共演者の三浦透子、岡田将生、霧島れいからも、それぞれの言葉で喜びを噛み締めた。

一方、前作『未来のミライ』(18)で第91回の長編アニメーション賞にノミネートされた細田守監督の『竜とそばかすの姫(21)は、前哨戦のアニー賞でインディペンデント作品賞や監督賞など5部門にノミネートされたものの惜しくもノミネートを逃す結果に。同部門には他にも『映画 えんとつ町のプペル』(20)、『ジョゼと虎と魚たち』(20)、『宇宙の法 エローヒム編』(21)、『映画大好きポンポさん(21)、『漁港の肉子ちゃん(21)がエントリーしていたが、いずれもノミネートには至らなかった。

最多ノミネートを獲得したのは作品賞や監督賞など11部門で12ノミネートを果たす圧倒的な強さを見せたジェーン・カンピオン監督のNetflix映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(配信中)。次いでドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『DUNE/デューン 砂の惑星(21)が技術部門を中心に10部門にノミネートされた。

第94回アカデミー賞の授賞式は、日本時間3月28日(月)に行われる。

<コメント全文>

西島秀俊

「この度『ドライブ・マイ・カー』が米アカデミー賞4部門に選出された事を嬉しく思います。

そして濱口監督、大江崇允さん、スタッフの皆様、心からおめでとうございます。

世界の分断から人々が繋がりを取り戻す希望の道標が、この美しい魂の再生の物語には示されています。

この嬉しい報せと共に『ドライブ・マイ・カー』がより一層多くの方々に届く事を願っております」

●三浦透子

「作品に関わった全ての皆さん、4部門のノミネート、おめでとうございます。とてもとても嬉しいです。日本映画の代表としてアカデミーの舞台に臨めること、本当に名誉なことと思います。そしてそのような作品に関わることができた自分は、幸せ者だなと改めて実感しています。感謝の気持ちでいっぱいです」

岡田将生

「米国アカデミー賞ノミネートとのこと、俳優部の一員としてとても嬉しく思います。

この作品に関わった全ての方々、本当におめでとうございます。

これをきっかけに更にこの作品がたくさんの方々に見ていただけたら嬉しく思います」

●霧島れいか

「ノミネート決定おめでとうございます!

素晴らしい報告にやったー!と声をあげガッツポーズをしました。

この作品が国を越えてたくさんの方の心に響いているということなんだと、感謝と嬉しい気持ちで溢れています。濱口監督、キャスト全員、そしてこの映画に関わった全ての方々と喜びを共有したいです」

文/久保田 和馬

勅使河原宏、黒澤明に続く日本人3人目の監督賞候補になった濱口竜介監督/[c]2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会