松竹と東映が初タッグを組み、誰もが知る“巨大怪獣”の誰も知らない“死んだあと”を描く映画『大怪獣のあとしまつ』(公開中)で、怪獣の死骸の処理を任され、無理難題に立ち向かう主人公を演じた山田涼介。これまでにない、まったく新しい切り口の特撮映画となるが、想像力を膨らませて挑む怪獣相手の芝居にも思いきりぶつかることができたという。経験を積み重ねることの大切さを実感すると共に「僕の俳優人生にとっても必要な1作になった」という本作への想いや、自身の憧れの人までを語ってもらった。

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■「アラタとしてブレずに、1本芯を通して生き抜こう」

本作は、「倒された怪獣の死体処理はどうするのか?」という新たな視点で怪獣を見つめる空想特撮エンタテインメント。河川の上に横たわる巨大な死体は腐敗が進み、ガス爆発の危機が迫っていることが判明。しかし首相や大臣らは前代未聞の難問を前に、不毛な議論を重ね右往左往するばかり。絶望的な時間との闘いのなか、首相直轄組織・特務隊の隊員である帯刀アラタは大怪獣の死体処理の任務を与えられ、極秘ミッションに挑むことになる。監督・脚本は「時効警察」シリーズなどで知られる三木聡が務めた。

アラタ役に抜てきされた山田は「僕の俳優人生はこれからも続いていくと思うんですが、そのなかで必要な1作品になるんじゃないか」という予感とともに本作に飛び込んだという。そう思わせてくれたのは「本作は、この角度から攻めたことはなかったなという変化球のストーリーで、怪獣やそれを取り巻く人々を描いている。台本を読ませていただいて、単純に『おもしろいな!』と思いましたし、これを三木監督が撮るとしたら絶対におもしろいことになるだろうと感じました」と語るとおり、脚本と監督の相性のよさだという。

そしてアラタという、キリリとした表情でミッションに立ち向かう頼れる男という役柄も、山田にとっては新鮮なものだった様子。アラタと周囲の個性的なキャラクターがどう交わっていくのかにも興味が湧いたとのことで、「ドラマなどでコメディ作品に出演させていただいたことはありますが、“僕は一切ふざけていないけれど、状況がものすごくふざけている”という作品はいままでやったことがなくて。素直に、お客さんとしてこの作品を観てみたいなと思いました。アラタはとてもまじめな青年だけれど、周りがものすごくふざけてくれる(笑)。アラタを演じるうえではまじめな特務隊員としてブレずに、1本芯を通して生き抜こうと強く思っていました」と語った。

西田敏行やふせえりらベテラン勢もコミカルな表情をたっぷりと見せてくれるが、「アラタはふざけられない。周りがすごく楽しそうで乗っかりたい気持ちもありましたが、そこをグッとこらえて凛々しい男を演じました」と微笑む。

■「本当に怪獣がいるかのように想像できる、特殊能力があります(笑)」

劇中には最全長380m、全高155mにおよぶ、邦画史上最大級の怪獣が登場。アラタは怪獣の死体の上を歩いて調査をしたり、思わぬアクシンデントに見舞われたりと、怪獣相手に奮闘する。大怪獣の造形は、「平成ゴジラ」シリーズや「ウルトラマン」シリーズなど数々の怪獣造形で知られる若狭新一が手掛けている。

大規模なVFX撮影やグリーンバック撮影、ワイヤーに吊られてのアクションにも挑んだ山田。『暗殺教室』(15)や『鋼の錬金術師(17)などに出演してきたこともあって、「これまでもVFXを使った作品に携わらせていただくことが多かったので、『怪獣の大きさはこれくらいで、目線はこれくらい』と言われたら、なんとなく想像することができる。特殊能力を持っているんです」とにっこり。「初めてこういった特殊な撮影をした時は戸惑いましたが、これだけは経験しないと身につかないこと。改めて、経験って大事なんだなと思いました」と継続の重みを噛み締める。

怪獣の死体によじ登るシーンについては「怪獣の表皮ってこういう感じなんだ~と思いながら“よじよじ”って登っていました」と楽しそうに笑いつつ、「怪獣映画に自分が携われるとは思っていませんでした。そういった驚きはありましたが、今回は特に怪獣が死んでしまっていますから!死んでいる怪獣相手の怪獣映画という点でも、なかなかできない経験です。小さなころには特撮ものも観ていましたが、また一風違った特撮作品が生まれる時代が来たんだなと感じました。内容としてもパンデミックを想起させるところもあり、奇しくもいまの時代にマッチしている。乗り越えなければいけない問題に直面しているいま、誰もが決して他人事には思えない作品になっていると思います」と力を込める。

■「アイドルと俳優、やっぱり仕事って難しい…。憧れの存在はレオナルド・ディカプリオ

怪獣を倒すより“あとしまつ”をするほうが意外と厄介で難しい。本作には「倒すより、ムズくね?」というキャッチコピーがつけられているが、山田にとって「思った以上に難しい」と実感していることはあるだろうか。

すると「『仕事ってムズくね?』と思います」と告白した山田。「俳優とアイドル業をやらせていただいていて、ライブをやっている時期と作品の撮影が重なったりすると、前日までは俳優で殺し屋の役を演じていても、次の日にはキラキラとしたステージに立たなければならかったり。スイッチを切り替えるのが難しいなと感じることはあります」と語る。

難題に立ち向かうアラタは、ヒーローという言葉がぴったりの主人公だ。山田にとっての憧れの存在は、自身の父親とレオナルド・ディカプリオなのだとか。「ずっと彼の作品は観てきていますが、ちょうど『演技とは…』と自分のなかで悩んでいた時期に(ディカプリオ主演の)『華麗なるギャツビー』を観たことがあって。あの作品でディカプリオは主人公なのに、冒頭30分間、出てこないんですよ!やっと出てきたなと思ったら、最初に発したのが『I'm Gatsby.』というセリフ。ものすごくかっこいいし、『これこそが主人公で、ヒーローなんだな』と思いました。僕は泥臭く生きているような役柄を演じることが多く、なかなかギャツビーのようなかっこいい役柄を演じる機会はないんですが(苦笑)。演技面でも憧れるようなものがありました」と目を輝かせる。

昨年はジャニーズでは初となるYouTubeのゲームチャンネル「LEOの遊び場」をスタートした山田だが、チャンネル名の由来もレオナルド・ディカプリオだという。

「小さなころからずっとゲームが好きで、自分のアカウントもすべて“LEO”でやっていました。その名前に愛着もあるし、ゲームのなかで知り合った友達など、僕のことを“LEO”として認識している人もいっぱいいて。事務所とも話して、山田涼介としてではなく“LEO”としてゲームをやることになりました」。続けてチャンネル開設までには「苦労もあった」と切りだし、「開設までに1年ぐらいはかかりました。事務所が『プロと対等にやりあえるんだったらやってもいいんじゃないか』と実力を認めてくれたから、実現したのかなと。もともと『ゲームの仕事はないですか?』と話してはいたんですけど、なかなか来るものではなくて。そこで、ジャニーズのなかではたぶん誰も開拓してないところで先陣を切っていこうと開設にいたりました。ゲームの大会にも出させてもらったり、伸び伸びとやらせてもらっています」と好きなことを形にする情熱を語っていた。

取材・文/成田おり枝

『大怪獣のあとしまつ』で主演を努めた山田涼介/[c]2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会