19年8月のトミー・ジョン手術から厳しいリハビリを経て、昨年9月16日に一軍復帰登板を果たした田中健二朗が、一軍の宜野湾キャンプで順調な調整ぶりを見せている。

 10日には早くもフリーバッティングに登板し、桑原将志宮崎敏郎といったチームの主力に対してストレートで押し込むなど力強いボールで圧倒。20日のジャイアンツとの練習試合でもわずか11球で最終回を締めるなど、元気な姿でアピールしている。

 昨年は8試合に登板し、0勝0敗、防御率も0.00と上々の成績を残し、ストレートは147キロをマークするなど手術前に宣言した「新しい田中健二朗を見せる」ことに成功。代名詞でもあった“2階から落ちてくるようなカーブ”の再習得にも取り組みながら、今シーズンはチームの勝利に貢献する場面でもポジションを狙っている。

 昨年のベイスターズの左腕のブルペンの顔ぶれは、鉄腕のエドウィン・エスコバーを筆頭に、安定感を誇った砂田毅樹、“清宮キラー櫻井周斗に、シーズン前半までは石田健大らが中心。今シーズン、櫻井は手術により離脱、石田も昨年先発転向しポジションは不透明な部分もあり、田中にかかる期待は一層大きくなってくることは必然。2016年に61試合登板で初のCS進出を果たした際、今や伝説となっている“鈴木尚広を刺した牽制球”でチームをファイナルステージに導き、翌年も60試合とフル回転した経験も、若いブルペン陣にとっては貴重な財産。切れ長の目から発せられるオーラからかとっつきにくい印象を与えがちだが、同じトミー・ジョン手術を受けた東克樹も「すごく救いになった」と話したように、リハビリでのアドバイスを欠かさず行うなど“兄貴肌”の田中を慕っている若手も多い。

 「怖さ、痛み、違和感はなくなってきている。ちゃんと腕が触れる」と昨年末にコメントした通り、古傷の左肘の不安から解放された田中。横浜一筋15年目の今シーズン、完全復活した左腕はブルペンの貴重な存在として、三浦監督から引き継いだ“46番”をより一層マウンドで輝かせる。

取材・文・写真 /  萩原孝弘

田中健二朗