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確定申告とは、1年間に得た所得を計算して税務署に申告することで、税金を納めたり、払いすぎた税金の払い戻しを受ける手続きのこと。年金生活者の場合は、年金等の収入が年間400万円を超えたり、公的年金以外の所得(パートやアルバイトも含む)が年20万円(給与収入だと75万円)を超えると確定申告が必須になります」

そう語るのは、土屋会計事務所の税理士・土屋裕昭さんだ。それ以外の年金受給者は確定申告の“必要”はないが、所得税を払っている場合確定申告によって“払いすぎた税金が戻ってくる”ことはあるという。

所得税は、収入から各種控除を引いた“課税所得”にかかります。この所得の金額を減らすことができるのが“所得控除”です」

■市販漢方薬の購入費も控除の対象になる「セルフメディケーション税制」

「よく使われるのは、医療費控除。年間10万円を超えた分の医療費を所得から差し引くことができます。また、総所得金額等が200万円未満の人の場合は、10万円ではなく総所得金額等の5%を超えた金額を、医療費控除額として差し引くことができるのです」

たとえば、年金を月20万円もらっている65歳以上の人の場合、年間の収入240万円から公的年金等控除110万円を引いた、130万円が総所得金額になる。この5%にあたる6万5,000円を超えた医療費が控除されるのだ。年間20万円の医療費を払った場合、控除額13万5,000円の5%である6,750円が支払った所得税から戻ってくる。住民税にも適用され、控除額の10%である1万3,500円が翌年6月以降に支払う住民税の合計から天引きに。

ぜひ活用したいのは、「セルフメディケーション税制」と、「寡婦(夫)控除」だと土屋さん。

’17年からスタートしたばかりで知らない人も多いセルフメディケーション税制は、ドラッグストアで購入した特定医薬品の合計額が税込み1万2,000円を超えた分を所得控除できるというものです」

家族全員の分を含めることができ、花粉症の薬や漢方薬、湿布薬も対象なので利用しやすい。ただし、医療費控除との併用はできないので、注意が必要だ。

「もう一つは『寡婦控除』。ご主人が亡くなった後、婚姻しておらず合計所得金額が500万円以下の場合などに適用され、27万円の所得控除を受けることができます」

所得税を5%払っている人ならば、27万円の5%である1万3,500円所得税が安く。住民税を払っている場合は、住民税も2万7,000円安くなる。

確定申告の期限3月15日は所得を申告し、納税する人の締切り。守らなければペナルティが発生しますが、還付はこの期限に限らず申告できます」

次のページからはよく使われる控除を紹介。確定申告でお金が戻ってくるチャンスがあるのはこんな人だ。

■よく使われる控除11選【前編】被災地への義援金も控除の対象に!

【病院にたくさん行った】医療費控除

年間で10万円を超えた分の医療費が所得控除される。また総所得金額等が200万円未満の人は、所得の5%を超えた医療費が控除対象に。保険診療の医療費だけでなく、自由診療の入れ歯インプラント手術の費用、はりなどの施術の対価(疲れを癒すなど治療に関係ないものは含まれない)、医療機関までの公共交通機関を利用した通院費、緊急時のタクシー料金のほか、訪問看護、通所リハビリなどの一部介護費用なども医療費控除の対象。

【指定の市販薬を1万2,000円超購入した】セルフメディケーション税制

健康診断・予防接種・がん検診などを受けた人が、1年間に「スイッチOTC医薬品」などの対象医薬品を年間1万2,000円以上購入した場合に、超えた分を所得控除することができる(上限8万8,000円)。確定申告する本人と生計を共にする家族や親族の分も含められる。令和3年分から対象となる医薬品が拡大。葛根湯など漢方薬アセトアミノフェンを含む解熱剤の購入でも控除を受けることができる。

【義援金を送ったり寄付をした】寄附金控除寄附金控

国が指定する団体へ2,000円超の寄付をしたときに「寄附金控除」を受けられる。対象となる団体には国・地方公共団体、財務大臣指定の公益法人、学校法人、社会福祉法人、認定NPO法人などがある。災害にあった自治体への義援金も対象。「年間の寄附金の合計額」か「その年の総所得金額等の40%」のどちらか低いほうから2,000円を引いた額が、所得控除される。

生命保険料を払っている】生命保険料控除

控除を受ける人が支払う、生計が同じ家族の生命保険料は全額「生命保険料控除」の対象に。ただし契約した時期で適用範囲と限度額が異なるので確認を。’11年12月31日までに契約した「生命保険」「個人年金保険」は、それぞれ最高5万円(計10万円)。’12年1月1日以降の契約では「生命保険」「年金保険」「介護保険」がそれぞれ最高4万円、計12万円まで控除できる。

【台風やゲリラ豪雨で家が壊れたり、現金や家具が盗まれた】雑損控除

地震・台風・豪雨などの自然災害や、火事・盗難など自分に過失のない場合の損害は控除される。住宅、家財などの財産(別荘や30万円超えの貴金属、骨とう品は含まれない)は「損失額-(総所得金額等×10%)」か「災害関連の支出-5万円」の多いほうを控除できる。控除額が大きい場合、最大3年間繰り越すことも可能。所得や被害によってはより節税できる「災害減免法」が適用になる場合も。

■よく使われる控除11選【後編】肩代わりして払っている子供の年金も控除対象!

【配偶者と死別または離婚した】寡婦(夫)控除

配偶者が死亡したり離婚した場合などに受けられる。合計所得金額が500万円以下で、離婚・死別(生死不明含む)後に婚姻をしておらず、離婚の場合子ども以外の扶養親族がいるなどの条件に当てはまると、一律27万円の寡婦控除が受けられる。

バリアフリーリフォーム工事をした】バリアフリーリフォーム減税

バリアフリー改修工事をした場合に、年齢や工事内容などの諸条件を満たすと、改修工事の標準的な費用(最高200万円)の10%を所得から控除できる。

【家を買った】住宅ローン控除

一戸建て・マンションを購入し住宅ローンを組んだ人は最長13年間「住宅ローン控除」を受けることができる。所得が3,000万円以下で、床面積が40平方メートル以上であることなどの諸条件がある。

【5年以上住んでいるマイホームを売却したが、住宅ローンが残り損が出た】譲渡損失の繰越控除

売却価格がローンの残高を下回っていたときに、5年超マイホームとして使用したなど諸条件を満たすと「譲渡損失の繰越控除」の申告ができる。

【子どもの年金を支払っている】社会保険料控除

年金からの天引き以外に、自分や生計を一にする家族の社会保険料(年金や健康保険料など)を支払っている人は、全額を「社会保険料控除」として所得から控除できる。

ふるさと納税をした】寄附金控除

年金受給者でも、ふるさと納税をすることはでき、寄附金額から2,000円を除いた額がその年の所得税と翌年の住民税から差し引かれる。ただし、ふるさと納税の実質的な負担額を2,000円にとどめることができるかどうかは年金収入による。

とはいえ、期限内に申告したほうが、申告忘れは防げそう。払いすぎた税金を取り戻して、心にも財布にもゆとりをつくろう。