全身鏡を見る女性

ここ最近、「ルッキズム」という言葉が注目されています。法的に問題となるとすればどんなケースがあるのか、本記事では弁護士が解説しています。


■ルッキズムとは

近年登場した「ルッキズム」という言葉。外見至上主義を意味する「looks+ism」の造語で、この“イズム”というのは、セクシズム(性差別)、レイシズム(人種差別)などの言葉にも使われているように、差別的な意味を持ちます。

ルッキズム(外見差別)」という新しい概念の言葉が登場し、イズムがついているということは、外見について指摘することは差別であり、“やってはいけないこと”に認定されたということです。


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■プロゲーマーの炎上騒動でも注目

最近では、プロeスポーツチームに所属していた選手が、身長が170cm以下の男性について「人権ない」などと発言したことが、インターネット上で炎上騒動へと発展。

当該選手はチームとの契約は解除となり、自身の発言についても謝罪している。

■法律に触れるケースもある?

弁護士・齋藤健博先生

他人の容姿について、「ブス」「チビ」「ハゲ」などの暴言はもちろん、近年では「かわいいね」などの発言も問題視されています。こうしたルッキズムが法律に触れる可能性はあるのでしょうか。齋藤健博弁護士によると…

齋藤弁護士:ルッキズム」自体は新種の用語のように思われますが、じつは認識される以前から横行していた考え方であるともいえます。問題は、法律に触れるかどうかです。ズバリ、それは局面によるといえます。


どういうことかというと、たとえば採用試験において、専らルッキズムの観点からのみ採用選考をしたとします。この場合には、企業側の裁量が働きます(誰を雇い入れるかは自由)。


しかし、仮に内定を出した状態で、今度はルッキズムの観点から本採用を拒否したとします。これは違法判断に至る可能性は高いのではないでしょうか。


観点を替えて、ルッキズムの観点からのみ、雇用主が労働者を評価して、賃金に差異を与えたとします。これは到底合理性があるとは見ることが難しいので、違法判断に至るのではないでしょうか。


■もし被害を受けたらどうすれば…

ではもし、ルッキズム発言で不快な思いをした被害者は、加害者に対してどのような手段をとることができるのでしょうか。また、その際はどんな点に注意すれば良いでしょうか。

齋藤弁護士:ルッキズムにのみ、もとづいているものかどうかは一つの判断基準になるでしょう。


たとえば、その視点からのみ、専ら人物評価をする書き込みをしたのであれば、名誉棄損や人格権侵害とまでは言えないようにも思われますが、たとえば、名誉棄損的表現を、ルッキズムの観点からのみした場合にはどうでしょうか。


その文脈に応じて、不必要な評価を名指しでしているのであれば、名誉棄損や不法行為が成立する余地も生じてきます。要は、どんな状況かが重要です。

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(企画・文/弁護士・齋藤 健博

ここ最近注目される「ルッキズム」 法的に問題となるケースを弁護士が解説