ペットとして人気の動物といえば、犬や猫を想像する人が多いと思いますが、中にはトカゲやヘビ、カメなどの「爬虫(はちゅう)類」を好む人もいます。「ペット可」の物件において、契約書に「犬・猫に限る」といった規定がない限り、これらの爬虫類を自由に飼育しても問題ないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

「脱走」で損害賠償請求される可能性も

Q.自宅で、爬虫類をペットとして飼育したい場合、法的トラブルを避けるために必要なことは何でしょうか。

牧野さん「まずは、物件の『賃貸借契約書』、もしくは賃貸借契約書で順守が要求されるマンションの『管理規約』において、『爬虫類を飼育してはならない』という規定があるかどうかを確認する必要があります。

一般に、飼育しても問題ない生き物かどうかは、『近隣に迷惑をかける可能性』が判断基準になることが多いです。小動物は黙認されることが多く、爬虫類でも、小さな水槽で飼育できる小さなカメなどは黙認されることが多いと思います。

ただし、ペットの飼育を認める規定があり、なおかつ『爬虫類を飼育してはならない』という文言がなくても、『ペット』とは通常、犬や猫を想定しており、かつ、爬虫類は人に恐怖感を与えてしまう可能性があるため、爬虫類を飼育する場合は万が一、逃げ出した際の近隣トラブルの可能性を考えて、問題ないかどうかを必ず事前に大家さんや管理会社に確認しておきましょう」

Q.仮に、自分が飼育していた爬虫類が脱走して、別室の住人に精神的苦痛や物的損害を与えてしまった場合、賠償請求をされるのでしょうか。

牧野さん「故意または過失によって他人の権利を侵害した場合は、それによって生じた損害を賠償しなければなりません(民法709条)。また、爬虫類は脊椎動物の分類の一つなので、『動物』に当たるとされる場合には、『動物の種類および性質に従い、相当の注意をもってその管理をしたとき』を除いて、『その動物が他人に加えた損害を賠償する責任』を負います(民法718条『動物の占有者等の責任』)。

そのマンションに『飼育禁止規定』があるかないかを問わず(あれば過失の程度は重くなる)、飼育していた爬虫類が他人に精神的・経済的損害を与えた場合、そのことが証明されれば、飼い主は損害賠償請求をされてしまいます。そもそも、爬虫類を逃走させてしまったわけですから、過失が認定されるケースは多いでしょう。

Q.その他、爬虫類を飼育する際に意識しておきたい法的トラブルの可能性があれば教えてください。

牧野さん「爬虫類の中でも、人畜に被害を与える危険な動物を逃走させてしまった場合は、軽犯罪法1条12号が定める『人畜に害を加える性癖のあることの明らかな犬その他の鳥獣類を正当な理由がなくて解放し、またはその監守を怠ってこれを逃がした者』が適用されることがあります。不注意で逃がしてしまい、他人に精神的・経済的損害を与えた場合には、過失傷害罪に問われる恐れもあるので、飼育の際は特に注意する必要があるでしょう」

オトナンサー編集部

爬虫類を飼うときの注意点は?