雪景色が似合うかわいい動物と言えば、北海道や東北などの雪深い地域に生息する小動物が思い浮かぶが、その中でもダントツにキュートな北海道固有の種、エゾモモンガをご存じだろうか?食事する様子や、樹木の洞(うろ)からちょこんと顔を出してのぞく様子など、その愛らしい姿の数々に悶絶する人が続出中の人気者。どの姿もエゾモモンガの最大のチャームポイント、くりくりとした大きな瞳が印象的だ。

【写真】観ているだけで思わずニヤニヤしてしまうほどかわいいエゾモモンガを一挙に見る

森の妖精とも呼ばれる、豊かな雑木林の象徴的存在

そんなエゾモモンガについて、北海道旭川市にある人気動物園旭川市 旭山動物園」の園長さんほかスタッフの方々に話を聞いてみた。「エゾモモンガは、げっ歯目(ネズミ目)リス科の哺乳類北海道の平地から山地の森林などに生息していて、活動時間は夜です。キツツキの仲間が作った古巣や、木の空洞などを寝ぐらとして、子育てもそこで行います。豊かな雑木林の象徴的な存在なんですよ」と園長の坂東さん。1日のほとんどを樹上で生活するエゾモモンガだが、マントのような飛膜を使って何メートルも滑空する様子が見られることもあるそうだ。

夜行性であるエゾモモンガの目がとても大きいのは、少しでも多くの光を取り込むためだという。頭から胴までの長さは15~16センチ、尾の長さは10~12センチ、体重は100~120グラムほど。寿命は、飼育下なら約4~5年と言われている。

両前足で木の種子を持ち、モグモグと咀嚼する姿もかわいいが、そんな姿を雪景色と共に楽しめるのは、この種が冬眠をしないから。「エゾモモンガは冬眠や貯食をしない代わりに、秋のうちにたくさん食べて脂肪を蓄えます。冬は冬芽や花穂を食べ、活動を最小限に留めるなどして冬を乗り越えるんですよ」と教えてくれたのは、同園広報担当の土井さん。

基本的には広葉樹の葉や芽、花、種子といった植物食の傾向が強いが、昆虫など動物質のものを食べることも。冬が来るまでにそれらをたくさん食べることで、エゾモモンガは夏の時期よりも15~20%ほど体重を増やすんだそう。越冬中の時期だけ、あのコロコロとしたぽっちゃりな姿が見られるのだ!

■活発に動く姿を昼間に見るのは難しい、夜行性のエゾモモンガ

旭山動物園では、2021年4月末にエゾモモンガ舎を新設した。「昼間はスタッフでさえ活発に動く姿をなかなか見られないんです」と土井さんも語る通り、日中はほぼ巣の中で過ごす夜行性のエゾモモンガ。当然、これまではほとんどの来園者がその姿を見られず、見られた人はラッキーだと言われるほどだった。そこで、エゾモモンガの生態を昼間でも楽しめるよう、同園初の昼夜逆転施設としてオープンさせたのが新舎だ。

以前よりも10倍近くスケールを大きくしたこの新舎は、「夜間に照明を灯し、日中は暗くすることで、動物にストレスをかけずに昼夜逆転の環境を整えた夜行性動物舎」(坂東さん)だそうで、木から木へ飛び移る姿など、エゾモモンガのさまざまな行動を観察するための工夫も施されている。

旭山動物園は、動物たちが本来生息している自然になるべく近い環境を実現することで、彼らのありのままの姿を観察できるようにする“行動展示”という展示法を日本で初採用して好評を博した人気スポット。エゾモモンガのように北海道では身近な動物にも目を向けて、“かわいい”と愛でるだけでなく、「その先にある自然や環境の問題などを、誰もが自分にも関係のあることとして捉えるきっかけにしてほしい」と園長の坂東さんは語る。新舎が完成してリアルな環境に近づけたことで、同園では前例のないエゾモモンガの繁殖なども今後は期待できそうだ。なお同園では、2022年春に、9年ぶりの大型施設となる「えぞひぐま館(仮称)」も新規オープン予定だ。

顔の半分を占めるのではないかと思うくらい大きな目、コンパクトな体のサイズ感ほか、どの要素にも愛されポイントがあるエゾモモンガ。かわいいものを見て癒やされたい時など、ぜひチェックしてほしい。

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かわいくて思わず見入ってしまう、食事中のエゾモモンガ