『4-3-3』について、福西崇史が深堀り!
『4-3-3』について、福西崇史が深堀り!

不動のボランチとしてジュビロ磐田黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカープレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第11回目のテーマは、『4-3-3』という布陣。日本代表も採用している『4-3-3』とはどんなフォーメーションなのか? 先日の横浜F・マリノス川崎フロンターレ戦を参考に福西崇史が解説する。

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日本代表は昨年10月から4-3-3にフォーメーションを切り替えましたが、今回は先日行われたJリーグ横浜F・マリノス川崎フロンターレ戦を参考にしながら、この4-3-3の布陣について深掘りしたいと思います。

マリノスフロンターレ戦の結果は、4対2でマリノスが勝利。フロンターレから4点を奪った攻撃は見事でしたよね。一方のフロンターレは4-3-3の弱点を相手にうまく使われてしまい、守備が後手を踏みました。

この試合の両チームのフォーメーションは、マリノスが4-2-1-3で、フロンターレは4-1-2-3。中盤の形こそ異なりますが、DF、MF、FWで大まかに分類すれば、どちらも同じ4-3-3です。

マリノスが渡辺皓太と喜田拓也のダブルボランチで、そのふたりの前にマルコス・ジュニオールがトップ下に入る正三角形。一方のフロンターレは橘田健人がアンカーで、その前方に位置するインサイドハーフをチャナティップと脇坂泰斗がつとめる逆三角形。

本当はほかにもポジショニングや求める役割、攻守のバランス、選手の特性など、さまざまな要素で違いはあるのですが、今回はそれは省略して説明していきますね。

フロンターレは中盤の底が1枚なので、その両脇を相手に使われて起点にされてしまうと守備陣は後手を踏みやすくなります。そのスペースを使われないようにするためには、CBが前に出て対応するのか、それともインサイドハーフが下がってくるのかをしっかり決めておく必要があります。SBがハーフウェイラインあたりでは中央に絞ってポジションングをして、ボランチのような働きをすることもありますよね。ただ、いずれの場合にしても、どこでボールを奪われて、相手が何人で攻め込んでくるかによって変わっていくものではあります。

フロンターレは、昨年からこのフォーメーションをメインに使っているので、アンカーの両脇を狙われた場合の対応策は準備してあったと思います。それでも、そこを防ぎ切れずに相手に使われてしまったのは、レギュラーCBのジェジエウを故障で欠いた影響でもありました。

谷口彰悟はタイプ的に、ジェジエウのように前後の動きでも強さを発揮できる選手ではないですからね。マリノス戦では、谷口の相方として山村和也が先発しましたが、やはりジェジエウとは長所が違う。そういった中で、同じやり戦い方をしたけれど相手に上回られたということです。

見えない部分で守備に影響したなと感じたのは、インサイドハーフに入ったチャナティップでしょうね。このポジションは昨年後半はセルティックに移籍した旗手怜央がつとめていました。攻撃だけではなく、守備のところでも強さを発揮して、チームに貢献していました。

その旗手が抜けて、マリノス戦はチャナティップが起用されましたが、彼に旗手のような守備での強さはないですよね。そこはチャナティップの持ち味ではないので。異なる特性の選手を組み入れるだけで、そのフォーメーションが持つ効果の出方が180度変わってしまうのがサッカーの難しさでもあるわけです。

では、中盤の底にあらかじめ2枚のMFがいるマリノスの場合はどうかと言えば、ボランチのどちらかが前に引っ張り出されると、守備の形に弱点が生まれます。たとえば攻撃を仕掛けに行って高い位置でボールを奪われたりすると、中盤の底にいるMFは1枚になるので、フロンターレのケースと同様にその両脇のスペースを起点にされてしまうわけですね。

日本代表の4-3-3で言えば、フロンターレと似た配置です。アンカー遠藤航シュツットガルト)が入り、インサイドハーフ田中碧デュッセルドルフ)と守田英正サンタクララ)、CBを吉田麻也サンプドリア)と冨安健洋アーセナル)がつとめています。

試合状況によりますが、守田が遠藤と同じラインにまで下がって守備を固めることもあれば、CBが前に出て潰すこともありますよね。ただ、フロンターレと同じように主力の誰かが欠けたときに強い相手に対しても同じクオリティーと強さを発揮できるかのか。こればかりはやってみないとわからないのが懸念材料ですよね。

ただ、フォーメーションはあくまで、フォーメーションに過ぎません。将棋の駒のように高級駒であれ、プラスチックの安物であれ、動きそのものがまったく同一ならばフォーメーションの重要性は増しますが、サッカーの場合は選手の能力や特性、監督の志向によっても差異は生まれてきます。

試合の流れのなかでも選手の立ち位置は変わっていくので、フォーメーションはあくまでスタート時点での攻守のバランスや、どういう狙いで試合に臨んでいるかをつかむ糸口くらいに思ってもらう方がいいでしょうね。

ちなみに、このマリノスの4-2-1-3と、日本代表が少し前までベースにしていた4-2-3-1は何が違うかと言えば、ほとんど同じです(笑)。両サイドアタッカーの選手の立ち位置が少し違う程度で、これはチームとしての攻撃の狙いの違いでもあります。フォーメーションを細分化することで、数字を聞けば選手の立ち位置が想像しやすくなりますが、大事なのはその本質。どういう意図をもって、その布陣を敷くのか。今回は配置の違いについて触れましたが、機会があればまた深堀りしたいと思います。

■福西崇史(ふくにし・たかし
1976年9月1日生まれ 愛媛県新居浜市出身 身長181cm
1995年ジュビロ磐田に入団。不動のボランチとして黄金期を支える。その後、2006年~2007年はFC東京、2007年~2008年は東京ヴェルディで活躍。日本代表として2002年日韓ワールドカップ、2006年ドイツワールドカップにも出場。現役引退後は、サッカー解説者として数々のメディアに出演している

構成/津金壱郎 撮影/鈴木大喜

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