事業化の決め手は「工業団地アクセス」!?

事業性向上にルートを再検討

熊本県は2022年2月8日(火)に、阿蘇くまもと空港へ直結する鉄道構想を検討する「第4回空港アクセス検討委員会」を開催。その中で、これまで豊肥本線の三里木駅から分岐するとしていたルート案に加え、あらたに「原水駅から分岐するルート」「肥後大津駅から分岐するルート」も検討候補にするという方針で一致しました。

阿蘇くまもと空港への鉄道構想は、2019年に県がJR九州から基本的な方向性について同意をうけ、2020年に空港アクセス検討委員会を設置して検討を進めています。

2019年の同意内容では、豊肥本線とアクセス鉄道の直通運転は行わない、アクセス鉄道は県が中心の第三セクターが保有しJR九州が運行する「上下分離方式」とする、JR九州が整備費の最大3分の1を支出する、などとなっています。

一旦は「三里木ルート」で進めるつもりでしたが、事業化に必要な「費用便益比1.0以上」(コストを便益が上回る試算)が厳しいため、その便益向上のための施策も検討課題となっていました。

そこで浮上したのが先述の「原水ルート」「肥後大津ルート」です。それぞれ三里木駅の1つ、2つ先にある駅で、肥後大津駅は電化区間と非電化区間の境界にある要所であり、特急「九州横断特急」や「あそぼーい!」も停車します。

原水駅は工業団地「セミコンテクノパーク」に近接しており、台湾の大手半導体企業「TSMC」の進出も予定され、従業員も1500人規模が計画されています。これをうけ、工場アクセスとしての便益も生み出せるよう、新たにルート案に組み込まれることとなったのです。

とはいえ、当初の「三里木ルート」では、県民総合運動公園へのアクセスのため中間駅が設置される計画です。この便益が失われることがどうインパクトとなるかも課題になっていきます。

2月の委員会では、追加ルートを含めた3案で追加調査を行っていく方針で了承。「原水ルート」で費用便益比が1.0を上回る試算ができれば、いよいよ事業化に向けて前進していくことになります。調査結果は2022年度中に報告される予定です。

豊肥本線の肥後大津駅(画像:写真AC)。