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張CEO「おわび」から始まった会見

執筆:Kumiko Kato(加藤久美子)

2009年に販売不振によって日本市場から撤退した韓国HYUNDAI(ヒョンデ)が再び日本市場へ再参入することが2月8日発表された。

【画像】日本を走るヒョンデ2車種 どんな見た目?【ネッソ/アイオニック5のディテール】 全132枚

ヒョンデ? ヒュンダイから名前が変わった?」と思われる方も多いだろう。

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日本再参入の記者会見は、ヒュンダイ・モーター・カンパニーの社長兼最高経営責任者(CEO)を務める張在勲(チャンジェフン)氏の日本語による「お詫びと反省」メッセージから始まった。    加藤博人

「HYUNDAI」の名称は変わっていないが、その読み方を本国と同じヒョンデに統一したというわけだ。

日本ではHYUNDAIをローマ字読みにした「ヒュンダイ」が正式名称とされていたが、2020年秋頃から「ヒョンデ」に統一されてきた。

8日におこなわれた記者会見はリアル会場とオンラインでの2系統で進行し、筆者は会場に足を運んだ。

記者会見はヒュンダイ・モーター・カンパニーの社長兼最高経営責任者(CEO)を務める張在勲(チャンジェフン)氏の日本語による「お詫びと反省」メッセージから始まった。

これは予想外の意外な展開だったが、冒頭からなかなか熱のこもった内容で再参入への並々ならぬ決意を感じさせるものだった。

「販売不振による撤退から13年ぶりの再参入」ということで、ヒョンデ側もかなり気をつかったと思われる。

要約すると以下の内容となる。

・2010年に日本市場から撤退したことはヒョンデにとって大きな痛みだった。

・販売不振の理由は、日本のお客様ひとりひとりの声に向き合っていなかったことにあると反省。

・期待を寄せて頂いていたお客様には大きな迷惑を掛けた。

そして、韓国の「迷途知返」(一度道を誤った後に正しい道に戻って改める)ということわざを用い、かつての日本市場での販売について「道を誤った」とし、今回の再参入を「正しい道に戻って改める」と表現している。

かつての「ヒュンダイ」 日本でどれくらい売れた?

2001年ヒョンデが日本市場での乗用車販売を始めて間もない2003年4月からNHK BSで「冬のソナタ」の放送が始まったことを契機に、日本は第一韓流ブームを迎えることになる。

「冬ソナ」に代表される韓流ドラマが大ヒットし、日本の中高年女性を中心にヨン様ペ・ヨンジュン)ブームで盛り上がっていた。

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2009年2月に導入された大型バスのヒョンデユニバース」    ヒョンデ

2002年には日韓ワールドカップが開催され、韓国の自動車メーカーであるヒョンデもその波に乗った様々なプロモーション活動を展開した。

なお、「冬のソナタ」においてヒョンデソナタはパク・ヨンハ演じるサンヒョクが乗るクルマとして登場する。

いっぽう実際韓流トップスターのペ・ヨンジュンことチュンサンが乗るのは白いフォードエクスプローラーで、日本ではこちらの方が非常によく売れたという。

結局、当時のヒュンダイ車は思ったように販売が伸びず、残念ながら2001年から約1万5000台が販売されたものの2009年12月に乗用車の販売から撤退することになった。

なお、2009年2月に導入された大型バスのヒョンデユニバース」は販売が続けられている。

そして現在も日本のオーナーによって大切に乗り続けているヒョンデ車は約600台。

張氏のメッセージによると、それらのヒョンデ車は撤退後から現在まで三菱系ディーラーなど全国60以上のサービス拠点で年1回の点検をおこない日本のオーナーとの絆を守って来たとのことである。

2年前から日本再上陸の噂が絶えなかった

近年、ヒョンデの日本市場再参入については何度かウワサをされてきた。

最初は2020年2月の終わり頃で、2月26日~28日まで東京ビッグサイトで開催された「第16回国際水素・燃料電池展 ~FC EXPO 2020~」に「ヒョンデ・ネッソ」が展示されたことに依る。

