北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは、今月1日の旧正月当日の午前9時過ぎから、「偉大な勝利の年2021年」という番組を放映した。1時間40分にわたって金正恩総書記を礼賛し続けるというこの番組、冒頭には白馬に乗って海辺に佇む金正恩氏が、最後には白馬に乗って疾走する金正恩氏が登場する。

この番組だが、北朝鮮の若者たちには鼻で笑われているようだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)の教育部門に勤務する情報筋は、番組を見た若者たちが「最高尊厳(金正恩氏)は乗馬はうまい」との反応を示す一方で、「あんないい馬だったら自分でも乗れる」と皮肉っていると伝えた。

情報筋も、馬に乗る金正恩氏の姿を「かっこいいというより、ただの独不将軍(お山の大将)だ」と皮肉った。共に番組を見ていた友人3人も、その言葉に首を縦に振ったという。こうした発言が当局に知れたら、どんな不利益を被るかわからないが、それを知りつつも気持ちを抑えられないのだろう。

知識人の中には、コロナの長期化で民政が危機に瀕しているのに、黄金色の鞍をつけて白馬に乗って美しい森の中を道を楽しそうに走る金正恩氏の姿が、人民の指導者としてふさわしいのかを疑問を呈する者もいたとのことだ。

両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)の情報筋は、2020年の正月にも同様のシーンのある番組が放送され、当時は関心を集めなかったものの、今回また乗馬シーンが放送されたことで、若者たちが関心を見せたと伝えた。

とは言っても、プロパガンダ一色の番組そのものには関心がなく、金正恩氏、李雪主(リ・ソルチュ)夫人、妹の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党宣伝扇動部副部長、玄松月(ヒョン・ソンウォル)党宣伝扇動部副部長が乗っていた白馬は輸入された高いものに違いない、値段はいくらだろうか、一般庶民はあんなものに一生乗れないなどと、批判的な受け止め方をしていたとのことだ。

北朝鮮が2月1日に公開した記録映画の中の金正恩氏(朝鮮中央テレビ)