新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大で、保育士や園児が感染し、休園となる幼稚園・保育園が相次いでいます。特に、共働き世帯にとって保育園が休園になると、保護者は仕事の調整など、普段と違う生活を余儀なくされます。かくいう筆者も、子どもが通う保育園が休園となりました。保護者は休園期間をどのように乗り切ったのか、また休園になったからこそ気付けたことなど、筆者の体験も含め紹介します。
休園という“非日常”楽しむ
5歳の娘が通う保育園が休園になったAさん(36歳女性)。娘もAさん夫妻も濃厚接触者とはならなかったため、近くに住むAさんの両親宅に娘を預けて、出勤は続けることにしました。
「送り迎えが保育園から実家に変わっただけなので、生活自体に変わったところはあまりなかったです。しかも、実家では母が、家族全員分の夕食を用意しており、夫も含めみんなと一緒に食べてから帰っていました。
普段、夕食は私と夫が交代で用意していたので、ありがたかったです。両親は孫とたくさん過ごせて満足そうでしたし、娘も楽しかったみたいです。約1週間預けましたが、休園が終わり初めて登園する日には、『じいじとばあばのうちがいい』と駄々をこねていました」(Aさん)
近所に両親のような頼れる存在が住んでいてくれると、こうした非常時に心強いですね。Aさんの家庭では、休園を「ちょっとした非日常」として楽しみながらうまく乗り切ったようです。
“息子と2人きり”で不安
夫婦共働きのBさん(38歳男性)は、4歳の息子が通う保育園の休園を受け、毎日夫妻で交代して子どもの面倒を見ました。テレワークがあまり導入されていない会社で働いているBさんが、会社に事情を相談すると「少なめの仕事量のテレワークでも出勤扱いする」となったからです。一方、妻は仕事を休んだ日に息子の面倒を見ることになりました。
「息子の面倒を見る日のテレワークは、『仕事:4 息子:6』くらいの割合です。お風呂や寝かし付けなど、普段から息子と2人で過ごす機会を小まめに持っていたので、『長い時間、数日にわたって2人きりでも大丈夫だろう』と考えていましたが、甘かったことを思い知らされました」(Bさん)
Bさんは、具体的に何を「思い知らされた」のでしょうか。
「まず、妻が別室にいる状態での“息子と2人きり”と、妻が家にいない正真正銘の“息子と2人きり”がこれほどまで違うのか、ということです。例えば、子どもが駄々をこねたとき、妻が別室にいると助け舟を出してくれ、子どもの気持ちをうまく変えられますが、正真正銘の2人きりだと助け舟はありません。
また、日中はずっと息子と2人が確定しているので、『ものすごくがんばってなんとか昼食まで終えたけど、まだ午後が丸々残っている…』などと思うことがよくあり、まるで“ゴールが遠いマラソン”のような感覚に襲われました」
約10日間の休園期間を乗り切ったBさんでしたが、大変なだけではなく、喜びもあったようです。
「以前は、別のことを始める前におもちゃを片付けたり、『もう見過ぎたから』と言ってテレビを自重したりしなかったのに、成長を感じさせる発見が幾つもあってうれしかったです。長い時間一緒に過ごしたことで、より一層仲良くなれた自信もあります」
保育士のすごさを実感
筆者にも3歳の娘がいますが、通っている保育園が1週間の休園となりました。夫婦ともに自営業で、2人とも仕事は自宅での作業がメインです。自営業ならではの気楽さはありつつ、働かなければ収入が確保できない緊張感もあります。
収入が大きく減るなどの条件を満たした場合は給付金の申請ができますが、1週間程度の休業ではその条件を満たしません。そのため、休園となると日中は子どもの世話で仕事ができなくなるので、どちらかが仕事をせずに収入を減らすか、それともどうにかして仕事をする時間を捻出するかの2択です。筆者世帯では後者を選択し、日中は妻と数時間交代で仕事をし、残った仕事は娘が寝てから行いました。
この態勢で無事に休園期間を終えることができたのですが、つくづく感じたのは「保育士さんたちはすごい」ということでした。まず、子どもの体力は大人から見ると無限にすら思えます。こちらが一緒に遊んで疲れ、参っていても、まだまだ元気に遊び回ろうとします。
さらに、年齢や性格にもよりますが、子どもは気に入った遊びの繰り返しを好みます。筆者も5回くらいまでは全力で付き合えるのですが、それが7回、10回となってくると、昼夜関係なく強い眠気に襲われます。もちろん、そこで寝落ちするわけにはいかないので、太ももを強くつねったり部屋を意味なく歩き回ったりして、娘に「パパ何してるの?」と聞かれながら正気を保つ努力をします。
つまり、子どもの相手をするには、かなりの体力と根気が必要ということです。これを仕事として連日担っている保育士さんたちは、本当にすごいなと改めて思わされました。
もう一つ、保育士さんたちのすごさは、その職務の重要性です。特に強く感じたのは、「保育士さんたちがいなければ、多くの人は満足に仕事もできない」ということでした。大げさではなく、日本経済の根幹を担う部分に保育士さんたちがいるのだと、これも改めて感じさせられました。
オミクロン株は依然として猛威を振るっており、保育園が休園する可能性は全国どこでもまだ十二分に残っています。休園という非日常は本当に大変ですが、「新たな発見をもたらしてくれるもの」と考えればいくらか前向きに捉えられるようにも思えました。
フリーライター 武藤弘樹
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