昭和の時代から2世タレントが持て囃される日本の芸能界。だが、その親子関係にスポットを当てれば、一般人には理解できない因縁ドラマが隠されていた。

 芸能界の親子断絶を語る上で無視できないのが、40年以上にわたって絶縁状態だった俳優・香川照之(56)と、父で歌舞伎役者の市川猿翁(82)だろう。

 香川が2歳の時、母親で女優の浜木綿子(86)が猿翁(当時は猿之助)と離婚。東京大学卒業後、俳優になって父に会いに行くも、

「今の僕とあなたは何の関わりもない」

 などと厳しい言葉を突きつけられ、親子の交流は途絶えた。

 演芸ライターが語る。

「猿翁さんは後に『独立自尊』の精神を説いたつもりだったと明かしていますが、香川さんにしたら、いたたまれない気持ちだったでしょう」

 香川はドラマの端役などで地道に俳優修業を続け、やがて奇跡の瞬間が訪れる。

「香川さんに長男が誕生したのを機に、猿翁さんの2人目の妻・藤間紫さんの計らいで、00年あたりから父子関係は徐々に修復。12年に長男が市川團子を襲名すると、香川さんも中車を名乗り歌舞伎界入りを果たしました」(前出・演芸ライター)

 13年に出演したTBS系ドラマ「半沢直樹」での演技を猿翁から褒められた際には、香川は喜びのあまり号泣したという。芸能ジャーナリストの佐々木博之氏が明かす。

「役者の世界が生んだ悲劇と言われましたが、最終的には歌舞伎役者として芸に生きる父親、そのDNAを受け継いだ息子も役者として大成し、親子の絆を再認識することができた。まさに恩讐を越えての和解劇ですね」

 こちらも、ともに日本を代表する役者ながら親子の断絶状態が長らく続いていたのが佐藤浩市(61)と故・三國連太郎だ。

 佐藤は三國の3番目の妻との間にできた子で、小学6年生の時に母親が離婚して以来、父親とは断絶が続いていた。俳優デビュー後、映画「人間の約束」(東宝東和、86年)や「美味しんぼ」(松竹、96年)などで共演したが、

「カメラが回っていない時はお互い避けるようにしていて、現場は険悪な雰囲気でした」(芸能記者)

 ただ、佐藤が40代になった頃から雪解けムードに。08年にはANAのCMで親子共演を果たす。

「三國さんはお芝居にのめり込むタイプで。女性関係も派手だったので、若い頃の佐藤さんからすると、家庭を蔑ろにしているのが許せなかったのでしょう。ただ、自分もかつての父親と同じくらいの年齢になって、役者としても成熟。ようやく父の偉大さや生き方が理解でき始めたのでは」(前出・佐々木氏)

 両親の離婚をきっかけに父子の間に隙間風が吹くケースは多い。スポーツ紙芸能担当デスクが解説する。

「昨春に有吉弘行と結婚した夏目三久(37)の父親は、IT関連企業の創業者として知られていますが、離婚後は娘と距離を置いてきました。週刊誌から夏目さんの件でコメントを求められた際には『電話番号も知らない』『なにしろ捨てた子だから』と発言して騒動に。今年1月に有吉の地元・広島で行われた結婚式にも姿を見せませんでした」

 離婚ではなく、結婚が原因で父子関係にヒビが入ったのは船越英一郎(61)と父で俳優の故・船越英二。英二は英一郎と前妻の松居一代(64)との結婚に猛反対し、結婚式に出席せず。当時、困り果てた英一郎は、父親の遺産相続を放棄したと明かした。

「親が子供の結婚相手を認めたがらないという話はよくありますが、大半は母親が息子の結婚相手に不満があるといったケースで、男親というのは珍しいですよね。よほど松居のことが気に入らなかったんでしょうね」(前出・佐々木氏)

 英二が亡くなってから約10年後の17年に英一郎と松居は離婚した。天国の父は何を思っただろうか。

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