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ヒョンデ・ネッソ    加藤博人

展示車両にはすべて日本のナンバーが付けられていたことから、「ヒュンダイ再上陸?」と盛り上がっていたのだ。

同年4月にはヒョンデ・グローバルブランドアンバサダーである「BTS」(防弾少年団)が出演する水素キャンペーンの動画配信を開始。

6月には「現代自動車ジャパン」がツイッターにて公式アカウントを開設し、同時にエニカでネッソの貸し出しを開始した。

その後、9月には代官山T-SITEにて一般向けの展示会も開催され、すでに日本語のカタログも用意されていたことから、「日本上陸は秒読み!」と思われていたのだが……。

結局そのタイミングでの日本再参入の発表はされなかった。1年4か月が経過し、ついに2022年2月に正式に日本参入が発表されたのである。

2月8日の記者発表で明らかにされたのは主に以下の2点である。

1 日本で販売されるのはFCEV燃料電池車「NEXO」(ネッソ)とBEV「IONIQ5」(アイオニック5)の2車。今後もZEV(ゼロエミッションヴィークル)のみを販売する予定。

2 試乗、見積もり、注文、決済~デリバリーまでオンラインで完結。2022年5月オーダー受付開始、同7月からデリバリー予定

価格は消費税込みで
ネッソ:776万8300円
アイオニック5 479万円~589万円(4グレード展開)

なお、一般社団法人次世代自動車振興センターの公式サイト(2022年2月8日)において「令和3年 CEV事業補助金交付額」としてアイオニック5(4グレード同一)は42万円、ネッソは210万5000円と掲示されている。

なぜ今この時期に再参入を発表したのか?

今、この時期に日本に再参入するにあたって、ヒョンデ・モビリティ・ジャパン株式会社はその理由を、「世界規模で高まる環境配慮への意識や、ひとりひとりが個人の価値観を重視した商品選択をおこなう傾向の高まりを背景に日本社会の変化に対応する商品としてZEV 2車種を投入」としている。

そして、日本での販売を開始した2001年から20年、撤退してから13年が経過しており、韓国や韓国車へのイメージ、実際の韓国車の品質についても当時と今とでは様々なことが大きく変化している。

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「韓国や韓国車に対するかつてのイメージが薄く、良いものは良いと自分で判断し選択できる方々にまずは、ネッソとアイオニック5を体験していただきたいと考えています」(ヒョンデ)    加藤博人

今回の再参入に関しては、これら韓国や韓国車に対するイメージの変化があったことも大きく影響しているはずだ。

ヒョンデ・モビリティ・ジャパンではその部分をどうとらえて、どのように期待を寄せているのだろうか?

複数のPR担当者に聞いた答えをまとめてみた。

ヒョンデが最初に日本での販売を開始して20年が経過しました。この20年でヒョンデ車の品質は飛躍的に向上しましたが、確かに2000年初頭のヒョンデ車の品質では、日本のお客様が求めるレベルに対応できていませんでした」

「新たに導入するZEVのネッソやアイオニック5はかつてのイメージを払拭し、高い品質と性能を持ったクルマとして日本のお客様に十分な自信をもってお勧めできると考えています」

ターゲットとなる世代はデジタルネイティブ、スマホネイティブと言われる若い人たちでクルマ選びから試乗予約、購入やデリバリーまでのすべてをオンラインで完結するスマートな顧客体験に対して抵抗がない世代の方々です」

「韓国や韓国車に対するかつてのイメージが薄く、良いものは良いと自分で判断し選択できる方々にまずは、ネッソとアイオニック5を体験していただきたいと考えています」

なお、他にはない新しい試みとしてネッソやアイオニックはカーシェアプラットフォーム「エニカ」で体験することも可能。

2022年内に「アイオニック5」100台、「ネッソ」20台がエニカ・オフィシャルカーとして投入される予定だ。

ネッソはすでにエニカ・オフィシャルカーとして展開が始まっており、アイオニック5も2月下旬からサービス開始を予定している。

韓国車に抵抗がある人もない人も、一度体験してみるのも良いかもしれない。


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