金沢・近江町市場。金沢駅はもちろん、観光スポットの近くに位置することもあり、地元の人たちだけでなく観光客も多く集まる市場です。ここ近江町市場には複数の食べどころがありますが、中でも屈指の人気を誇るのが『いきいき亭』という寿司店。特に人気なのが、地元・北陸の新鮮な魚を中心に使った海鮮丼をはじめとする丼メニューです。中でも代表的メニュー「いきいき亭丼」はここでしか味わうことができないもので、ずば抜けて人気がある模様です。

「いきいき亭丼」は2種類あり、地物のネタのみを使った「ローカル」が2200円(税込)、さらに地中海マグロなども使った「ワールド」が3300円(税込)で、いずれも味噌汁付き。「ローカル」、「ワールド」とはわかりやすい区分けですが、急に英語表記になるところもまた面白いです。

2022年1月にポップな印象にリニューアルした近江町市場にある『いきいき亭』
2022年1月にポップな印象にリニューアルした近江町市場にある『いきいき亭』

 せっかく金沢まで来たのだし……と筆者はこの『いきいき亭』で「いきいき亭丼ワールド」を食べることにしました。さらに『いきいき亭』の店主夫人・寺西美千代さんにもお店のなりたち・海鮮丼の秘密について話を聞きました。

16もの絶品ネタがズラリ! パッと見では気づかなかった盛り付けの秘密とは?

この日は16種ものネタが盛り付けられた「いきいき亭丼ワールド」3300円(税込)
この日は16種ものネタが盛り付けられた「いきいき亭丼ワールド」3300円(税込)

 多くの鮮魚店・魚介を出す飲食店が立ち並ぶ近江町市場の中でも屈指の人気を誇る『いきいき亭』。さっそくお店に入り、「いきいき亭丼ワールド」をオーダー。あらかじめインターネットなどでそのビジュアルは確認していましたが、実際にサーブされて改めてビックリ。なんと16ものネタがデーンと盛り付けられています。

 写真上の玉子から時計回りに、のどくろ炙り、柳さわら炙り、かます炙り、ばいがい、いくら、甘えび、かんぱちまぐろ中とろ、ひらめまぐろ赤身、くるま鯛、あじ、あおりいか。そして中央に寒ぶり、がすえび。さらにこの日のお味噌汁は関東ではなかなか口にできない深海魚・げんげを使ったものでした。

 ネタの内容・量はその日の仕入れによって微妙に変わるそうで、味噌汁も旬の魚を使うため変則的とのことですが、これだけのネタと量を前に、さすがに驚く筆者。というわけで、いざ実食! ……と思ったのですが、この「いきいき亭丼」、ネタ類の豪華さだけでなく、その盛り付けも気が利いていることにここで気づきました。なんと、あれだけのネタは、シャリにそのまま乗せられているのではなく、二重構造となっているのです。

「ネタを盛り付けたお皿」を開けると、下には「シャリを盛り付けたお碗」が!
「ネタを盛り付けたお皿」を開けると、下には「シャリを盛り付けたお碗」が!

 どういうことかと言うと、「シャリを盛り付けたお碗」の上に、「ネタを盛り付けたお皿」があるという仕組みなのです。これなら例えば、「前半はお刺身をおつまみにビール。後半で海鮮丼としていただく」なんていう食べ方ができそうで、各ネタをより深く味わうことができそうです。

北陸・地中海の海の幸を一気にいただける至福の海鮮丼!

左上から時計回りにのどくろの炙り、まぐろ中とろ、がすえび、ひらめ
左上から時計回りにのどくろの炙り、まぐろ中とろ、がすえび、ひらめ

 というわけでさっそくいただきました。まずは炙り類から地モノののどくろ。ただでさえ鮮度の良いのどくろを丁寧に炙り、その味を引き上げた一品。塩でいただくことで、その香ばしく奥深い味わいを強く感じることができました。

 続いて、まぐろ中とろ。トロットロでありながら、奥ゆかしい繊細さも感じる味わい関東圏の寿司店ではそうは出会えないものでした。

 さらにひらめはごくごく薄いピンク色で、プリッとした弾力があります。こちらもまた、海の幸の宝庫である北陸・金沢でしかいただけない味でした。

 そして極め付けが、金沢名物のがすえび。殻が茶色であることから全国的にはあまり流通しないえびですが、北陸界隈では「見た目は悪いが、味は甘えびより甘い」とも言われ、もちろん近江町市場の鮮魚店でも「名物」として販売されているもの。フレコミ通り、その味は甘く濃厚で、殻だけ持ち帰って出汁を取りたくなる味です。

シャリとげんげの味噌汁
シャリとげんげの味噌汁

 もちろんこれら以外も、鮮度抜群の絶品ネタばかりだったのですが、さらに筆者が驚いたのはシャリと味噌汁の旨さです。

 シャリは極めてシンプルに上品に仕込まれた酢飯で、前述のネタといただくことで双方の美味しさが際立つものでした。そして味噌汁は、前述のげんげを使ったもので、上品なお出汁だけでなくコラーゲンたっぷりの身も絶品。これだけの充実度で3300円(税込)はなかなかのお値打ちで、他エリアでは絶対に味わうことができない海鮮丼だと思いました。

豊富なネタと鮮度の良さを実現できる理由は、「競り場で直接仕入れてくる」から!

『いきいき亭』和気あいあいのスタッフの皆さん
『いきいき亭』和気あいあいのスタッフの皆さん

 噂通り、『いきいき亭』の海鮮丼は他を抜きん出る一品でした。お店の成り立ちと合わせて海鮮丼の秘密について、『いきいき亭』の店主夫人・寺西美千代さんに聞きました。

「もともとは、金沢の繁華街・片町にある玉寿司という寿司店がルーツですが、2007年に近江町市場にお店を出すことになりました。当初は市場で働く方々・地元の方々を対象にしていましたが、最近は口コミのおかげで観光で金沢に訪れたお客さんも多く立ち寄っていただくようになりました。

 これだけのネタをご用意できるのは、朝マスターが直接競り場に買い付けに行くからです。通常、近隣の飲食店は近江町市場の魚屋さんで買ってきたネタを使うことが大半です。つまりお店で出すまでの間にワンクッション入ることが多いんですね。しかし、当店では競り場に出向き、競り人に『これ欲しい、あれ欲しい』と直で頼んで仕入れているため、これだけ豊富で新鮮なネタをご用意することができるのです。

 金沢でしか食べられないネタ、そして当店でしか味わっていただけないであろうネタを、いつもご提供できるよう心がけています。ぜひ金沢にお越しの際はお立ち寄りいただきたいですね」(『いきいき亭』寺西さん)

『いきいき亭』では海鮮丼や寿司類のテイクアウトもあります
『いきいき亭』では海鮮丼や寿司類のテイクアウトもあります

 金沢でしか味わうことができない抜群の海の幸を、贅沢に食べられたことに大満足の筆者。『いきいき亭』では、これらの海鮮丼・寿司類のテイクアウトも行っているため、例えば金沢を旅行し、時間があまりないといった際には帰りの新幹線での駅弁代わりに買って帰るのも良いかも!? 何はともあれ、この味、ぜひとも多くの方に味わっていただきたいと思いました。

(撮影・文◎松田義人)

●SHOP INFO

いきいき亭 近江町店外観

店名:いきいき亭 近江町店

住:石川県金沢市青草町88 近江町いちば館 1F
TEL:076-222-2621
営:7:00~15:00 ※ネタが無くなり次第終了
休:木曜

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