Appleは紛失防止タグ「AirTag」による不要な追跡を防止するためのアップデートを発表した。これは、すでに海外にて複数報告されているストーカー事件などを受けての対応となっている。

(参考:【画像】米TikTokerが発見した不審なAirTag

<画期的な紛失防止タグだが、海外で悪用事例が多発>

 AirTagは2021年4月に販売が開始された紛失防止タグだ。BluetoothNFCによってiOSデバイスと通信を行い、AirTagの場所を表示したり、あるいはサウンドを鳴らしてユーザーに場所を知らせることができる。またAirTagがiPhoneの通信圏内から外れても、10億台のAppleデバイスがAirTagの位置情報を持ち主に共有する「探す」ネットワークによる検索機能も特徴だ。

 非常に便利な製品だが、問題も報告されている。海外メディア「WGRZ」が報じるところによると、ニューヨークではAirTagを利用したストーカー事件が2件報告されている。これはターゲットの女性が運転する自動車のバンパーにAirTagを仕込み、自宅の住所を特定しようとした事件だ。

 またMacRumorsが伝えるカナダのヨーク州警察の報告によると、高級車の牽引装置や燃料キャップにAirTagが仕込まれ、こちらも自宅の場所を特定するために利用されたと報告されている。

<“探す”機能の全面的な刷新により悪用を防止 他社の追随にも期待>

 このようなAirTagの悪用報告を受け、Appleは今年後半に導入予定のアップデートを発表した。まず「正確な場所を見つける」機能では、iPhone 11/12/13のユーザーが不明なAirTagの場所を正確に見つけることができるようになる。

 「音を鳴らしてアラートを表示」では不明なAirTagからだけでなく、ユーザーのデバイスにもアラートを表示し、音を鳴らしたり「正確な場所を見つける」機能が使えるようになる。さらに「不要な追跡アラートのロジック」も改善され、ユーザーへのアラートがより効果的におこなわれるようになる。

 AirTagの音も調整される。不要な追跡アラートを受け取ったiOSユーザーは不明なAirTagの音を鳴らすことができるが、この音が最も大きく聞こえるトーンをより多く使用するために、トーンシーケンスが調整される予定だ。

 Apple製品に組み込まれた「探す」ネットワークでは、新しいAirTagの設定時に「同意なしの追跡は世界の多くの地域で犯罪であること、AirTagは被害者によって検出されるように設計されていること、法執行機関の要請があれば情報が特定されること」ことが表示されるようになる。さらに、Appleの公式サポート文章の説明もより詳細でわかりやすいものとなる。

 ワイヤレスヘッドホンの「AirPods」シリーズでは、ユーザーが受け取るアラートが「不明な持ち物」ではなく、AirPodsがユーザーと共に移動していると表示されるようになる。

 このような安全策は、AirTagのプライバシーを向上させるものとして歓迎されるものだ。また今後はAirTagだけでなく、メーカーの垣根を超えた標準的な安全策が紛失防止タグに盛り込まれることを期待したい。

(文=塚本直樹)

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