2022年2月25日雇用調整助成金の特例措置が6月末まで延長されることが、厚生労働省により発表されました。

雇用調整助成金とは、新型コロナウイルス感染症の影響により「事業活動の縮小」を余儀なくされた場合に、従業員の雇用維持を図るために休業手当などの一部を助成する助成金です。

2022年1月を迎えた段階で特例措置が開始され、特定の事業者を除いて日額が段階的に引き下げられています。
 
今回は日額改定の対象外となる事業所の特徴や、雇用調整助成金以外で利用できる助成金の種類について解説します。

【雇用調整助成金】日額改定の内容と対象外となる企業の特徴

雇用調整助成金の特例は、一部の企業を対象に従業員一人あたりの日額を引き下げる決定がされています。
 
2022年6月末まで適用される予定で、2022年2月は1万3500円から1万1000円に、2022年3月からは9000円に引き下げられます。

判定基礎期間の初日 1人1日あたりの上限額(原則) 1人1日あたりの上限額(※例外)
2021年12月まで 1万3500円 1万5000円
2022年1月・2月 1万1000円 1万5000円
2022年3月~6月 9000円 1万5000円

表の出所:厚生労働省雇用調整助成金
 
ただし、以下の2つに該当する事業所は日額改定の対象外となります。

直近3カ月の平均売上が30%減少

売上(生産指標)が、直近3カ月の月平均と前年または前々年の同期と比べて30%以上減少している場合、業況特例として日額改定の対象から外れ、表中の「※例外」の金額となります。
 
また、2021年12月末まで業況特例を利用した事業主が2022年1月1日以降に申請する場合は、最初の申請時に売上状況の再確認が行われるため、売上を記した書類の提出を求められます。

重点措置区域において営業時間短縮に協力する事業主

いわゆる「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」を実施している区域で、都道府県知事による営業時間短縮要請に応じた事業主は、地域特例として日額改定の対象から外れ、表中の「※例外」の金額となります。
 
業況特例と地域特例の2つの基準を満たしていれば日額は引き下げられない、と覚えておきましょう。

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他にもある!法人向け助成金・補助金・支援金を紹介_その1

事業主が使える助成金は雇用調整助成金だけではありません。ここからはコロナ禍で活用できるさまざまな制度をご紹介します。
 
なかには申請期限が設けられた制度もあるので注意して下さい。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の事業再構築を支援する目的で支給される補助金制度です。
 
主要申請要件は以下のとおりです。
 
売上が減っている

  • 2020年4月以降の連続する6カ月間のうち、任意の3カ月の合計売上高が、コロナ以前の同3カ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること

  • 2020年10月以降の連続する6カ月間のうち、任意の3カ月間の合計売上高が、コロナ以前の同3カ月の合計売上高と比較して5%以上減少していること    

事業再構築に取り組む

  • 新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換・事業再編のいずれかに該当すること 

認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する

  • 事業再構築に係る事業計画を認定経営革新等支援機関もしくは金融機関と共同で策定し、協力して事業再構築に臨むこと。

    中小企業、中堅企業、小規模事業者、個人事業主、企業組合等が補助対象者です。対象となる経費は以下にまとめました。

  • 建物費(建物の建築・改修、建物の撤去、賃貸物件等の原状回復、貸し工場・貸店舗等の一時移転) 

  • 機械装置・システム構築費(設備、専用ソフトの購入やリース等)、クラウドサービス利用費、運搬費 

  • 技術導入費(知的財産権導入に要する経費)、知的財産権等関連経費 

  • 外注費(製品開発に要する加工、設計等)、専門家経費 ※応募申請時の事業計画の作成に要する経費は補助対象外。

  • 広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等) 

  • 研修費(教育訓練費、講座受講等) 

なお、事業再構築補助金の公募期間は今のところ2022年3月24日までとなっています。

法人向け助成金・補助金・支援金_その2

事業復活支援金

新型コロナウイルスの影響により大きな影響を受ける中堅・中小・小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者に対し、業種や所在地を問わず事業規模に合わせた給付金を最大250万円支給する制度です。
 
給付対象となる要件は以下のとおりです。

  • 新型コロナウイルス感染症の拡大や長期化に伴う需要の減少又は供給の制約により大きな影響を受けている

  • この影響で、自らの事業判断によらずに対象月の売上が基準月と比べて50%以上又は30%以上50%未満減少している 

需要の減少による影響は次の9つが当てはまります。

  1. 国や地方自治体による、自社への休業・時短営業やイベント等の延期・中止その他のコロナ対策の要請

  2. 国や地方自治体による要請以外で、コロナ禍を理由として顧客・取引先が行う休業・時短営業やイベント等の延期・中止

  3. 消費者の外出・移動の自粛や、新しい生活様式への移行

  4. 海外の都市封鎖その他のコロナ関連規制

  5. コロナ関連の渡航制限等による海外渡航者や訪日渡航者の減少

  6. 顧客・取引先※が①~⑤又は⑦~⑨のいずれかの影響を受けたこと

  7. コロナ禍を理由とした供給減少や流通制限

  8. 国や地方自治体による休業・時短営業やイベント等の延期・中止その他のコロナ対策の要請

  9. 国や地方自治体による就業に関するコロナ対策の要請 

事業復活支援金の申請期限は2022年5月31日までとなっています。

産業雇用安定助成金

新型コロナウイルスの影響で事業を一時的に縮小せざるを得ない事業主が、在籍型出向により雇用を維持する場合に、出向元と出向先双方に支給される助成金制度です。
 
この制度は、出向の形態や事業主、出向労働者それぞれに受給要件が発生します。まずは助成金の対象になる出向の要件について見ていきましょう。

  • 人事交流・経営戦略・業務提携・実習などによる出向ではない

  • 労使間の協定によるもの

  • 出向労働者の同意がある

  • 出向元事業主と出向先事業主との間で締結された契約である

  • 出向先事業所が雇用保険の適用事業所である

  • 出向元・出向先いずれも資本的、経済的、組織的関連性等からみて、独立性が認められる

  • 対象期間内に実施される出向であること

  • 出向期間が1か月以上2年以内かつ出向元事業所に戻ってくる

  • 出向元・出向先いずれも出向労働者の賃金の全額または一部を負担している

  • 出向前に支払っていた賃金とおおむね同等の賃金を支払っている

  • 出向させたのち出向先事業所にて就労する

  • 労働組合等から出向の実施状況について確認を受けている

  • 出向元・出向先いずれも支給要件を満たす 

「事業主」の受給要件は以下のとおりです。

「出向労働者」の受給要件は以下のとおりです。

  •  出向元事業所において雇用される雇用保険の被保険者

ただし、以下のいずれかに該当する場合は除外されます。

  • 初回出向日の前日時点で、出向元事業者から雇用保険被保険者として雇用された期間が6カ月未満

  • 解雇予告・退職届の提出・退職勧奨に応じている

  • 日雇労働被保険者である

  • 併給調整の対象となる他の助成金などの支給対象となっている 

産業雇用安定助成金については、現時点で申請期限がありません。

要件に当てはまったら早めの手続きを

各種助成金の申請要件を満たす事業主については早めの手続きを推奨します。今回ご紹介したものの中には申請期限が迫っているものも含まれるからです。
 
また現在は募集を停止している「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」という助成金制度についても、状況によって募集を再開する可能性もあります。
 
さまざまな制度を駆使し、この苦境を乗り切っていただきたいと願うばかりです。

参考資料