アメリカ在住のウニ漁師が先月、日没後のサンタバーバラ海峡で誤ってボートから転落した。Tシャツと短パンだけの姿で冷たい海に落ちた男性は5時間泳ぎ続けた後、海上の石油プラットフォームにたどり着いて無事救出されたという。男性は「アザラシが一緒に泳いでくれたおかげで助かった」と語っている。『ABC7』などが伝えた。

カリフォルニア州在住のウニ漁師スコット・トンプソンさん(Scott Thompson)は今年1月、同州沿岸部サンタバーバラサンタクルーズ島の間にあるサンタバーバラ海峡でボートから転落した。日没後だったにもかかわらず安全確認をせずに身を乗り出した際、強い波に襲われてバランスを崩したという。急いでボートに戻ろうと全力で泳いだが、ギアが入ったままの状態だったため追いつくことはできなかったそうだ。

Tシャツと短パンだけの姿で冷たい海に落ちてしまったスコットさんは、当時の様子をこのように振り返った。

「もうボートに戻れないと分かった時、かなり深刻な状況だと感じてパニックに陥りました。寒さで体が冷えてきて、きっとこのまま死ぬんだな…と思いました。でも娘や息子が私のいないところで育つ姿や未亡人になった妻の姿を想像して『とにかく泳ぎ続けろ、家族のもとに帰らなければならないんだ』と自分に言い聞かせました。そして岸よりも近い石油プラットフォーム(海上石油掘削施設)を目指すことにしたのです。」

サンタバーバラ海峡にはホホジロザメオオメジロザメイタチザメなどの肉食動物が生息しており、暗い夜の海で遭難したスコットさんにとって圧倒的に不利な状況だった。しかしそんな中で奇跡のような出来事が起こったとして、スコットさんは次のように明かしている。

「サメに襲われることなど考えていませんでしたが、泳ぎ続けてしばらくして水しぶきの音が聞こえて。そこには中型のゼニガタアザラシがいたのです。水の中に入ったアザラシは私に近づいて犬のようにすり寄ってきました。その時、どんな困難な状況でもきっと助かるという神のお告げだと思いました。まるでアザラシが『大変だけど頑張って』と応援してくれているようでした。アザラシに話しかけたり、歌を歌ったり、ジョークを言ったりしている間は自分の状況を忘れることができたので本当に助かりました。」

凍えそうになりながらも5時間ほど泳ぎ続け、ようやく「Platform Gail(ゲイル海上石油掘削施設)」にたどり着いたスコットさん。プラットフォームの乗組員は彼を救出してシャワーで体を温めてくれたそうだ。そして沿岸警備隊によって病院に搬送され、低体温症の治療を受けた。

スコットさんが乗っていたボートサンタクルーズ島から5マイル(約8キロ)東にあるアナカパ島で発見されたのち、曳船の乗組員によって回収された。

海峡の監視活動を行っている海兵隊員のポール・アマラル氏(Paul Amaral)は、スコットさんが無事だったことに驚きこのように述べている。

「彼がこの試練を乗り越えたことは本当に信じられないことです。海に入る前に準備をしてウェットスーツを着ていてもプラットフォームまで泳ぐなんて恐ろしいことですから。夜に、しかも短パンとTシャツで水に入るなんて想像できません。月もないし真っ暗ですからね。」

画像は『The Mirror 2022年2月16日付「Man who fell into ocean claims he was ‘helped by seal’ during five-hour swim to safety」(Image: Newsflash)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 上川華子)

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